2023.05.14
【第31回】広島のラーメン
広島で見つけた美味しいラーメン、面白いラーメン
日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。
- CREDIT :
文・写真/山本益博 編集/森本 泉(LEON.JP)
何でもっと早くから食べなかったんだろうかと悔やまれるラーメン
湯崎知事から直接の依頼がきっかけだった。「広島は、牡蠣とレモンの生産量は日本一ですが、広島の人間は口下手で、PRが上手くありません。そこで、お手伝いを願いたい」と。私は「いまの時代、食材より人材が大切、広島で料理人のコンクールを開きませんか?」と提案し、「ひろしまシェフ・コンクール」と「ひろしま和食料理人コンクール」が始まった。
カウンター席のみで、女性が3人で店を切り盛りしている。その3人の仕事ぶりに無駄がなく、とても潔い。券売機で「中華そば」を注文、暫くして、目の前にやや小ぶりの丼でラーメンが出てきた。豚骨ベースだが、不愉快な臭いは皆無で、麺、スープ、具のバランスがよく、するすると麺が入る。もやしと青ねぎがアクセントになって、チャーシューも旨い。食べながら、何でもっと早くから食べなかったのだろうかと悔やまれるほどだった。
試験用に作る具のないラーメンは楚々とした味わい
店の名を「中華そば くにまつ」という。その「面白いラーメン」と言うのは、店が新しい麺の開発時に、試験用に作る具のないラーメン、だという。うどんの「素うどん」、そばの「もり」と同じ、シンプル極まりないラーメン。
「中華そば」は醤油味で、スタンダードなとても素直な味わいだった。ホテルにチェックインし、「くにまつ」の営業時間の終了間際に再び店を訪れた。同じ日に、連食ではなく、2度足を運んでラーメンを食べるのは、初めての経験である。壁に貼ってある品書きには「土曜日/平日;17:00~21:00限定 具のない塩ラーメン200円 担担麵用に作られている、鶏ガラスープの品質検査や、新しい麺の開発時に、私たちが試験用につくるラーメンです。」とある。
緑の雷紋の丼に青ねぎのみ添えられたまことに楚々としたラーメン。幾分か塩気を感じるスープに細い麵がよく似合う。こういうラーメンを品書きに加える店に拍手を送りたい。
中華そば 陽気/Twitter
中華そば くにまつ HP/kunimatsu-hiroshima.com
● 山本益博(やまもと・ますひろ)
1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique
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日本初の料理評論家、山本益博さんが、美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい! をテーマに、「食べる名人」を目指します。どうぞご覧ください!
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