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2023.07.23

【第36回】辛い麺&担々麺

夏に食べたい東京の辛い麺、担々麺。美味いのは?

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博 編集/森本 泉(LEON.JP)

辛いラーメン 山本益博 LEON.JP
夏になって、まず真っ先に食べたくなるラーメンと言えば、7月・8月限定の台東「らーめん 天神下 大喜」の「冷やしとりそば」である。スープというよりとろとろのゼラチン状の冷たい鶏出汁が何より心地よく、平打ちの麺と、よくよく考えられたなす、オクラ、なめこ、トマトをはじめとする具と見事にマッチする。夏の麺の大傑作!
辛いラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 台東「らーめん 天神下 大喜」の「冷やしとりそば」。
正直に告白すると、基本的に辛いものが苦手な私は、みずから積極的にメニューから「辣油」や「山椒」を丼に盛り込んだラーメンは選ばない。しかし、この連載は絶好のチャンスである。今回、課題を与えられたと考えて、あちこち食べ歩いてみた。
辛いラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 南大塚「創作麺工房 鳴龍」の「担担つけ麺」。
まずは、「ミシュラン」で1つ星に輝き、ラーメン本でも評判高い南大塚「創作麺工房 鳴龍」の「担担つけ麺」。「辣油」も「山椒」もことさら強くなく、胡麻の風味と相まって、調和のとれたソースと言うかスープで、細い麺にほどよく絡みつく。

今回「鳴龍」に出かけたのは3回目だが、このメニューが一番私にしっくりときた。店内は改装されていて、カウンター下につけられた引き出しに箸、爪楊枝などが用意されている。この引き出しから箸などを取り出して、自分でセットする。
辛いラーメン 山本益博 LEON.JP
▲  南大塚「創作麺工房 鳴龍」のテーブルと引き出し。
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このサービススタイル、実は10年ほど前、コペンハーゲンの「レレ」と言う店が始めた。サービスの人手が足らず、サービスマンは料理の皿の出し下げ、ワイングラスにワインを注ぐのみで、ナイフフォークなどのシルバーは客自身がセットするもの。

その後、日本のレストランでも見かけるようになったが、ラーメン専門店で見かけるのは初めてである。
辛いラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 荏原中延の「中華そば 多賀野」の「からいつけそば」。
辛いラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 荏原中延の「中華そば 多賀野」の「酸辛坦麺」。
荏原中延の「中華そば 多賀野」で初めて食べたラーメンが「ごまの辛いそば」だった。1990年代後半、お店が開店して間もなくのころだった。それを思い出して出かけてみると、店主から「からいつけそば」を薦められた。それを注文していただくと、「辣油」が実に利いていて、私の「辛さ」のバロメーターを超えてゆく。ただし、ひと口目よりふた口目、ふた口目より3口目が「辛さ」に次第慣れて、うま味を感じるようになってゆく。
「多賀野」にはもうひとつ「辛いそば」があって、それが「酸辛坦麺」。後日、これに挑戦すると、お酢の「酸味」はあるが、「辛い」のなんの! 食べながら、湯島のカレー「デリー」で極辛のカシミールカレーを食べた時のことを思い出した。途中で水を飲むと、さらに「辛さ」がこたえるようになってしまったことを。
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辛いラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 幡ヶ谷「チャイナハウス 龍口酒家」の「汁なし担々麺」。
続いて、幡ヶ谷「チャイナハウス 龍口酒家」の「汁なし担々麺」。胡瓜、レタス、パクチーなどの緑野葉が盛られ、天ぷらでいう「揚げ玉」のような揚げ粉が散らされ、箸で掻きまわしながら、なかの麺を持ち上げると、これまた緑色した麺が現れる。

聞けば、クロレラを打ち込んだ麺だという。よくかき混ぜながら食べ始めると、控えめな山椒などの辛みとごまの香りが緑麺に見事に調和している。どうやら、これが私好みの「担々麺」と言えようか。
辛いラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ こちらがクロレラを打ち込んだ麺。
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食べながら思い出したのが、かつて虎ノ門ヒルズにあった「てんせんめん」の「担々麺」。辛みとごまの風味と挽肉の美味さが渾然一体となって、盛り付けを含めて忘れられない味である。
辛いラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 虎ノ門ヒルズ「てんせんめん」の「担々麺」。すでに閉店している。
さあ、そろそろここらあたりで原稿を書き始めようかと言う段になって、新店の情報がきた。この7月に名古屋から東京・中目黒にやってきた「tokyo花さんしょう」がそれ。

メニューは「RaRaヌードル」と「Curryヌードル」の2種のみで「辛さ」が1辛、2辛、3辛とある。もちろん1辛で「RaRaヌードル」を注文。
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▲ 恵比寿「tokyo花さんしょう」の「RaRaヌードル」。
「RaRa」は「辣」と「ラーメン」のこと。主人の好みと言う山椒が効いているラーメン。「Curryヌードル」はカレー風味のラーメンで、どちらも味噌がベースになっているという。香りのよいペーストが素敵なアクセントとなり、辛すぎず、重すぎず、どちらも洗練された一杯に仕上がっている。
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辛いラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 中目黒「tokyo花さんしょう」の「Curryヌードル」。
この店、夜しかやっていない。昼間は他のラーメン店の営業で、連食が出来ない私は、夜2回出かけたが、2度目はいそいそと出かけた。それほど「辛さ」が味噌と相まって魅力的な味になっている。

台東「らーめん 天神下大喜」 TEL/03-3834-0348
南大塚「創作麺工房 鳴龍」  Twitter
荏原中延「多賀野」  HP/jimdofree.com
幡ヶ谷「龍口酒家」 Twitter
虎ノ門ヒルズ「てんせんめん」 ※閉店
中目黒「tokyo花さんしょう」 TEL/非公開



山本益博 LEON.JP  ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

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