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2018.03.29

グッチはなぜ、ソーシャルメディアエンゲージメントを勝ち取れるのか?

ケリンググループが全世界のプレス向けに配信する『ケリング ラグジュアリーハイライト』。その中からここでは、現代のモードファッションを牽引するグッチのソーシャルメディアへの取り組みの項をご紹介する。

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文/前田陽一郎(LEON.JP)

グッチ、サンローラン、ボッテガ・ヴェネタ、ブリオーニからプーマやジラール・ペルゴ、ブシュロンなど幅広いブランドを有するケリング グループが発信する『ケリング ラグジュアリーハイライト』(http://www.luxury-highlights.com/en/)と名付けられたリリースを配信している。これは社内外から見た同グループの活動報告だが、ここには普段ファッション情報誌やウェブサイトでは知り得ない、ブランドの一面を読み知ることができる。

今回は『GUCCI:ソーシャルメディアエンゲージメント』のなかから「新しい世代との関わり合い」の項を、同社の許諾のもと、リリース原文ママで掲載する。現代のモードファッションを牽引するグッチのソーシャルメディアへの取り組みはほかのビジネスにおいても参考になるのではないだろうか。
グッチ/GUCCI
アレッサンドロ・ミケーレによるクリエイションはもちろんのこと、ソーシャルメディアを駆使したコミュニケーションによって、より深く時代とのシンクロを図るグッチの取り組みは、他分野のSNSブランディングのアイデアになるのでは。
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ソーシャルメディア上でコンテンツをチェック、そしてポストしていくことは、ミレニアル世代にとって、もはや生活の一部となっています。このような傾向はグローバル・コミュニティーとグッチが繋がる機会をもたらしました。グッチがどのようにしてソーシャルメディア上におけるプレゼンスを確立したのか、エグゼクティブ・ヴァイス・プレジデント兼チーフ・マーケティング・オフィサーのロバート・トリユフスが語ります。

グッチのデジタル戦略の基本理念について教えて下さい。

私たちがソーシャルメディア上に示す戦略やストーリーを展開するのに欠かせない概念が、「本物であること」と「包括性」です。これらの概念は、アレッサンドロ・ミケーレの哲学の核を成すものであり、これらに基づいてコレクションは制作されています。

ソーシャルメディアに関しては、 グッチのプラットフォームは外の世界に繋がる窓口として、他の人々との共同創作を可能にする場であり、ミレニアル世代が信じることが映し出される場でもあるのです。このため、彼が創り出すキャンペーンやファッションショー、ソーシャルメディアのために作られたすべてのコンテンツには一貫性があり、すべて同じストーリーが語られています。アレッサンドロがファッションに対して抱くビジョンは、真の意味での自己表現を可能にすることなのです。これこそが今日のグッチを象徴するものであり、またデジタル戦略を推進する起動力となるものなのです。
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そうしたデジタル戦略の実行例をいつくか教えてくれますか?

#GucciGramでは、グッチの3つの象徴的なモチーフをアレッサンドロから指名された複数のアーティストやイラストレーターがInstagram上で再解釈を行い、また#24-Hour Aceにおいては、Snapchat アカウントの管理を24 時間に亘り複数のアーティストに渡し、クリエイティブでカラフルなミニ動画を撮影するように依頼しました。

その他にも、新しいタイムピースコレクションの発表に合わせて行われた#TFWGucci ミーム・プロジェクトでは、世界中のデジタル・アーティストを結集させました。このようなアーティスティックな繋がりは、一つのキャンペーンにとどまらず発展してゆく可能性があります。

たとえば、アレッサンドロはアンスキルド・ワーカーとして活動している英国のアーティスト、ヘレン・ダウニーをInstagram上で発見し、エクスクルーシブなカプセルコレクションのコラボレーションを展開させました。

ソーシャルメディア上で新しい世代と関わり合うことにおいて、グッチはどのような成果を上げていますか?

グッチは、ここ数ヶ月の間に行われた調査において、コンテンツを通して最大限のエンゲージメントを実現しているブランドのひとつとして挙げられました。特にInstagramアカウントは、そのオーセンティックかつ一貫性のあるストーリーや、数々のコラボレーションが成功しています。
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ドライブ・ダイナミクス社がラグジュアリーブランドを対象に行ったソーシャルマーケティングとソーシャルメディア上の価値に関する調査では、グッチはオーガニックメンションとエンゲージメントにおいて前年比30%(6,600 万ドル)相当の年間成長率を達成し、2017年12月時点で最上位にランクされました。

私たちの最大のエンゲージメントは、往々にしてクリエイティブなプロジェクトやフォロワー数を多く持つブランドの友人たちとのコラボレーションを通じた、独自のクリエイティブコンテンツから生まれています。ラグジュアリーブランドにとって、ソーシャルメディアだけでなく、ウェブサイトやウィンドウ、パッケージ、キャンペーンなどを含むさまざまなタッチポイントにわたって同じストーリーを発信することも重要です。

すべての点を一貫性と統一性のある方法でつなげていることが、グッチの今日の成功に欠かせない一つの要素となっているのです。

一貫した雰囲気を創り出し徹底する上で重要だったことは何でしょうか?

言うまでもなく、すべてのコレクションにわたって独特のビジョンをもたらす一人のクリエイティブ・ディレクターがいることです。とはいえ、タッチポイントの数を考えれば、これは決して容易なことではありません。

しかし、どこでブランドとエンゲージしようとも、メッセージに一貫性があり、ストーリーに合致していると私たちのコミュニティにいる人々が感じることが重要なのです。さもなければ、ブランドはまとまりがないものとなってしまいます。クリエイティブ・ディレクターが複数存在しているブランドや、ファッションとフレグランスの事業が切り離されているブランドにとっては特に、試練に満ちた課題だと思います。

私たちの強みは、ひとりの声で、一貫したストーリーを表現しているという事実にあります。 
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グッチはどのようにしてコンテンツそのものへのエンゲージメントを推進しているのでしょうか?

私たちのコンテンツは、複数のレベルにおいて機能しています。ある写真やイラストを見て、その美しさを表面的に、シンプルに楽しむこともできますが、掘り下げてみると、そこには意味があることがわかります。

たとえば、デジタル・アーティストのイグナシ・モンレアルが手掛けたグッチの2018年春夏キャンペーンのイラストレーションの数々は、モダン・アートにインスパイアされており、ぞれぞれのイメージの背景にはストーリーが隠されています。Instagramに投稿されたストーリーに目を通せば、知的で文化的なレベルが存在することがわかります。ソーシャルメディア上のコンテンツは、より強い感情的なエンゲージメントを生じさせるほど洗練されているのだといえます。

グッチはどのようにして、さまざまなソーシャルメディアのネットワークと関わり合っているのでしょうか?

継続的にコンテンツを生み出しInstagram、Twitter、Facebook、WeChat、Snapchatといったさまざまなプラットフォームに合わせた調整を図っています。

かつてのように、コレクションとプレコレクションの発表に合わせてキャンペーンをローンチするという時代は終わりました。私たちのストーリーへの欲求は、かつてない程高まっており、コンテンツ制作のリズムとペースが速くなっています。
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メディアに関しては、牽引率とエンゲージメントの点において、現在2,100万人ものフォロワーを持つInstagramがおそらく私たちのトレードマークともいうべきプラットフォームといえます。ビジュアルに特化されたInstagram上では、私たちのコンテンツを魅せることができる一方、今日きわめて重要なものとなったストーリー機能では、短い動画を発信することのできる強力なメディアです。

最後に、グッチのソーシャルメディア戦略はいかにして中国のミレニアル世代に働きかけているのでしょうか?

中国には、コンテンツを作成し、WeChatをはじめとするローカルのソーシャルメディアプラットフォームにそれらを展開する専任チームがいますが、コンテンツはアレッサンドロが中心となって生み出されたクリエーションにインスパイアされ、開発されたものです。

アレッサンドロが示す芸術的な基盤を維持しながら、中国のミレニアル世代にとって馴染み深い絵文字やアニメーションといった要素をコンテンツに組み込むようにしています。

たとえば今年の春節に、顔認証に対応する犬の形をした2つのアニ文字をあしらった斬新なコンテンツを制作し、戌年を祝うキャンペーンを立ち上げました。これはファッションブランド初の試みです。

中国は紛れもなく世界最大のファッション市場で、私たちはすでに数年に亘ってウェブサイトを開設しています。また最近では、Eコマースのサイトも立ち上げました。本チャネルは今後私たちにとって、重要なものとなっていくでしょう。
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以上が『ケリング ラグジュアリーハイライト』に書かれたグッチのソーシャルメディアエンゲージメントに関する取り組みだ。

記載されているようにグッチは、「本物であること」と「包括性」を徹底しながら、同時に主要SNSの特性を十分に研究した上で、そこに必要な表現方法を柔軟に、かつ的確に選択し、クリエイトしていることがわかる。

また、最後に中国を例にとりながら、ローカリゼーションへの取り組みの重要性にも触れている。ここでも驚かされるのはそのリサーチ力。世界でも高い認知を誇るブランドであるにも関わらず、中国というマーケットの特性、特異性を十分理解しつつ、抗うことなくしなやかに対応しようとする姿勢は、むしろあまりに周到だ。

そしてクリエイティブ・ディレクターの意思を各セクションが連携しながら、有機的に活動している様子もはっきりと見て取れることにも感心させられる。

このリポートには、複雑化する現代のブランドコミュニケーション戦略の重要なヒントが隠されているように思うのだが。

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