2018.07.12
ナイキがスニーカーシーンで王座に君臨するワケとは?【前編】
スニーカーのテクノロジーやデザインで常に時代をリードしてきたナイキ。その理由を、歴史を振り返りながら紐解いてみました。いつだってナイキは、スポーツブランドの枠を超えた“革命児”だったのです。
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文/南井正弘 編集/長谷川茂雄
ナイキの歴史は機能開発から始まった
ナイキの前身となるブルーリボンスポーツは、日本製スポーツシューズを輸入する会社として、オレゴン大学陸上部監督であったビル・バウワーマンと同陸上部員であったフィル・ナイトのふたりが1964年に創業しました。
彼らはただ単にシューズを輸入するだけでなく、アイデアマンだったバウワーマンを中心に、既存のシューズの機能に満足しないと自ら手を加えて改良したり、独自のスペックを提案することで、選手のパフォーマンス向上に貢献したといいます。やがて彼らが手がけたシューズは、アスリートから高い評価を得ました。
そして1972年、彼らは将来の方向性を明確にすべく自らのブランドを立ち上げる決断をします。それがナイキです。ギリシャ神話の勝利の女神「ニケ」にちなんでナイキと命名したのは、社員第一号となったジェフ・ジョンソンでした。
次々とスニーカーの新機軸を発表
朝食を食べているときに「こんなフワフワしたソールがシューズに付いていたら、どんなに走り心地が良いだろうか!?」という発想から誕生したと言われているアウトソールは、凸型の形状のスタッドが敷き詰められ、ワッフルそのものではなくワッフルを焼く金型の形状に似ています。
このアウトソールパターンは、土や芝生といったオフロードでは比類なきトラクション性能を、アスファルトやコンクリートといったオンロードでは高いクッション性を提供し、瞬く間にランナーに受け入れられることになりました。
ワッフルソールは、ナイキ草創期におけるテクノロジーの代表的存在といっても過言ではないでしょう。そしてさらに1979年に正式発表されたクッショニングテクノロジーが、ナイキというブランドを大きく飛躍させることになります。それがナイキ エアです。
ナイキ エアの進化とともにブランドも躍進
当時としては珍しかったポリウレタン製ミッドソールに踵からつま先部までワンピースのフルレングス エア ユニットを内蔵したプロダクトで、合成樹脂製のエア バッグに圧力ガスを内包したナイキ エアは、従来にないレベルの衝撃吸収反発性能を確保していただけでなく、その高いクッション性を長くキープできたことも当時のランナーを驚かせたといいます。
このナイキ エアは当初ランニングカテゴリーのみに採用されましたが、1982年になるとバスケットボールシューズのエア フォース 1、テニスシューズのエア エースといった他カテゴリーのシューズにも採用されるようになり、ナイキのみならず、スポーツシューズ業界で最も知名度の高いテクノロジーとなりました。
そして1987年、ナイキはそれまでミッドソール内部に隠されていたナイキ エアを外部から見えるようにした新製品をリリースします。それが“エア マックス”とネーミングされたランニングシューズです。
ナイキのデザイナー、セルジオ・ロザーノによる人体をモチーフにしたその斬新なデザインもあいまって、エア マックス 95は、ファッション感度の高い人たちにも受け入れられました。当時のストリートシーンで大ヒットしたことは、現在30代半ば以上のみなさんなら覚えていると思います。あのお店や街で繰り広げられた争奪戦は、凄まじいものがありました。
エア マックスの登場は、スニーカーのクッション性能に革命をもたらした大きな出来事でしたが、ナイキの功績はそれだけに止まりません。後編では、ナイキがエア マックス以外にランニングシューズにもたらした驚くべき機能とアイデアに迫ります。
● 南井正弘(みない まさひろ)
フリーライター、ランナーズパルス編集長。1966年愛知県西尾市生まれ。スポーツシューズブランドのプロダクト担当として10年勤務後、ライターに転身。「フイナム」「ランニングスタイル」「スポーツナビDo」「SHOES MASTER」「デジモノステーション」を始めとした雑誌やウェブ媒体においてスポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズに関する記事を中心に執筆している。主な著書に「スニーカースタイル」「NIKE AIR BOOK」などがある。「楽しく走る!」をモットーに、ほぼ毎日走るファンランナーで、ランニングギアマガジンとウェブサイトの「ランナーズパルス」の編集長も務める。ベストタイムはフルマラソンが3時間56分09秒、ハーフマラソンが1時間38分55秒。
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