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2020.03.24

男のファッションにルールがある理由とは?

ただカッコよければ良いというものでないのが男のお洒落。誰のために、何のために男のお洒落はあるのか? スーツの歴史にも詳しい中野香織さんが解説してくれました。

CREDIT :

文/いとうゆうじ

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良くも悪くも男のファッションにはルールがある。自己を主張するツールでありながら社会的立場を守らなければならない男特有のファッションの論理について服飾史研究家の中野香織さんに話を伺いました。

男はどこまでお洒落していいのか常に確認する必要がある

男性は自分ひとりの判断で好きなものを着ることが難しい存在だと思うのです。というのも、社会性を考えたときに、周囲や自分の立ち位置を計りながら生きて行くのが男社会。だから自分がいまどこにいるのか、どこまでお洒落していいのかを常に確認する必要がある。それに、立ち位置を見極めるために、同時代の社会という横軸だけでなく、歴史という縦軸の物差しも必要になるのが男のファッションの特徴。
なぜそこまで気にしなくてはならないのでしょうか? 子どもを産むことによる確たる感覚を味わうことができない分、女性に比べて存在価値を危うく感じやすいということも理由の一つなのではないかと思います。そんな状況のなかでアイデンティティーを確立しておくためにも、スーツという洋服のシステムが必要だったのです。
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約束事に個性を差し込んだダンディと呼ばれる人たち

いまにつながるスーツが着始められた頃、それまで身分や階級によって細分化されていたファッションに、横並びの空気が広がりつつありました。階級の違いや資産の多寡に煩わされることのないよう、同じ服を着て対等にビジネスや社交をしましょうと決まったことで、スーツにジェントルマンらしさ、のようなものが染み込んだのです。
そこに一石を投じたのがダンディと呼ばれる人たち。約束ごとと自分の立ち位置を押さえたうえで、個性を差し込むことができたエドワード七世のような人をウェルドレッサーとするなら、一方で、大胆なチェック柄やウィンザー・ノットの祖とされる(このタイの結び目の命名者は部外者ですが)エドワード八世は周囲の反発を引き受けたダンディといえるでしょう。
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論理が必要なのは絶対的な自信がほしいから

いずれも英国王室の人ですから、自信もあるし、地位もある。泰然としていられるからこそ、格好良くみえたということは、あるかもしれませんね。そんな彼らと同一化を図りたくなるのも男性特有の心理で、とにかく微に入り細に入り調べて、ルールやロジックにこだわる。そして、メンズスタイルというルールのもとに張り合ったりする。
それもひとつの文化ですが、スーツで張り合うことぐらい平和なこともないですね(笑)。結局、男のファッションに論理が必要というのは、自分がしっかり立っているためであって、横軸でも、縦軸においても、絶対的な自信がほしいからだと思います。

些事を抑えておくことは些事をおろそかにしないこと

たかがファッションかもしれませんが、されどファッションのルールです。特にトップに立つような人は服のルールという些事を押さえておくことで、ビジネスでも些事をおろそかにしない人という信用を得られることもある。人間は中身が大切であることに間違いありませんが、外見は、「外側に現れた中身」でもあります。だから、客観的に自分の立ち位置とファッションを確認することは、社会的に生きるための最低限のたしなみだと思いますよ。

● 中野 香織(なかの・かおり)

エッセイスト、服飾史家。東京大学大学院修了。英国ケンブリッジ大学客員研究員、明治大学特任教授を歴任。新聞・雑誌・ウェブなどに多数の連載記事を執筆するほか講演、コンサルティングをおこなう。著書『紳士の名品50』(集英社)、『モードとエロスと資本英社新書)、『ダンディズムの系譜 男が憧れた男たち』(新潮選書)など。

ホームページ/www.kaori-nakano.com

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