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落語家がサングラス!? 意外なようで、実はそうでもない理由とは?
瀧川 お洒落は昔から好きですね。仲の良い先輩や友人の中には、ファッションデザイナーとして活躍されている方もいます。
──今日着ていらっしゃる柄シャツも気になるところですが、今回お聞きしたいのはサングラス。普段から愛用されているとお聞きしたんですが。
瀧川 サングラスマニアというわけではありませんが、外出するときはよく掛けています。
──いつから愛用されていますか?
瀧川 10代の頃から愛用していますが、ただその当時はちょっといかつい感じを狙ってというか(笑)、それこそカールカナイとかヒップホップなサングラスを掛けていました。まぁ、格好つけることが目的でしたね。でも今は、コーディネートに合わせてチョイスするなど、ファッションアイテムとして重宝しています。
──薄い色のレンズが好みとか。
瀧川 濃いレンズも格好いいと思うんですけど、サングラスの主張が強過ぎる気がするんです。薄いカラーレンズだと、コーディネートに溶け込んでくれます。
──ファンの方からの見栄えを意識して、みたいなことではないんですか?
瀧川 それは特にないですけど、でも言われてみれば濃いレンズだとやっぱりいかつくは見えるでしょうね。基本的に、僕はオンもオフも境を設けていません。高座に上がる時は流石に切り替わりますが、それ以外は常に同じスタンス。分けてしまうと、芸が嘘っぽく見えてしまうと思うんです。
──薄いカラーレンズといえば、まさに今トレンドだと思います。その辺りも意識していますか。
瀧川 もちろんトレンドはチェックしています。でも、あまのじゃくな部分があるので、トレンドに全乗っかりはしないですね。ブルーを掛けている人が多くなるとブラウンを選んだり、少しでも周囲とは同じにならないようにしています。レンズも頻繁に交換していますよ。
──今日お持ち頂いたサングラスは、どんなところが気に入っていますか。
瀧川 エナロイドの1本は定番のウェリントンですが、ウェリントン自体は流行する前からずっと好きな形でした。流行してからは、レンズを薄いカラーレンズに変えたりして、周りと被らないようにしてきましたね。オリバーピープルズのメタルフレームも、ラウンドがトレンドと知ってスクエアを選びました。レンズは大人っぽくブラウンにしたんですが、ブラックのシャツとかに合わせるとちょっとその筋の人っぽく見えちゃう時があるんですよね(笑)。
──それにしても、サングラスと落語家さんってイメージがかけ離れているんですが。
瀧川 実はそうでもないんです。大師匠連中は、むしろやんちゃな人ばかり。ゴールドのネックレスや総柄シャツなど、凄くやんちゃなファッションに身を包んでいる人も少なくありません。そもそも落語界って、社会の枠にとらわれない、レールからはみ出している人が入ってくる世界だったので。
──伝統芸能だから、てっきりお堅い世界かと思っていました。
瀧川 僕もそう思っていました。もちろん、礼儀やしきたりにはうるさいですよ。でも、服装やお酒の飲み方などは、むしろ破茶滅茶。僕は今日のような柄シャツにサングラスというコーデでよく楽屋に入りますが、叱られるどころか「おっ、いいシャツとサングラスじゃねえか!」って褒めてくれます。師匠の方々自身も、結構いかついサングラスを愛用していますしね。
──鯉斗さんといえば元暴走族の総長ということで、よく異色の落語家なんて紹介のされ方をしているのを見かけますが、むしろ本流じゃないですか。
瀧川 そうなんですよ(笑)。僕自身、この道に入った時に違和感を感じませんでしたから。暴走族も落語界も、バリバリの縦社会ですし。
──むしろ、しっくりきたと(笑)。そのうち、高座に柄シャツとサングラスで上がるなんてことも・・・。
瀧川 それはさすがにないです(笑)。でも、独演会では今どきのファッションを取り入れた落語をやってみても面白そうですね。
──そばをすする姿を仕草で表現するように、サングラスを外す所作を表現するとか。
瀧川 なるほど、確かにメガネを外す動作は落語にはないですからね。とはいえ、まずは古典をしっかりやらないといけません。芸の道は先が長いですから。サングラスを掛けている姿を見て「調子に乗ってんな」と言われないように!
鯉斗さんこだわりサングラス その1
オリバーピープルズ「505」
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鯉斗さんこだわりサングラス その2
オリバーピープルズ「ボード・ミーティング2」
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鯉斗さんこだわりサングラス その3
エナロイド
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●瀧川鯉斗(たきがわ・こいと)
1984年生まれ、愛知県名古屋市出身。本名は小口直也。公益社団法人落語芸術協会所属。2002年、瀧川鯉昇(当時は春風亭鯉昇)に弟子入りする。2005年3月楽屋入り、2009年4月二ツ目昇進、2019年5月に真打昇進。出囃子は「むつのはな」