2023.06.11
【第33回】亀有「ののくら」
亀有の名店「ののくら」の中華そばは、もう食べられない
日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。
- CREDIT :
文・写真/山本益博 編集/森本 泉(LEON.JP)
その時、私流の最大級の賛辞を店主に伝えて、店を後にした
この度、ののくらの店主、白岩蔵人が2023年2月20日に急性心筋梗塞により急逝致しました事をご報告申し上げます。
2017年12月よりオープンし、5年間に渡り多くのお客様にご来店頂きました事を心より感謝申し上げます。
お客様に美味しいラーメンを提供する一心で、食材から接客、全てにおいてこだわりを持ち丹精込めた一杯を作り上げておりました。
誰にも受け継ぐ事なく1人で味の追求をしていましたので、とても残念でなりませんが、ののくらは閉店する事になりましたので合わせてご報告申し上げます。
ここまで、ののくらを支えてくださった、お客様、スタッフ、業者の方々、本当にありがとうございました。
2/21(水)より突然の臨時休業につきまして、大変ご迷惑並びにご心配をお掛けししましたこと、心よりお詫び申し上げます。
葬儀に際しましては、無事に執り行われ、近親者に見守られながら安らかに天国へと旅立って逝きました。
尚、お店への献花等は近隣への迷惑となりますのでご遠慮くださいますようお願い申し上げます。
親族より
JR亀有駅を出て、大通りをしばらく歩くと、店より前に長い行列が目に入った。行列をみて待ち時間は3~40分くらいだろうかと予想したが、店に入って席に着くまで1時間20分ほどかかった。そのわけは席についてすぐに分かった。何もかもひとりで淡々と中華そば作りに専念していたからだった。
「ミシュラン東京2023」には、「ののくら」がビブグルマンで掲載され、次のように紹介されている。
ほとんど1つ星を献上したラーメンへの讃辞に近い。
券売機に「ののくら」のステッカーが貼ってあるではないか
すると、その券売機に「ののくら」のステッカーが貼ってあるではないか。よく見ると「手打式 超多加水麺 ののくら」とある。それが気になりつつも「醤油らぁ麺」を選んで、席に着いた。
注文した「醤油らぁ麺」は、まろやかな醤油味で、スープ、麺、具の三位一体が申し分なかった。これはどうしても「ののくら」のステッカーの件を聞かなくてはならない。
後日、「ののくら」と「さくら井」は同じ味わいのラーメンではないものの、「さくら井」を再訪し、今度は「塩らぁ麵」を食べて、ひとり「ののくら」を追悼したのだった。
● 山本益博(やまもと・ますひろ)
1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique
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日本初の料理評論家、山本益博さんが、美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい! をテーマに、「食べる名人」を目指します。どうぞご覧ください!
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