2019.04.19
一目置かれる「ワイン会の掟」、お教えします。
5,000本以上のコレクションを持つ日本随一のワインコレクターで、多いときは月に3桁の金額をワインに費やす超愛好家だからこそわかる、真にスマートで男女問わずモテるワイン道ってどんなもの? ちょっとイタいワインおたくや面倒くさい半可通など、周囲の反面教師からも学ぶ、ワインのたしなみ方入門です。
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文/吉川慎二 イラスト/Isaku Goto, オキモトシュウ(吉川慎二氏)
桜の季節も終わり本格的な夏に向かって行く、これからは冷えたシャンパーニュがますます美味しくなりますね。さて、今回のモテるワインピープルを目指す“ワイピ”講座は「ワイン会の掟」です。
ワインスクールのクラス会としても頻繁に行われるこの「ワイン会」。初参加するあなた、これからお教えする掟をマスターせずに臨むのは、ピタゴラスの定理を知らずに難関中学入試に挑むようなもの。気をつけて下さいね。
ワイン会の掟 ~ その1準備編
この場合、ワインの種類をバランスよく分散させるべく、幹事がワインのタイプが偏らないよう調整します。ワインスクールのクラス会の場合には、クラスリーダー的な役割(級長と呼ばれることも多い)がこれを行い、泡(シャンパーニュに代表されるスパークリングワイン)・白ワイン・赤ワインなどタイプ別のエントリーを受付けます。もちろんロゼワイン、甘口ワインもあり、さらには、オレンジワイン、アンバーワインもありますが、これらは評価が分かれやすいので初級ワイピは避けたほうが無難です。
エントリーも後半になると特定のワインタイプがいわゆる「満席」状態になります。「今回は既に赤ワインは十分な本数がエントリーされているので泡か白にしてください」といった感じですね。なので、特に持参したい意中のワインがある場合には早めのエントリーをオススメします。
何と言っても気になるのは持参ワインの内容です。「小売価格で5,000円以上のワイン」とか「シャンパーニュ主要品種(ピノ・ノワール、ムニエ、シャルドネ)に限る」など、ガイドラインが設けられている場合もあります。これを満たすのはもちろんですが、大切なのはバランスとストーリーです。
参加メンバー全体の中での自分の置かれたポジションをよく考えてワインを選定してください。例えば、参加メンバーがリッチなオジサマや、羽振りの良いマダムが中心で、自分は若造だなと感じるのであれば、値段的にも無理をした感を感じさせない「可愛げのあるワイン」。その逆で、自分が会のリーダー的立ち位置であれば、奮発してみんなを喜ばせるようなグレードの高いワインといった感じです。
詳細は次回の考察に譲りますが、肝要なのは空気を読むこと。忖度が大事なのは政治の世界だけではありません。無理して奮発した結果、大御所の得意ワインとかぶったりするのは、会社の宴会で新入社員が知らずに部長の十八番を歌ってしまうようなもので、場が凍りついてしまいます。
事前のリサーチを怠りなく情報収集し、奮発するTPOを間違えないよう気をつけて、大人のワイピを目指しましょう。
泡を持っていく場合、会場についてすぐの乾杯用となる可能性が高いこともお忘れなく。十分に冷やして持参するか、事前にお店に送る・届けるなどしてすぐ飲めるように準備してもらっておいてください。乾杯用の泡がなかなか出てこないのは居酒屋で生ビールとおしぼりがすぐに出てこないのと同じくらい致命的です。古酒(ヴィンテージの比較的古いワイン)を持っていく場合も同様です。特に古い赤ワインは動かすと澱が舞ってしまい、もとに戻るまでに最低でも2、3日はかかります。
それでは、持っていくワインは一体どうやって選べばよいのでしょうか?
次回、「ワイン会の掟~その2ワイン選定編」をお楽しみに。
連載Vol.01 「ワインスクールは受験や就活と同じく真剣に選ぶべし」
連載Vol.02 「モテるのは片手にワイングラス8脚をモテる男」
● 吉川慎二 / Shinji Yoshikawa
1962年三重県生まれ。
東京大学法学部卒業後、三井住友銀行、メリルリンチ自己勘定投資部門のアジア太平洋地域統括本部長を経て、現在は投資家・経営コンサルタント。
2007年、日本ソムリエ協会のワインエキスパート資格を取得。12年にシニアワインエキスパートへ昇格し、同年に開催された第5回全日本ワインエキスパートコンクールで優勝。14年にはエキスパート資格者で初の日本ソムリエ協会理事に就任、2018年まで2期4年務めた。漫画「神の雫」に登場する吉岡慎一郎のモデルともいわれ、プロフィールイラストは「神の雫」作画のオキモトシュウ氏によるもの。