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2023.04.23

【第30回】推しの「つけ麺」すごろく

東京・埼玉、「つけ麺」の美味い店はどこだ?

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博 編集/森本 泉(LEON.JP)

つけ麺 山本益博 LEON.JP
私の友人IKKOさんが、YouTubeで虎ノ門「ロビンソン」を訪ねていた。紹介していたのはラーメンだった。店は、昼は「ロビンソン」でラーメン、夜は「小三治」で和食+イタリアンという不思議な組み合わせ。店名の由来はプロレス好きのイタリア料理シェフと落語好きの日本料理の料理人がコラボした店とのことだった。
そこで、思い出したのは、7、8年前のニューヨークでの出来事。滞在中、深夜の12時からラーメン屋を開く店があるとのことで出かけて行った。店の名前は「弁慶」。ところが、住所を頼りに12時前にその場所を見つけると、店の前の赤ちょうちんには「牛若丸」と書かれてあった。一瞬間違えたかなと思ったが、店の明かりが点いていたので扉を開けると、店内はすし屋の風情で、聞けば夜は11時半までがすし屋「牛若丸」で、12時からラーメン屋「弁慶」に代わるとのこと。
つけ麺 山本益博 LEON.JP
▲ 虎ノ門「ロビンソン」に掲げられた額。プロレスラーのビル・ロビンソンと落語家の柳家小三治の名が。
改めて店の外で待とうとすると、応対してくださった方が「山本さんですよね。良かったら、すしを食べて行ってください」とおっしゃる。なんと、にぎりを5貫ほどいただき、それが前菜となって、主菜にラーメンを食べることになったのだった。それにしても、ニューヨークは不思議な街だなと思ったものだが、それが東京でも起こっていたわけである。
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つけ麺 山本益博 LEON.JP 虎ノ門「ロビンソン」の「つけ麺」
▲ 虎ノ門「ロビンソン」の「つけ麺」。
自家製麺「ロビンソン」でいただいたのは鰹昆布出汁「つけ麺」で、イタリアンシェフの手になる自家製麺、日本料理の料理人の手になる出汁のうまさを堪能した。桜の季節を迎えて、「つけ麺」がいよいよ美味しく感じられるようになってきたところで、「つけ麺」の行くべき店が次々に現れてきた。

つけ麺すごろくの始まり。まずは南蒲田「メイドインヘブン」

まずは、南蒲田「メイドインヘブン」。京浜蒲田駅前には「とんかつ大希」があり、行き慣れた場所だが、「メイドインヘブン」は反対方向にあった。手もみの麺と相性の良い醤油味のスープを美味しくいただいた。
つけ麺 山本益博 LEON.JP 南蒲田「メイドインヘブン」の「艶つけ麺」
▲ 南蒲田「メイドインヘブン」の「艶つけ麺」。
続いては、池尻大橋「千乃鶏」。池尻大橋と言えば、最近「とんかつ冨士㐂」へ出かけたばかりだったが、「千乃鶏」は「冨士㐂」と違い、国道246号線をそのまま三軒茶屋方面へしばらく歩いたところにあった。こちらは、鰹昆布水「つけ麺」。行列覚悟で出かけたが、夕刻だったため、珍しくすぐに席に着け、鰹節が鼻をくすぐるインパクトのある「つけ麺」をいただいた。
つけ麺 山本益博 LEON.JP
▲ 池尻大橋「千乃鶏」の「鰹昆布水つけ麺」。
そう言えば荻窪の「とんかつたつみ亭」へ出かける時、必ず前を通る「麵屋正路」のメニューに、最近「鯛煮干しつけ麺」が加わったことを思い出し、開店早々の時間を狙って出かけ、レンコ鯛の煮干しの豊かな「つけ麺」を味わった。麺が「開化亭」の香りのよい麺に代わって、一層美味しくなった。
つけ麺 山本益博 LEON.JP 荻窪「麵屋正路」の「鯛煮干しつけ麵」
▲ 荻窪「麵屋正路」の「鯛煮干しつけ麵」。
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埼玉の気になる2軒を訪ねて狭山ヶ丘と北浦和へ

こうして、子供のころに遊んだ「すごろく」のように駒を進めていくと、ラーメン本で常連の店が2軒気になった。一軒は狭山ヶ丘「鈴ノ木」もう一軒は北浦和「かねかつ」、どちらも埼玉県のラーメン専門店。
まずは、家から1時間半ほどかけて狭山ヶ丘へ。店は狭山ヶ丘駅からすぐにあったが、午後遅めにもかかわらず人が並んでいる。カウンターとテーブル席がひとつ用意されていて、店主がラーメンを手際よく作る目の前の席に案内された。すると、すぐに若い店主から挨拶された。なんと、わたしのYouTube「MASUHIROのうまいのなんの!」を見てくださっているとのことだった。
つけ麺 山本益博 LEON.JP 狭山ヶ丘「鈴ノ木」の「淡麗つけ麺」
▲ 狭山ヶ丘「鈴ノ木」の「淡麗つけ麺」。
若者たちがみな醤油のラーメンを注文していたが、「つけ麺」すごろくゆえ、券売機で「淡麗つけ麺」のチケットを買った。スープ、麺ばかりかチャーシューの味も出色。じっくり堪能し、店主の鈴木さんと名刺を交換、次回は「醤油ラーメン」と心に決めて、店を後にした。
そうして、埼玉の2軒目、北浦和「かねかつ」に辿りつく。こちらもJR「北浦和」駅から歩いて2分ほどの距離で、店はモダンでシンプルな佇まい。店内で待つ客に続いて、椅子に腰かけて待った。ご夫婦二人でやっている様子で、女将が次々に注文を取ってゆく。その時、「山本さんでいらっしゃいますか?」と訊かれた。店を訪れてすぐに声をかけられたのは初めてである。
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つけ麺 山本益博 LEON.JP 北浦和「かねかつ」の「つけめん」
▲ 北浦和「かねかつ」の「つけめん」。
注文したのは「つけめん」で、カウンター席につき、ほどなくして目の前に現れたのは、実にシンプルな盛り付けの「つけめん」だった。なにより、噛み心地、のど越しのよい、味わい深い麺が素晴らしい。それを活かす、メンマも入ってないスープ。醤油味だが、濃くはなく深みがある。チャーシューはイベリコ豚の肩ロース、ほろほろ鶏むね肉ともも肉の3種が白い皿に並んでいるのみ。シンプルにするために、どれほどの仕事をしているのだろうか?

「つけ麺」すごろくの上りは、シンプルの極みのような滋味あふれる「つけめん」だった!
つけ麺 山本益博 LEON.JP 北浦和「かねかつ」の大友夫妻。
▲ 北浦和「かねかつ」の大友夫妻。

ロビンソン Instagram/@toranomon_robinson
メイドインヘブン Twitter/@madeinheavenabr
千乃鶏 Instagram/@sennotorist
鈴ノ木  Twitter/@suzunoki0802
かねかつ Twitter/@yourmonky

山本益博 LEON.JP  ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

山本益博 YouTube  MASUHIROのうまいのなんの!

山本益博さんがYouTubeを始めました!

日本初の料理評論家、山本益博さんが、美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい! をテーマに、「食べる名人」を目指します。どうぞご覧ください!
YouTube/MASUHIROのうまいのなんの!

「山本益博のラーメン革命!」、他の記事はこちらから!
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