イザベル マランがイケてる理由
イザベル・マランさんは1967年パリ生まれ。85年にスタジオベルソーに入学し、卒業後にインド、アフリカなどを放浪。87年からミッシェル クランで経験を積み、その後はマーク・アルコーリのアシスタントとして、クロエやヨウジヤマモトのアートディレクションに関わります。88年にはニットとジュエリーのブランド「TWEN」をスタート。94年にイザベル マランを設立し、1995年春夏からショー形式でコレクションを発表しています。
25年以上のキャリアを持つベテランで、日本でも表参道に直営店があるので、ご存知の方も多いかと思います。彼女のクリエーションのベースにあるのは、青春時代を過ごした80年代のパリの匂いと、バックパッカー時代に培ったヒッピー的なテイスト。ボディコンシャスなドレスは80年代のパリのナイトシーンを連想させますし、パステル調のカラフルなニットは80年代の学生生活、サンタフェ&ウエスタン風のシャツやブーツはボヘミアンなライフスタイルを連想させます。
モードの世界では長らく80-90年代ブームが続いていますが、はっきり言ってイザベル以上にこの時代の空気感、匂いを内包しているブランドは他にありません。でも当時の回顧ではなくて、今の空気もちゃんと捉えているのが本当に素晴らしいのです。
レピュブリック近辺でふたつのパーティーに顔を出し、ウーバーで会場に着いたのは、ライブパフォーマンスが始まる10分前の20時20分。この建物の象徴的で威厳のある柱を、最新コレクションのルックでラッピングしちゃってます。いや〜マジかぁ(笑)。この素晴らしい演出を目の当たりにして、卒倒しそうになっちゃいましたよ。
パリの美しいPR女子に名前を伝えて、会場に入ります。比較的クローズドなパーティーで、ゲストは150〜200人くらいでしょうか。イザベルさんと一緒に歳を重ねてきた妙齢の男女が中心で、平均年齢は50歳を超えていると思います。でも中高年の集まり的な雰囲気は一切なくて、みなさんとても華やかでお元気です。
建物に入る階段には、クーラーボックスに入ったフードとシートのピクニックセットが置かれています。僕はあまり特権階級的な遊びが好きではなくて、外から丸見えで正直少し気が引ける部分もありましたが、シャンパンを2杯飲んだら楽しくなって周りは気にならなくなりました。“忍法アルコールの術”ってやつです(笑)。
気分が上がってきたので、会場の素敵な男女にお声がけして写真を撮りまくりました。もちろんイザベルさん本人も! せっかくなので会場で撮った素敵なスナップを紹介しましょう。
パリでは屋外でのマスクの着用義務が6月20日からなくなったのですが、昼間は体感的には2/3の人がマスクをしています。建物の中ではまだ義務なので、食事中にトイレに立つ時はマスクをしていないと注意されます。地下鉄やタクシーでもそれは同じです。
でも、夜はみんなノーマスクで楽しくワイワイ飲んでいます。コロナと共生しながら楽しく生きていくことを、パリの多くの人たちは既に選択しているのです。なんでも欧米を見習う時代はとうに過ぎていますが、まだまだ見習うことはあると感じました。
イザベルさん、本当にありがとうございました。こんなに楽しいお酒の場は久しぶりでした。それでは、また明日!
● 増田海治郎
1972年埼玉県出身。神奈川大学卒業後、雑誌編集者、繊維業界紙などを経て、2013年にフリーランスのファッションジャーナリストとして独立。メンズとウィメンズの両方に精通しており、モード、クラシコ・イタリア、ストリート、アメカジ、古着までをもカバーする。