2023.02.12
【第25回】旅ゆけば、島田のラーメン
静岡県島田市に評判のラーメンがあると聞いて行ってみた
日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。
- CREDIT :
文・写真/山本益博 編集/森本 泉(LEON.JP)
「めん奏心」は朝9時からの営業で、10時ころに到着すると、店の前の広い駐車場にはすでにクルマが何台も駐車していた。だが、店の外には人が並んでおらず、店内コの字型の客席は満席だったが、席にすぐに座れそうだった。
「煮干そば」に惹かれながら、私は迷いながらも「丸鶏中華そば」に決め、仲間は「鶏そばClassic」を選んだ。
目の前に差し出された「丸鶏中華そば」の容姿の美しいこと! しばし見惚れてから、一匙スープをいただいた。丸鶏ならでは、醤油味をスープが「まあるく」包んでいる。自家製の細麺がまた柔らかな味わい。メンマもチャーシューもすべて同じラインに並んでいる。強烈なインパクトも、また、どこにも引っかかる味がなく、香りといい、味わいといい、後味まで、どこまでも柔らかい印象のラーメン。
それまで、目分量、匙加減で調理していたのだが、パティシエが料理に進出し、「計量化」が、美味しい料理を生みだし、いつもだれでも誤差のない料理が作り出せるようになった。菓子職人は何十年仕事していても、作り慣れた菓子の場合でも、毎度レシピを見ながら粉からすべて計量する。
店から出ての帰り道、50年前にフランスで起こった「料理革命」を思いださせてくれた「めん奏心」のラーメン作りに、改めて感動したのだった。次はいつ出かけようかな。
めん奏心
住所/静岡県島田市金谷栄町3538
営業時間/9:00-14:00
定休日/火曜、水曜
TEL/0547-46-0160
Twitter/めん奏心
● 山本益博(やまもと・ますひろ)
1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique
山本益博さんがYouTubeを始めました!
日本初の料理評論家、山本益博さんが、美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい! をテーマに、「食べる名人」を目指します。どうぞご覧ください!
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