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2022.02.19

女子ウケNo.1の手土産お菓子・ヨックモック「シガール」の超進化

女性誌編集部でお歳暮人気No.1といえば、そう、あの葉巻型のお菓子・ヨックモックの「シガール」! そんなハズさない手土産として覚えておきたい「シガール」が万人に愛される理由とは?

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文/圓岡志麻(フリーライター) 撮影/梅谷秀司

記事提供/東洋経済ONLINE
ヨックモックと言えば、葉巻型が特徴的な手土産菓子「シガール」で知られるスイーツメーカーだ。メリーチョコレートやモロゾフと並び、郷愁を感じさせるデパ地下の定番的存在である。

2021年12月にはコロナ禍の料理ブームを背景にレシピブックを出版。2015年に発刊したレシピブックの新装版として出版されたものだが、発売後すぐに重版が決定するなど、人気の高さを改めて感じさせている。

冬季限定の商品「ショコラ シガール」の売れ行きもよい。同社によると、当初3月まで販売予定ではあったものの、販売数が好調なため、早めに終了してしまう可能性も浮上しているそうだ。
▲ 設立当初からのロングセラー、シガールと冬季限定のショコラ シガール。

「これ以上バターを入れるとお菓子にならない」

そんなヨックモックの変わらぬ人気の理由はどこにあるのだろうか。

ヨックモックは1969年に設立。高度成長期におけるデパートの手土産需要に着目した創業者の藤縄則一氏が、「これ以上バターを入れるとお菓子にならない」というぎりぎりの量までバターを加え、バターのコクと風味を最大限に生かしたお菓子「シガール」を開発したのが、同社の歴史の始まりだ。これまでに食べたことのない風味、食感のクッキーとして予想以上の売れ行きを見せ、1号店の出店後、1年間で17店舗まで展開を広げたという。

バターをたくさん使うと生地が壊れやすくなるため、バターたっぷりのクッキーの量産や量販は難しい。そうした菓子業界への常識に挑戦し、薄く焼いたクッキーをくるりと巻いた独特の形状とした。これが、50年以上のロングセラーを生む発想の転換だった。

材料を配合量順に並べると、バター、卵、小麦粉の順になるというほど、バターたっぷりの生地はなめらかで香り豊か。そして確かに壊れやすいものの、口の中でほどけていくようなその食感がかえって楽しい。子どもの頃、薄い生地を壊れないようにはがしながら、大事に食べた思い出を持つ人も多いのではないだろうか。

こうしたシガールの魅力を味わうには、最初はなんといってもプレーンタイプに軍配が上がる。しかし、実は季節を表現する期間限定商品も生まれている。
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▲ 青山本店の売店コーナーに並ぶ、ショコラ シガール。
冬の限定商品が2004年に発売された、バレンタインデー用途としても人気の高い「ショコラ シガール」だ。シガールをチョコレートでコーティングしたもので、クッキー、チョコレートの組み合わせの妙が味わえる。ミルクとセミスイートの2種類が販売されているが、前者は生地のバター風味とチョコレートのミルキー感の相性がよい。また後者は甘味と苦みのバランスがよく、濃厚なカカオの風味も楽しめる。

冒頭にも説明したとおり、2022年はとくに売れ行きが好調。同社広報部によると、理由の一つとして、よりチョコレートらしさを表現したパッケージにリニューアルしたことが関係しているのでは、とのことだ。

また、春〜初夏限定の味わいとして2017年から毎年販売されているのが「シガール オゥ マッチャ」。シンプルかつ子どもから大人まで食べやすい味わいに仕上がっており、新発売時には店舗前に行列ができるほどの好評を博したという。

それにしても、こうした期間限定品は飲食を扱う企業では外せない戦略となっている今、期間限定の味が非常に希少であるのは珍しい。シガールというお菓子や同社の人となりを表す特徴と言えるのではないだろうか。

同社によると、商品についてのこだわりは「お菓子は人間の生活に欠くことのできないものである」という創業者の思いを今に伝えながら、真心を込めた菓子づくりを行っていることだそうだ。また、原材料に関しては「特別より格別」をポリシーとしている。上質な原材料ではあるが、個性が際立つというよりは、ひとつのお菓子としてまとまったときにおいしくなるような素材を選んでいるのだという。

例えばシガールに関しては、グラニュー糖ではなくあえてどの家庭にもある上白糖を用いていることが挙げられる。さらに、口当たりを左右する小麦粉については、薄力粉の中でも純度の高い特等粉を選んでいるそうだ。親しみやすいコクのある甘味、独特の軽い口溶けはこうした材料の組み合わせから生まれているのだ。

こうした商品づくりへのこだわりは老若男女に親しまれる味わいとなり、国内だけでなく世界へとファンを広げるように。現在は国内で約160店舗のほか、アメリカ、アジアなどに約60店を展開している。
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ランチは順番待ちができるほどの繁盛ぶり

▲ 青山のブランド店が並ぶ界隈にひときわ瀟洒に佇むヨックモック青山本店及び喫茶室ブルー・ブリック・ラウンジ。季節のスイーツのほかランチが人気で、順番待ちの列ができるほどだ。またコロナ前にはインバウンドも多く、シガールがヒットした中東から訪れた民族衣装姿の男性客もときどき見られたという。
なお、青山にある直営店と喫茶室「ブルー・ブリック・ラウンジ」は、すでに1978年、本社社屋とともにオープンしている。藤縄氏の「直営店でできたてのお菓子とまごころのこもったサービスを提供したい」という強い思いからだそうだ。

定番の「ブリュレ風パンケーキ」のほか、ケーキ、季節のスイーツ、食事などが楽しめる。デパートで買うお菓子のイメージが定着しているため、カフェについては知らない人も多いかもしれない。しかしランチは順番待ちができるほどの繁盛ぶりなのだそう。今は近隣住民が中心だが、コロナ前は観光客やインバウンドも多かったという。
▲ 一番人気のスイーツ「ブリュレ風パンケーキ」(1320円)。表面をキャラメリゼしたカリカリ食感がほかではなかなか見られない特徴だ。シガールなどと同様、身近な素材を組み合わせながら万人に愛されるホッとする味わいに仕上げている。
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観光客のほか、近隣住民にも利用される理由の一つとして、コストパフォーマンスの良さが挙げられる。表参道のブランド店が並ぶ街中にある店舗として、ランチは1600円程度(アルコールをセットで頼みたい場合は+220円)、コースランチは3000円程度からと、比較的良心的な価格だ。

さらにアルコール制限や時間制限などを課されることも多いコロナ禍では、ランチにぜいたくをしたいという需要が高まっている。また外食の機会が希少であるため、店選びに失敗したくない、という心理も働く。コロナで同店の利用が高まっているのも頷ける。

なお、同店ではコースとアフタヌーンティーを利用する場合のみ予約を受け付けている。また店内は中庭の景色を望みながらゆったりと過ごせる雰囲気のため、時間をかけてランチを楽しみたいというニーズにはまりそうだ。
▲ シックな雰囲気の店内。ヨックモックのシンボルツリー「ハナミズキ」が植えられた中庭を望みながら、心落ち着く時間を過ごせる。なお、注文した客につきシガール1本をサービスしているそうだ。
このようにロングセラーのシガールという強みをもつ一方で、カフェ事業も展開している同社。そしてOEM事業にも参入するなど多方面に事業を広げている。

ヨックモックというブランドの存在は、目に見えている以上に日常生活の中に浸透しているのかもしれない。

コロナ前の5年間は増収増益基調にあり、数年前、アラブ首長国連邦でシガールが大ヒットした(契約満了のため現在は販売休止)ことがきっかけで、メディアでも話題を集めた。

コロナの影響により2020年は減収したが、2000年から開始したオンライン販売も好調で、2021年以降は回復傾向にあるという。やはり人流の制限に比例して、対面の贈り物需要はマイナス影響を受けているものの、帰省控えも後押しし、インターネット販売での贈答品の発送が増えているのだそうだ。

また景気が落ち込む中、消費者の心理としてはネームバリューが高いブランドのほうを選ぶ傾向がある。手土産としての知名度も、業績回復を助けたのではないだろうか。
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課題は「新規客層」の開拓

一方で現在の大きな課題となっているのが、新規客層の開拓だそうだ。「ヨックモックは販売以来お客様の口コミによって現在まで事業を広げてきたため、自らの情報発信を積極的に行ってこなかった経緯があります。しかし今後はメディアやSNSなども活用しながら、若年層との接点を増やす機会を積極的に設けていきたいと考えております」(広報担当)

SNSやアプリ、ワークショップ開催などを通じた情報発信や顧客との接点づくりに力を入れているそうだ。

また商品についても、ちょっとした贈り物に適する少量の詰め合わせや、よりカジュアルに楽しめるシリーズの企画を増やしている。2020年に発売した「ロイヤルブルー」(秋冬限定)は少量サイズの詰め合わせをポップなデザインのパッケージで包んだシリーズだ。さらに生活スタイルが変化する中「より身近にヨックモックを感じていただきたい」と、2021年12月に「MY YOKUMOKU」を店舗限定で発売。定番クッキーが1種類入った紙箱の食べきりサイズで、各345円と気軽に購入できる価格だ。コロナによる自家需要の高まりもあり、「自分用のご褒美」として買い求める客が多いという。

喫茶室「ブルー・ブリック・ラウンジ」でも、ヨックモックを代表するようなアイコンメニューの開発に取り組んでいるところだそうだ。

設立当初、当時の常識をくつがえす商品「シガール」を世に送り出したヨックモック。その挑戦の精神が商品づくりに受け継がれてきた。しかし一方で、誰もが安心するような、親しみやすい味をつくり続けてきた社風のゆえか、社としての姿勢には慎重さも垣間見える。そうした商品づくりを守りながら、新たな風を取り入れていくことが、同社の次なる挑戦になるのだろう。
当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です
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