2021.07.11
ナイキ エア ジョーダンIの40足超えコレクション!? その持ち主は?
バーニーズ ニューヨークに勤務する中野光章さんは、学生時代からの熱烈なジョーダンマニア。貴重な85年モデルをはじめ、通好みの復刻版を含む総勢40足をコレクションする達人です。今回は、厳選のお気に入りモデルと共に“エア ジョーダン Iならではの魅力”をたっぷりおうかがいしました。
- CREDIT :
写真/大森 直(TABLE ROCK inc) 文/長谷川 剛(TRS)
大人スタイルにもマッチする懐の広さが魅力
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「エアジョーダンとの出会いは高校生の頃。当時僕は先輩の影響もあってクラブ通いを楽しんでいました。夜ごと渋谷に集まる先輩の足下を飾っていた靴こそエア ジョーダン。そのスニーカーを軸とした渋カジスタイルに憧れ、僕も探して履くようになりました。当時の若者ファッションである渋カジスタイルは、アメリカンカジュアルからの派生系。足下にニューバランスやエンジニアブーツをチョイスする人も多かったのですが、なかでもエア ジョーダン Iを選ぶ人に、お洒落巧者が多かった印象です。当時はベンデイビスなどのワークパンツと合わせた、ストリートなコーディネートがシーンを席巻していました」
エア ジョーダン Iに関しては、アメリカンストリートカルチャーに根差す象徴的なアイテムという側面も、中野さんの興味を大いに惹きつけました。
「LL・クール・Jがデビューアルバムの裏ジャケットで、真っ黒コーデに赤×黒色のエア ジョーダン Iを合わせており、そのスタイルに強い影響を受けました。また、スパイク・リー監督の映画『ドゥ・ザ・ライトシング』を繰り返し観て、エア ジョーダンを大事にする黒人文化が存在することなど、単なる運動靴を超えたディープなスニーカーカルチャーを知ることで、より深みにハマっていったのです」
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趣味が高じてレポートまで作成した学生時代
「当時のヒップホップアーティストたちが選ぶスニーカーの分析に始まり、それを踏まえた国内店舗でのスニーカー販売に関する追跡、そしてナイキジャパンにまで取材を敢行したリポートは、今見ても『よくやったなぁ』と感じる出来栄え(笑)。このリポートを提出した1994年は、復刻スニーカーのブームが一段落した後の変換期でした。いろいろと調べることで、その後につながる多くの発見があったことを今も覚えています」
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10年経ても愛用できる作りの確実さ
「世界的な規模を持つショップのスタッフとなり、仕事で多くのブランドを知るようになりました。モードデザイナーの靴などを手にすることが増え、スニーカーから少し遠ざかる時期もありました。ただし2000年代後半に自宅を引っ越すことがあり、クローゼットやストックルームの荷物整理をすることで状況は一変。コレクションのスニーカーを改めて手に取り、また履いてみようという気分が盛り上がったのです。ただコレクションの多くは、加水分解や経年劣化によりジャンク状態になったものも。しかしエア ジョーダン Iやダンクなどのナイキ製スニーカーは、しっかり実用レベルをキープしており、改めて『スゴい!』と思わされました」
せっかく集めたとしても3~4年で劣化が始まってしまうスニーカーというアイテム。しかしエア ジョーダン Iなら10年後でもしっかり実用できるに違いない。そう考えた中野さんは復刻のエア ジョーダン Iを中心に、またコレクション活動を再開させたのです。
「2010年代から再び集めだした切っ掛けとして、当時復刻モデルに爆発的なヒットがなく、ジョーダン1でも比較的買いやすかったことが挙げられます。今では人気のエアジョーダン I シャドウなども、当時のアトモス新宿店では普通に展示販売されていました。その後、ナイキが“OGシリーズ”などを展開することを知り、さらにジョーダン熱が加速していきました」
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世界中でリスペクトを受けている特別な一足
「オリジンと言われる“シカゴ”カラーに始まり、今までいろいろなエア ジョーダン Iを手にしました。しかしどれも製品として高い完成度を実現しているように感じます。マルチカラーにアレンジされると、破綻したり別モノになってしまうモデルも多いのですが、エア ジョーダン Iはどんなアレンジでもしっかりオリジナルの味わいをキープしています。当然ナイキのセンスの良さもあると思いますが、1985年のオリジナルがベースモデルとして高い完成度を実現していたのだと思います。
また、魅力的なバリエーションを常に作りだしており、マニア心を巧みにくすぐるところも見逃せません。今日履いているジョーダンは“SB”というスケートシリーズのひとつ。トリックなどを重ねることでアッパーが削れ、下地カラーが顔を出すという手の込んだ一足。これも実に素晴らしいアイデアだと思います」
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「リリースされてすぐ完売となる復刻スニーカーはいくつか存在します。しかしエア ジョーダン Iは世界的に広くリスペクトされているところが大きなポイント。たとえば海外出張に履いて出掛けた時、街角で『ナイスジョーダン!』など声を掛けられることがたびたび(笑)。また雨が降った時は『濡れるから』と店員さんにビニールをいただいたこともありました。その他、ネイティブアメリカンジュエリーを求めてサンタフェの町を訪れた時も、『そのジョーダン最高だね』と褒められたり。他のスニーカーでは、ここまでのエピソードは生まれないように思います」
エア ジョーダン Iはアイテムとしての高い完成度が魅力と強調する中野さん。それゆえにいろいろな装いに合わせられるモデルとも指摘します。
「ショーツにはもちろんスラックスとコーディネートしても、しっかりキマるところがエア ジョーダン Iの良いところ。アメカジなどの装いにマッチすることは言わずもがな、キレイめスタイルの差し色アイテムとしても活用可能です。たとえばモードな真っ黒スタイルの足下に“ツマクロ”を合わせてみたり。また“シカゴ”カラーに合わせて、赤いシャツを着込んだ装いもお洒落だと思います。スニーカーは大人っぽい着こなしにマッチしないと考える人も多いと思います。しかし、個人的にはタイドアップにあえてエア ジョーダン Iを合わせるようなスタイルも楽しんでいます。大人だからこそ、そしてエア ジョーダン Iだからこそ成立するコーディネートが、まだまだあるように感じています」
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● 中野光章さん(バーニーズ ニューヨーク クリエイティブサービス部 アシスタントディレクター)
大学卒業後にバーニーズ ジャパン入社。新宿店デザイナーズフロアのマネージャーを経て、2003年よりPRマネージャー、2021 年より現職。PRや自社メディアを統括。ネイティブジュエリーに加えヴィンテージウエアに関しても深い造詣をもち、ファッション誌等の企画構成も手掛ける。