新たなコラボレーションでベルルッティが変わる!?
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—— ファッションに関してアーティストとの初めてのコラボレーションがブライアン・ロシュフォールというのは、非常に驚きでした。なぜ彼だったのですか?
今回、RTWのメンズでコラボレーションするのが初めてだったので、ベルルッティのブランドのアイデンティティを自分のビジョンで確立する事が大事だと思いました。
私自身はこの10年以上、セラミック(陶器)をコレクションしています。以前は1950年代のフランスのセラミックなどヴィンテージのものが好みでしたが、最近は現代作家に関心があります。
ブライアンは35歳のロス在住のアメリカン人アーティストで、まさに”今”な作品を手掛けています。私は彼のアートに深く共感しています。彼の作品は何層にも色をレイヤーする(重ねる)のが特徴で、これはベルルッティのパティーヌレザーを作る工程に共通すると思いました。
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ブライアンのアートを3つの方法で解釈しました。
まず一つ目はブライアン・ロシュフォールの作品を写真(プリント)として再現する手法。セラミックアートの高解像度写真をシルクのシャツにプリントしました。 シルクを使用した理由は、シルクは繊維が細いので色の鮮やかさや深みを綺麗に反映してくれるからです。もう一つはシャツではなく、スポーツウェアのジャケットになります。スポーツウェアのテクニカルな要素を取り入れています。
二つ目はアルチザンな方法で解釈しました。 例えばニットですが、ニットウェアと言ってもシルクやナイロンなどテクニカルな繊維を使い、非常に立体的になっています。セラミックアート作品のような3D感が体感できると思います。
三つ目はパティーヌに落とし込みました。例えば靴を見て頂くと分かるのですが、薄い黄色のステインのデザインはこちらのセラミックアートから取り入れました。1つ1つ全ての工程は手作業で行なっています。
その他にも今年の1月にグローブ・トロッターとコラボしたスモールサイズのメッセンジャーバッグに落とし込んでいます。今回は一面だけパティーヌしていて、これは先ほどのアートピースからの色を取り入れています。
他にもパティーヌジャケットがあるのですが、現段階ではまだ完成していないため、お見せすることができません。このジャケットもグローブ・トロッターのピースと同様、ダークグリーンとオレンジで展開予定です。
—— このタイミングでコラボレーションの作品を見られるとは思っていなかったので、びっくりしました(笑)
ラッキーでしたね。 コロナのロックダウンの影響で私とチームは自宅でずっと作業をしていました。 工場や生地メーカーも数週間前にようやく再開したところで、急いで作成に取り掛かってもらいました。後日公開される動画ではこのプロセスをご覧いただけます。
コロナがデザイナーに与えた影響とは?
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今回、自分のキャリアの中で初めて通常(トラディショナル)の方法、ランウェイや展示会など、でファッションを表現することができませんでした。私自身、リアルなモデルに着せて感じられるエモーションが好きです。今回初の試みでコレクションを動画でお見せすることになりますが、この形式だと視聴者は通常見ることのできない、インスピレーションや裏の部分をお見せすることができるので、それはとても興味深く感じました。
また、ロックダウンの影響でトラディショナルな方法でクリエイションできなかったのですが、これもアーティスティックな面で考えると面白い経験でした。 本当に必要な物だけにフォーカスし、どのピースも全て完璧に仕上げないといけません。 通常ですと細かい修正はモノができてから行いますが、今はその様な修正は全て頭の中、即ちアイディアの段階で行う必要があります。 先ほど言ったように無駄なく、必要な物にフォーカスしなくてはいけません。
—— コロナの影響でファッション業界もデジタル化がさらに加速しています。そんな中、コレクション発表の仕方など、どんな発信を考えていますか?
私は伝統的な手法で作品を発表することが好きですが、このコロナの影響でオンラインやビデオ、SNSでコレクションを発表するということが、さらに増えていくと思います。そんなSNSでのショーの配信で若い世代がどんなインスピレーションを感じ取るか、そこにとても興味があります。
今、世界中がデジタルへシフトしています。 しかし今回コラボレーションに選んだアーティストはデジタルとは真逆で手作業、手作りの要素が多い方です。 これはパティーヌのアートワークに共通する要素があります。
ロックダウンの最中、考えていたのは、「ラグジュアリー」は減るかもしれないということ。ですが、その分より良い物を作るように変わっていくと思います。作品の完成度を上げるためのパーフェクトな修正と編集(エディット)が求められていると思います。
—— 日本のファンや、LEON読者に伝えたいことはありますか?
日本の皆さんは、ラグジュアリーやクラフツマンシップ、クリエイティビティのバランスに対しての造詣が深いと思います。細密なテクニックやアーティスティックな面など、目に見えない部分への理解があります。そうした意味で今回のコラボレーションの作品を楽しんでいただけると嬉しいです。
華麗なる経歴をもつ、クリス・ヴァン・アッシュ(Kris Van Assche)とは?
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セラミックアート界の新星! ブライアン・ロシュフォール(Brian Rochefort)とは?
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今回のコラボ詳細はこちらの動画で!
ベルルッティってどんなブランド?
ベルルッティは1895年パリで創業された4世代続くシューメーカーです。2005年に上質なレザーグッズを発売し、2011年にレディトゥウエアコレクションを発表。パリのマルブフ通りとセーヴル通りにあるベルルッティのアトリエは、全身フルオーダーメイドで誂えることができる世界で唯一のメゾンに。現在ベルルッティは世界中に50店舗を展開しています。