2021.08.20
VOL.14「『ケネス・ビゲイ』のバングル」
僕がターコイズの不思議な力を信じるようになった理由
常に独自の視点で独自の音楽を生み出していくDJとして世界中で活躍する田中知之(FPM)さん。音楽のみならずファッション、時計、クルマ、グルメとオールジャンルでの博覧強記を駆使した田中流「男の定番」をご紹介する連載です。
- CREDIT :
写真/鈴木泰之(Studio Log) 文/田中知之(FPM)
■ Theme14「『ケネス・ビゲイ』のバングル」
ある時、長期の海外出張から帰宅すると、その大木に落雷があったので近々伐採する、とのメッセージがポストに投函されていた。なるほど、僕の家のテレビとエアコンの室外機も壊れてしまっていた。ちょうどそんなタイミングで出合ったのが、モダン・ナバホ・ジュエリーの父とも呼ばれるケネス・ビゲイ(1913〜1977年)の最晩年の作品と思しきバングルだった。
半年後、アメリカのLAに行く仕事に恵まれ、それならばバングルを里帰りさせようと思い立ち、アリゾナ州セドナまで足を延ばした。セドナ滞在中にふらりと立ち寄った何の変哲もない土産店の店番をする高齢の女性が、僕のバングルを見るなり「良いターコイズね! 日本人?」と声をかけてきた。
実はその日、数年振りに店に立ったという女性は、店の奥から一本のボロータイを持ち出し、私に手渡した。「私の亡くなった主人が大切にしていたものよ」。大きな石に均一に入った見事なスパイダーウェブから、ひと目で高価な物だと判断できた。石の産地を尋ねると、KINGMANとの答えが。つまりは僕のバングルの石と同じ産地。思わず売り物なのかと尋ねた。
「数年振りの店番で、あなたに会えたのも運命ね」と彼女が提示したプライスは、最初僕が桁を一つ少なく聞き間違えたんじゃないかと思ったくらい安価だった。バングルは里帰りどころか、同郷の結婚相手まで連れて日本に帰ってきたって訳。以来、僕は余計にターコイズの不思議な力を信じるようになった。
思いがけず手に入れてしまったボロータイだけど、LEON読者の貴兄にとってはなじみの浅いアイテムだと思う。実は、オーバーサイズ気味の白のTシャツに合わせると、これからの季節にとても重宝するので、合わせて裏定番として認定しておく。
石自体の色味もウェブの入り方も美しい
御守りのような力を感じるターコイズ
【着用イメージはこれ】
白とターコイズブルーのコンビネーションが見事
濃いブルーに見事なスパイダーウェブが均一に入る最高グレードのキングマン。かなり迫力のある大振りのターコイズが白いTシャツに映える。
田中知之(FPM)
1966年京都生まれ。音楽プロデューサーでありDJ。それでいてクルマも時計も大好物。ヴィンテージにも精通し、服、家具問わずコレクターであり、食への造詣も深い。www.fpmnet.com