その、第15回のお題は週末限定オープンのお鮨やさん。思えば、この連載を始めるとき下記の3つを条件にしていたのでした。
第一条:高くて美味いは当たり前。たまには贅沢できる適度な価格帯であるべし。
第二条:予約がとれない名店は高嶺の花。会員制や紹介制ではなく、実際に電話が通じるお店であるべし。
第三条:大通りの洒落たハコばかりではなく、路地裏のひっそりとした名店を探すべし。縄のれんや赤ちょうちんを嫌う女子はこちらから願い下げるべし。
のっけから謝っておきます。ごめんなさい。
今回ご紹介する「谷中 松寿司」は現在、夜は6月まで満席。こんなことでは第二条に抵触しかねないのですが、そこを押してご紹介したい魅力にあふれたお鮨やさんなのです。
なぜ「谷中 松寿司」が数か月先まで一杯か……と申しますと、実はこちら金・土・日曜しかオープンしていない、“週末限定”なお鮨やさんなのでありました。
週末限定オープンの「谷中 松寿司」
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聞けばこの野本やすゆきさんは、彼で3代目になるお鮨やさんの跡取り息子。初代である祖父は、戦前に千駄木駅前で鮨の屋台を出しており、戦後になって現在の谷中に店を開いた「谷中 松寿司」を継いだのは2代目となったお父さん。寺町である谷中で、近隣の人々やお墓参りに訪れる人などに愛されるお鮨やさんとして、家業を盛り立てていたのだそうです。
このころまだ若かった野本さん(今も若いけど)は「鮨屋なんて継ぎたくない」と思っており、「でも料理は好き」だったことから、料理研究家の道へ進んでいたのでした。そこへきてお父さんが60代の若さで急逝……急遽、鮨屋を継ぐことになった野本さんですが、順調に運んでいた料理研究家を辞めるわけにもいかず、月~木曜は料理研究家、金~日曜は鮨屋、という兼業ステイタスが誕生しました。
つまりパートタイム鮨屋でしょ? 味はどうなの?と懐疑的なそこのアナタ(かく言う私もそうでした)!
野本さんのお鮨はいたって正統派で、まっとう。席について刺身、焼き物、握り…と続いていく一連は銀座などの高級店となんら変わることなく、そのスムーズな流れに身を任せているだけで心地よく満腹・満足できるのでご安心を。ちなみに申し添えますと、あの日から4年……いまでは野本さん、すっかり鮨屋であることが大好きになったのだそうですよ。
あ、ひとつだけ彼の料理研究家らしい一面が見てとれるのは、このスペシャリテともいえるアジフライでしょうか。
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それゆえに気になるところでしょ? さて、お値段は‥‥‥
「夜6500円、昼4500円いただいています」(野本さん)
私はいままで数度訪れましたが、いずれもかなり飲んで、ときにお稲荷さんを持ち帰って、お会計は1万円と千円札が数枚(ひとり分です)……お料理の質とお酒の量を考えれば、いつも大変リーズナブルだと納得しています。
思い立ったときにふらりと行ける価格はうれしいのですが、うれしい人が多すぎてなかなか予約が取れないというジレンマ。この原稿を書くことでさらに自分の首を絞めているんでしょうか? これはもう食いしん坊ライターのカルマともいえるでしょう、嗚呼。
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◆ 谷中 松寿司
住所/東京都台東区谷中3-2-7
予約・問い合わせ/03-3821-5087
営業時間/12:00~14:30(L.O.14:00) 18:00~22:30(L.O.21:00)
定休/月~木曜
*東京メトロ「千駄木」駅より徒歩2分
*カード使用不可