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2023.05.28

【第32回】京都のラーメン

「上品」を捨てた!? 京都のラーメンの面白さとは?

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博 編集/森本 泉(LEON.JP)

京都 ラーメン 山本益博 LEON.JP

脂っこくて濃い味が多い京都のラーメン

今まで、京都でラーメンを食べるなど考えもしなかった。東京の人間にとって、京都は日本料理の最高峰で、出かけたい店が山ほどある。30代になってからだが、訪れた店は「嵐山吉兆」「川上」「たん熊」「河繁」「千花」「瓢亭」「菊乃井」「和久傳」「浜作」「未在」、まだまだ数えきれないほどある。
昔から「日本料理は椀刺しが華」と言われていて、献立の中では「お造り(刺身)」と「お椀」が花形で、この二つがもっとも大切に扱われてきた。「お椀」は昆布と鰹節で出汁を引いた、吸い地の「うす味」が最上とされ、これが醤油の濃い味に慣れた東京人にはなかなかわからなかった。
ここ数年、日本中のラーメンを食べ歩くようになって、「京都」のラーメンの味は、日本料理のように「うす味」で品の良いスープが特徴だろうかなどと予想した。ところが、それが、まるで正反対。意外にも、脂っこくて濃い味が多く、驚いた。東京っ子に最もよくわかる、「上品」を捨てた味わいなのである。

もちろん、「京ト麺」「麵屋猪一」のような、「京都」のイメージに沿ったラーメンもあるが、わたしの興味を引くのは「ますたに」に代表される、背脂で油脂が強調された醤油味ラーメンである。
京都 ラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ こちらは「京都」のラーメンのイメージどおり、 「麵屋猪一」の「出汁そば(白醤油)」。
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東京・日本橋で食べた「ますたに」の感動を味わいたくて

「ますたに」の本店は銀閣寺/白川だが、東京・日本橋「髙島屋」近くに出店しており、たまたま食べてみたのだが、これがとても美味しかった。スープの味が鶏ベースのうえに背脂の甘み・醤油の旨味・一味の辛味の三層になっていて、山盛りになった刻んだ九条ネギが、スープと細めの麺にうまく調和していた。

これをきっかけに京都「ますたに」本店を調べると、店は夕方4時には店を閉めてしまう。すると、支店がもう一軒、京都駅の駅ビル「拉麺小路」に店を出していることが分かった。京都駅なら、どんなに混んでいようと、便利このうえない。
京都 ラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 「ますたに拉麺小路店」の「中華そば」。
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人気店なので、しばし並んだあと、同じメニューをいただくと、見た目は変わらないのだが、あの東京・日本橋店の感動がない。ひと言でいえば、三層の味が混濁しているのだ。これはどうしても本店へ行かなくてはならない。

京都駅から地下鉄で四条に出て、今度は祇園四条から京阪電車の出町柳駅で降り、そこからタクシーに乗った。

行き先を告げると、タクシーの運転手さんはよくご存知で、いつも列が出来ている店という。たまたま雨模様の日で、昼時を外していたためか、店の外に行列はなかった。ただし、店を入ると、何人もの客が、壁に沿って並んでいる。かぎ型のカウンター席と小上がり席があり、カウンター席の端に案内された。
京都 ラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 「ますたに本店」の「中華そば大盛」。
期待を込めて待っていると、運ばれてきた「中華そば」は、京都駅の「ますたに」と似たり寄ったりの一杯だった。

拳ラーメンは極めて印象に残る味わい

その後、京都で数軒食べたが、京都西駅近くの「拳ラーメン」が極めて印象に残るラーメンで、裏を返して2度出かけている。いつか、もう一度、食べて「拳ラーメン」をレポートしたいのだが、2度ほど「臨時休業」の憂き目にあってしまった。
京都 ラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 「拳ラーメン」の「中華そば」。
京都 ラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 「拳ラーメン」の「京鴨とノドグロ煮干しそば 煮卵付き」。
そして、最近、再び日本橋の「ますたに」へ。盛り付けからして、整然と丁寧で美しく、九条ネギが格好の味のアクセントとなり、やはり、食べ終えて後を引くラーメンだった。
京都 ラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 「ますたにラーメン日本橋本店」の「ラーメン(九条ネギ多め)」。
京都 ラーメン 山本益博 LEON.JP ますたに

中華そばますたに HP/ますたに本店
中華そばますたに拉麺小路店 HP/拉麺小路店
京都銀閣寺ますたにラーメン日本橋本店 HP/日本橋本店
拳ラーメン HP/拳ラーメン
麵屋猪一 HP/麵屋猪一

※写真は白川のますたに本店

山本益博 LEON.JP  ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

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