その第18回のお題は「クラフトジン」。数年前からバーやカクテル業界でのビッグトレンドとなっているクラフトジンですが、ウイスキーと同様、国産はとくに品薄で人気が高く、なかには手に入りにくいアイテムもあります。国産クラフトジンのすばらしさはどこにあるのか? 知りたい(飲みたい)! そこで今回は日本のクラフトジンを学びに(飲みに?)行ってまいりました、一路、京都へ!
なぜ、京都か? それは日本初のジン専門蒸溜所「京都蒸溜所」がそこにあるから。2016年8月に操業を開始した比較的新しい蒸溜所でありながら、日本、それも京都産の素材にこだわり、伏見の水を使用したスーパープレミアムなクラフトジン「季の美 京都ドライジン」は国内外から注目を集め、いまや日本を代表するクラフトジンになりました。
実はクラフトジンには味や製法に関する具体的な定義は設けられておらず、ゆえに作り手の自由度が高いのが、このクラフトジンの面白いところでもあるのです。では「季の美」はどんな味わいなのか? まずは京都でいま話題のバーへ行ってまいりました。
[レモスカトゥールバー](京都・河原町)
「『季の美』はまさに唯一無二であり、高いオリジナリティを感じさせるジンです。日本の高い美意識と和のテイストを感じさせる『季の美』でなければ、この『Kyoto Gardens』は作れません」と語るクリストフさん。
たしかに『季の美』をストレートで嗅ぎ、口に含んでみると、ふくよかな香りの奥に山椒やお茶のフレーバーを感じる……ような…。果たして本当に山椒やお茶を使っているのか? これは、実際に造っている現場を見に行かないと!(この項続く)
◆ レモスカトゥールバー
住所/京都府下京区西石垣通四条下ル斎藤町138-9 2階
予約・お問合せ/075-708-8511
営業時間/20:00~26:00
定休/月曜日
※ 週末は混雑するので予約をおすすめ。
※ 四条河原町駅から徒歩5分程度
京都蒸溜所で学ぶ「季の美」
この日はラッキーなことにオーナーのデービッド・クロール氏にお話を聞くことができました。
クロール氏(以下C氏):京都は1000年以上の歴史を持つ、美しい文化の中心地であることはもちろんなのですが、実はジンに必要な素材を調達する上でも大変恵まれた土地だったのです。ご存知のようにジンにはボタニカルが大変重要な役割を果たしますが、「季の美」に使用しているボタニカルの多くが京都とその周辺で栽培されているんですよ。
── 「季の美」に使用されているボタニカルは、ジュニパー、オリス、檜、柚子、レモン、玉露、生姜、赤紫蘇、笹、山椒、木の芽と11種ですね。
C氏:最初は60種くらい候補があったかな。約1年間、試作しながらチームで議論を重ねました。ボタニカルはそれぞれ個性豊かなので、その素材の特性に応じて抽出の仕方や蒸溜の温度が異なり、丁寧に造っていく必要があります。サヴィル・ロウ(ロンドン)でのビスポークと、大量生産される既製服の造りの違い、といえばわかりやすいでしょうか(笑)。
C氏:ボタニカルだけではなく、ベースには米のスピリッツを使用しているし、蒸溜している水は名水の里として知られる伏見の酒蔵からわけてもらっている仕込み水を使用しています。もうこれ以上こだわれない、というくらいこだわっていますよ(笑)。
C氏:(明らかに動揺して)え、あれ見ちゃったの? 困ったな。あれはまだ発売していないんですが、あれはハスカップの果汁を使用した新製品です。夏に向けて、クラッシュアイスでカクテルにしてもよいでしょうね。
C氏:カクテルはシェーカーなど特別な器具がなくても楽しめるんですよ。ほら、この本にたくさんレシピが載っているから参考にしてください。