プロが注目する、最強の大人アウターはなに？

高感度なセレクトスタイルで都市生活者を中心に支持を広げているエストネーション。中森博一さんは数あるメンズ商材のなかでもドレスアイテムを専門にバイイングを手掛ける同店のキーマンです。

かつてセールススタッフとして売り場を経験してきた中森さんは、顧客のニーズを的確に取り入れた買い付けこそ大事と語ります。そんな経験豊富なバイヤーが今季選んだ至極の一着は、シックなムートンブルゾン。

「ムートンのアウターは今季を代表するトレンドのひとつでもありますが、ムートンであれば何でもOKかというとそうではありません。特に弊社のお客様は“都会でも着こなせる”というポイントにフォーカスし選ぶ方が多数。ですので、ムートンの味わいを残しつつ、モダンでクールな雰囲気のレザーブルゾンを展開していきたいと考えました」

そこで白羽の矢を立てたブランドがイタリアのソレシティ。老舗の毛皮メーカーとして著名メゾンからも信頼の厚い名門です。特に中森さんはその老舗が打ち出すクラックレザーのムートン素材に目をつけました。

「表面に味わい深いひび割れを持つクラックレザーは、ムートンらしいタフな存在感を持ちつつ、素朴すぎないルックスであることがひとつの魅力。たとえばミリタリー的なB-3型に落とし込むことで、ワイルドかつ都会的な一着になると思いついたのです。ソレシティでは前期にベビーキャメル素材を使ったB-3型アウターを打ち出していましたが、そちらは少しキュートな印象。今シーズンに改めて展開するのであれば、男っぽくクオリティ感あるスペックが必要になると感じたのです」

クラックレザーのムートン自体は、世界的にも複数のレザーブランドが取り扱っているもの。しかしソレシティのムートンは、すべてにおいてパーフェクトなスペックだと中森さんは指摘します。

「現代的なファッション性はもちろん、弊社のお客様はクオリティを重視する方も多いのです。その点、ソレシティのレザーは原皮のクオリティ自体が高いので、クラック加工を加えても非常に滑らかで十分にタフ。そしてエレガントなタッチも備えているのです。都会においてラフに羽織っても十分に品格を放つポテンシャルこそ最大の魅力です」

そして細部にも細かい配慮を尽くすのが中森さん流。いわゆるミリタリー系のB-3デザインですが、随所にエストネーションらしい洒脱な味付けを加えています。

「パーツやディテールをおろそかにしてしまうと、レザーがいくら高級でも理想の完成度には至りません。優れたクラックレザーの素性に合わせてアクセサリーのように磨き抜かれたガンメタル調の精悍なジップを組み込みました。また、B-3型はショートタイプが定番ですが、この一着はわずかに長めの着丈。テーラード的な大人っぽいエレガンスが引き立つ絶好のバランスにまとめてあります」

ある種、普遍的なブルゾンデザインのムートンB-3。いろいろに着回せる一着ですが、中森さんはあえてワンマイル風に着こなすのが面白いと言います。

「一流メゾンからのオーダーも多数だというソレシティのクラックレザー。その素材を用い完成したB-3ブルゾンは、形こそワイルドですが、滲み出るエレガンスがひとつのポイントです。あえてデイリーなイージーパンツと合わせて、軽妙なメリハリ感を楽しんでいただきたいと思います」

いわゆるワンマイルスタイルと呼べる着こなしですが、チープなアイテムを合わせてしまっては、このブルゾンの良さが消えてしまうと中森さんは付け加えます。

「イージーパンツも繊細なハイゲージのニットウールパンツを選び、シューズもスニーカーではなく本格マウンテンブーツを合わせ、軽さの中に重厚感あるミックスでアクセントを添えると洒落た雰囲気になると思います。そして重要であるのが色使い。都会的なクールネスを持つブルゾンのテンションに合わせ、ブラックにて統一すると、より大人の渋味あるルックスに仕上がると思います」