同じことがお鮨にも言えるでしょう。つまり「町ずし」。昔は家々におなじみのお寿司屋さんがあって、来客やお祝い事には電話でお寿司の出前を頼んだものでした。私は、ちょっと頭を傾けて、少し気取った声で出前を頼んでいた祖母の姿をいまも鮮明に憶えています。
この「町ずし」は入ると近所のおじさんがテレビで野球をみながらビールを飲んでいたりして、「今夜はパパがいないから特別ね」なんて母が中トロを奮発してくれるような。そんな和やかな場所でした。
で、ようやく第25回のお題は、江戸川区の町ずし「鮨 かの」です。
進化系町ずし「鮨かの」
1.技術と素材は一流(たとえるなら銀座並み)。
2.でも代金は銀座×0.7の、明朗かつ財布にやさしいお会計。
3.それぞれの町に散在しているためアクセスはよいとは限らない。
よく高級な鮨を食べることを称して「ザギンでシース―」などと言いますが、このバブリーな言い回しからわかるように、銀座の鮨はもちろん高価です。対して、進化系町ずしは、同じ満足度を味わえながらも、お会計は銀座の7掛け。つまり5万円クラスの店なら3万5000円、3万なら2万円となり、2万なら1万5000円くらい? いずれにせよ、ちょいちょいは無理にしても、ふと思い立ったときに行ける気軽さがあるお店です。
1.大将の鹿野さんが毎日豊洲の市場まで足を運び、厳しい目で選り抜いた魚を仕入れ、おまかせコースのみを供する。
2.計20品ほどのおまかせコースで1万3500円。
3.江戸川区で最寄駅からゆっくり歩いて15分。
さらにこの「鮨 かの」には「握りオンリー30貫」というコースもあるんだとか! 通常はカウンター(7~8席)を貸し切ったときにしか供していないというこのスペシャルなメニューを、今回特別にご紹介いたしましょう。
「30貫といっても1貫ずつのシャリは少量にしているので、トータルでおひとり1合ほど召し上がっていただく感じです。さらに酢飯には砂糖を入れていないので、軽くて、食べ疲れしないとみなさんおっしゃいますね。このコースを始めて1年ほど経ちますが、まだ途中でギブアップした方はいらっしゃいません(笑)」
あ、最後に言い忘れたこと。「鮨 かの」は女将さんセレクトによる日本酒ペアリングもすばらしいです。で、そのチェイサーか、ビール代わりの1杯におすすめしたいのが、こちらの「小松菜サワー」。地元の名産小松菜を1杷丸々使って、レモンをたっぷり絞った1杯は、見た目以上にさわやかで美味! なにより「お鮨30貫も食べちゃった!」という罪悪感を少しだけマイナスしてくれるはずです。ま、少しですけれどね(笑)。
◆ 鮨 かの
住所/東京都江戸川区江戸川4-25-7
予約・問い合わせ/☎03-3652-2704
営業時間/18:00~、金・土・日のみランチ営業(11:30~)あり
定休/水曜
*昼・夜予約制
*都営新宿線「一之江」駅から徒歩15分(隣駅「船堀」からタクシーがおすすめ)
*〝握りオンリー30貫〟は1万8500円。7~8名でのカウンター貸し切りのみ。平日夜か日曜・祝日の11:30スタートのみで、1週間前までの要予約。所要時間3~4時間。
*19年12月に価格改定予定。