2020.08.13
【ヴィンテージの達人に聞いた】大人の古着入門・フレンチ編
大人の古着ブームがじわじわと再燃している昨今ですが、古着=アメリカのみにあらず。フランスのそれにも知る人ぞ知るカッコよさがあるんです。フレンチ・ヴィンテージに魅せられた人物、「スロウガン」「オーベルジュ」のデザイナー小林 学さんにその魅力を伺いました。
- CREDIT :
写真/椙本裕子 取材・文/秦 大輔
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時代を超越する手仕事が、フレンチ・ヴィンテージにあるんです
◆軍医用コットンリネンコート(第二次大戦期)
独特のユル〜いテイストは、まさしく今の気分!
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小林学さん(以下小林) 「襟がダブルで深めにとってあるのが特徴で、留めないとダラダラに垂れる。この表情が最高ですよね。ただ、元来が白衣ですからオリジナルは色が生成りで、さらりと着るにはハードルが高い。なので私は、吉野のタデ藍を使って藍色に染めちゃいました。縫製糸も天然素材なので綺麗に染まりましたね。じつは今日僕が着ているシャツも同じ染め方で本藍染めしたものなんですよ」。
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◆ リネンの軍パン(第一次大戦期)
柄の語源“ニシンの骨”を地でいく迫力の凹凸
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小林 「おそらく過酷な塹壕戦を戦う兵士のために作られたものだと思うのですが、表情に迫力がありますよね。それでいてリネンの質が高いので、履いても全然カユくない。ヒヤッとした冷感を感じますし、タッチが本当に気持ちいいんです」
「作りも面白くて、今では英国の高級テーラーしかやらないような“グリ閂”と呼ばれる補強が手で施されていたり、いかにもフランス服らしい不思議を感じます」。
◆ 19世紀末のリネンシャツ(左)、「オーベルジュ」のリネンシャツ(右)
超がつくほど細かいギャザーに浮かぶ、職人魂!
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小林 「19世紀後半から20世紀初頭にかけてのフランス古着には、ミシンの仕事と手仕事の両方が残っているのが面白い。このシャツもボタンホールは手縫いですし、袖のギャザーも手で入れている。これがハンパじゃなく細かくて……職人の根性を感じます(笑)。リネン生地の風合いがまた素晴らしく、ものすごく高番手の単糸で織られている。この薄さが、エレガントなんですよね」。
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小林 「今の織機で織れる限界の細さに挑み、80番のリネン単糸を高密度に打ち込んで風合いを再現しました。袖にはギャザーを入れ、独特のたるみを表現しています。この袖のパフッとした感じはフランスの古いシャツに特有のもの。あえて芯を入れない柔らかな襟もしかり、僕はここにフランスの伊達を感じます。なお、デザインはこれとは別に、彫刻家のロダンがアトリエで着ていたスモック(シャツ)を参考にしました」。
◆ 「オーベルジュ」のバスクシャツ「シャルロット」
当地のカットソーにはない心地よさを求めて
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小林 「素材は、高級超長綿のスビンコットンの中でも最も上質といわれる、一年目のコットンボールのみを集めた“スビンゴールド”。その糸をガチガチに引き揃え、超度詰めで編みました。ハリといい滑らかなタッチといい、これ以上ない!と思っています(笑)」。
シルエットのモチーフはずばり、フランスの女優、シャルロット・ゲンズブールが着ていたそれ。
小林 「1985年の映画『なまいきシャルロット』の衣装を参考にしました。水兵のそれにはないオーバーサイズの着方が、性差を超えてカッコよく見えて。ユルッと肩の落ちた感じが、今のテイストにもマッチしていますよね」。
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● 小林 学
オーベルジュ/スロウガン デザイナー。1966年神奈川生まれ。文化服装学院を卒業後、渡仏。服飾の知識を深め、帰国後は南仏発祥のデニムブランド、岡山のデニム工場にて商品企画に携わる。1998年に自身のブランド「スロウガン」をスタート。2018年に「オーベルジュ」を立ち上げる。YouTubeにて「AUBERGEチャンネル」を配信中。誰よりも深く、楽しく服を語る姿にファンが多い。
ホワイト スロウガン 03-3770-5931