今回のファッションウイークは生憎の雨模様でした。期間中は晴れの予想はほぼなし。でも、こっちの天気予報って外れまくるんですよね(笑)。終日雨予報だったのに、意外と日が射す時間帯もあり、ジメジメした気分になることもありませんでした。
地下鉄7号線のレ・ゴブラン駅を出た時、雨は本降りになっていました。会場のモビリエ・ナショナルはゴブラン織の織物博物館で、パリのテキスタイルの歴史を紡ぐ場所です。華やかな雰囲気ではありませんが、エルメスはこの会場を何度も使っており、メゾンの雰囲気ととても合った場所だと思います。今回はこの建物の中庭を使用しました。
5分前に会場に着きました。数十人のフラッシュを浴びます。こんな東洋のメタボオヤジにもシャッターを押さなければならないフォトグラファーに同情しつつも、なんちゃってセレブな気分を味わいます。気持ちいいというよりこそばゆいかんじ。ところがインビテーションがバックの中から見つからず、会場の入り口でアタフタ。その間も容赦なくシャッターの雨は降り注ぎます(泣)。1ブロック前で傘をたたみ、招待状はジャケットの内ポケットに入れておくべきでした。まだまだ修行が足りないですね。
招待客は100〜150人くらいで、いつもの1/3くらいでしょうか。日本人は自分を含めて3人のみ。会場には5枚の大型のスクリーンが配置されていて、ショーの様子は世界に生配信されます。演出を手掛けるのは、舞台演出家のシリル・テストさん。本降りの雨の中、ほぼオンタイムでショーは幕を開けました。
全体的な印象は、とにかく上品で軽やかだということです。シグネーチャーのレザーアイテムは、起毛したクロコダイルのシャツやジージャン型のブルゾン、色褪せたピンクベージュ色のメティスレザーの半袖シャツとショートパンツのセットアップ、ベロアのパーカやステンカラーコートなどで表現されています。
テーラードジャケットもビジネスライクなものは皆無。ジッパーポケットが多数ついたトラベルジャケットや、ベストと重ね着したようなダブルフロントのデザインジャケットは、今の時流を完璧に捉えていると言えるでしょう。シャツのヘムの片方をパンツインするスタイリングも、リラックス感に溢れていて素敵です。
オレンジが徐々にピンクに変化するカシミヤのグラデーションニットは、春から初夏の海沿いで着たら最高に映えそう。インナーのニットは90年代前半に流行したロールネックで、オヤジさんには感涙モノのディテールになっています。それに合わせるショートパンツは長めの丈のワークテイスト、ってギャップも最高です。
● 増田海治郎
1972年埼玉県出身。神奈川大学卒業後、雑誌編集者、繊維業界紙などを経て、2013年にフリーランスのファッションジャーナリストとして独立。メンズとウィメンズの両方に精通しており、モード、クラシコ・イタリア、ストリート、アメカジ、古着までをもカバーする。