2023.03.26
【第28回】ラーメンの鬼 佐野実の魂
ラーメンの鬼 佐野実の魂を継ぐ店たち
日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。
- CREDIT :
文・写真/山本益博 編集/森本 泉(LEON.JP)
「店を離れても、お酒を飲んでいても、いつも頭の中はラーメンのことばかり。眠っていても『おい、加水どんだけだぁ?』なんて、寝言までラーメンですから。売り上げについて佐野が気にしたことは一度もありません。とにかくいいものを作りたい。業界を底上げしたい。そのために食材を掘り下げ、麺づくりに打ち込み、そうして『たかがラーメン』を『されどラーメン』に変えようとしていたんだと思います。」
(佐野しおり「あの鬼(ひと)の素顔」)長谷川圭介「ラーメンをつくる人」より
「まじめ過ぎると言えば、『ガチンコ』に出ていた頃、睨んでばかりで眼の毛細血管が切れたことも。テレビでの『鬼』のイメージが崩れないよう、外で歯を見せちゃいけないという契約を結んでいたそうです。意味のあると思った役に徹したんですね」(同上)
店名「支那そばや」から察するに、「醤油ラーメン」を本流と考え、それを改良し、極め、誰からも「品格のある一品料理」として認められるよう精進を重ねた真っ当な料理人だったのだろう。「厳格、潔癖、完璧」な仕事を目指した職人だったともいえようか。
1951年4月4日生まれ、ながらく糖尿病を患い2014年4月11日に亡くなった。
● 山本益博(やまもと・ますひろ)
1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique
山本益博さんがYouTubeを始めました!
日本初の料理評論家、山本益博さんが、美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい! をテーマに、「食べる名人」を目指します。どうぞご覧ください!
YouTube/MASUHIROのうまいのなんの!