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2023.02.12

【第25回】旅ゆけば、島田のラーメン

静岡県島田市に評判のラーメンがあると聞いて行ってみた

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博 編集/森本 泉(LEON.JP)

静岡ラーメン 山本益博 LEON.JP めん奏心
▲ 「めん奏心」の「鶏そばClassic」。
「旅ゆけば~、駿河の国に~、茶の香り」と言えば、広沢虎造の浪曲「清水次郎長伝」の有名な一節だが、静岡県島田市に評判高いラーメン専門店があると聞いて出かけて行った。「旅ゆけば~、駿河の国に~、ラーメンの香り」である。ただし、ラーメン一杯食べるだけで東京から新幹線で往復するわけにもいかず、京都への出張で、途中下車の旅である。
まず、朝8時に東京から新幹線「ひかり」に乗り、静岡で下車、東海道本線に乗り換え金谷駅まで行く。一つ手前の島田からより金谷からのほうが近いとの富士市在住の今回の旅の仲間の助言で、金谷駅からタクシーに乗った。目的の「めん奏心」まで時間にして約5分、タクシー代は1000円かからなかった。

「めん奏心」は朝9時からの営業で、10時ころに到着すると、店の前の広い駐車場にはすでにクルマが何台も駐車していた。だが、店の外には人が並んでおらず、店内コの字型の客席は満席だったが、席にすぐに座れそうだった。
静岡ラーメン 山本益博 LEON.JP めん奏心
▲ 「めん奏心」店前駐車場。
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食券を買おうと券売機の前に進み出て、迷うことになった。券売機最上段には、左から「煮干そば1100円」「鶏そば Classic1100円」「追鰹そば1100円」が並んでいる。つまり、これが店の「売り」のメニューというわけだ。下の段を見てゆくと「丸鶏中華そば1050円」があった。その並びには「味噌らぁめん1050円」「紅の辛そば1100円」「カリーそば1100円」「鰹そば1050円」があり、どれも魅力的に映ってしまう。

「煮干そば」に惹かれながら、私は迷いながらも「丸鶏中華そば」に決め、仲間は「鶏そばClassic」を選んだ。
客席のどこの席からもオープンキッチンの全容が見える。注文票からご主人らしき一人が丼にタレを入れ、おかみさんらしきもう一人がその丼に熱したスープを流しいれ、麺係は計り終えた麺を丼の進み具合を見ながら、ひとつずつ茹で上げてゆく。
静岡ラーメン 山本益博 LEON.JP めん奏心
▲ 「めん奏心」のオープンキッチン。
驚いたのは、タレを丼に入れる際、その丼を秤にのせて、ほんのわずかの誤差も出ないように慎重に丁寧に計量していることだった。さらに、丼に具をトッピングする際、チャーシューは箸でふたつにたたみ、そこへごく細く刻んだ九条ネギを盛りつけるのだが、盛り付けた山から一つネギが零れ落ちると、それを箸で拾い上げ、盛り付け直す。なんと繊細な仕事ぶりだろう!

目の前に差し出された「丸鶏中華そば」の容姿の美しいこと! しばし見惚れてから、一匙スープをいただいた。丸鶏ならでは、醤油味をスープが「まあるく」包んでいる。自家製の細麺がまた柔らかな味わい。メンマもチャーシューもすべて同じラインに並んでいる。強烈なインパクトも、また、どこにも引っかかる味がなく、香りといい、味わいといい、後味まで、どこまでも柔らかい印象のラーメン。
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静岡ラーメン 山本益博 LEON.JP めん奏心
▲ 「めん奏心」の「丸鶏中華そば」。
食べ終えて、思い起こしたのが、フランスで1970年代に起こった「ヌーベル・キュイジーヌ・フランセーズ」、「新しいフランス料理」である。「野菜などの火入れを軽くする」「素材の新しい組み合わせを考える」など厨房に革命を起こす料理界の変容の波だったが、最も刺激的だったのが、食材の「計量化」だった。

それまで、目分量、匙加減で調理していたのだが、パティシエが料理に進出し、「計量化」が、美味しい料理を生みだし、いつもだれでも誤差のない料理が作り出せるようになった。菓子職人は何十年仕事していても、作り慣れた菓子の場合でも、毎度レシピを見ながら粉からすべて計量する。

店から出ての帰り道、50年前にフランスで起こった「料理革命」を思いださせてくれた「めん奏心」のラーメン作りに、改めて感動したのだった。次はいつ出かけようかな。
静岡ラーメン 山本益博 LEON.JP めん奏心

めん奏心

住所/静岡県島田市金谷栄町3538
営業時間/9:00-14:00 
定休日/火曜、水曜 
TEL/0547-46-0160
Twitter/めん奏心 

山本益博 LEON.JP  ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

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