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それは、ペルー料理!
「あ! 知ってる、名物料理は魚のセビーチェと、ネズミの炭焼きでしょ?」
当たり!(でも厳密に言うとペルーで食べられているネズミ「クイ」は、モルモットの仲間です)。
なにはともあれ、そんな昔から食べられてきた伝統料理だけでなく、今、ペルーでは、独自の食材を使った洗練された高級料理が生まれ、注目を集めているのです。
その火付け役は、世界の美味を求めて旅するフーディーたち。彼らの食に対する探究心は飽くことを知らず、何カ月も前から行きたいレストランをリストアップして予約、時には数週間に及ぶ「フードツアー」のランチとディナーにはぎっしりと有名店が並びます。まさに美食のマラソンを駆け抜ける、胃袋のアスリートと言うべき彼らが、美食の街、パリやコペンハーゲン、東京に行くような感覚で訪れている場所。それが、ペルーの首都、リマなのです!
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アンデスからアマゾンまで、大人の冒険心をくすぐる未知の味
彼は月に一回、ペルー各地に飛び、地元の人の間で細々と育てられてきた希少な品種の作物や、今は失われてしまった伝統的な食材を採集するだけでなく、現地の人々と話し、口伝えで残っているだけのペルーの食文化を未来に残していくことに力を注いでいます。
世界の美食を知り尽くしたフーディーたちを魅了する要素の一つは、冒険心をくすぐられる、歴史と伝統に裏付けられた、未知の食材たちとその背景にある物語だったのです。
洗練されたプレゼンテーションでペルーの情景までも再現
母がアーティストだったというヴィルヒリオシェフの美的感覚が生きた繊細なプレゼンテーションは、まさにファインダイニングと呼ぶのにふさわしいもの。
とはいえ、日本からペルーは直行便もなく、アメリカなどを経由した乗り継ぎを含めると飛行機で最短20時間余り。おいそれと気軽に行ける距離ではありません。
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日本の食材を使いながらも、一皿に必ず、自分たちのアイデンティティでもあるペルーの食材を使うようにしたというヴィルヒリオシェフ。広いリサーチと深い思考から生み出された一皿一皿は、「肉!焼いた!皿に乗せた!」という料理(それはそれでおいしいのですが)とはかけ離れたものでした。
「見て、触れて、味わって」ペルーの豊かな食材と多様性
「例えば、アンデス地方はジャガイモの原産地。今知られているだけでも4000種類ものジャガイモがあります。それだけでなく、根菜と言えば、ユカ、オカ、オユコ、マカ……そうそう、雑穀のキヌアも忘れてはいけないですね。キヌアにも色々な種類があって……」
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さあ、それではいただきましょう!
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隣にはマカのエスプーマが。エスプーマを入れる器は本物のマカをくりぬいたもの。実際の食材をより知ってほしいという、ヴィルヒリオシェフの思いの現れです。
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添えられたイラストは、カニのゼリーに濃度をつけるために使った植物、「ユヨ」。「料理に使ったけれど、見えないから、少しでも知ってもらいたくて」とヴィルヒリオシェフ。
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日本とペルー、意外な共通項も!
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「日本には懐石料理の文化があります。そこで育った日本の人々は、フォワグラやキャビアといった高価な食材だけでなく、一見質素に見える野菜に、それと同じ質の高い美味が存在すると知っています。そんな日本の人たちは、根菜や雑穀といった、ペルーの食材の本当の質を感じてもらえると思っています」
特に、最近はレシピを作らず、食材によりフォーカスした料理を作っているというシェフ。去年12月に出版したばかりの本「マテル」も、レシピではなく、ペルーの食材を、自然の中での美しい写真と共に紹介した「食材図鑑」のような趣の本です。
ひとつの食材に深く入り込み、理解しようとする考えは、日本の懐石料理にもつながるもの。また、聖なる大地という考え方は、日本の八百万の神という考え方とも重なります。話せば話すほど、日本とペルーの色々な共通項が見えてくる対話の時間でした。
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● 仲山今日子(なかやま・きょうこ)
テレビ山梨・テレビ神奈川アナウンサーなどを経て、World Restaurant Awards審査員。現在、食と旅をテーマに日本とシンガポールの雑誌に日本語・英語で執筆中。趣味は秘境旅行、キリマンジャロ登頂など、訪れた国は50カ国以上。ワインエキスパート、日本酒唎酒師の資格取得。IG:kyokonakayamatv