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2023.11.12

【第43回】 秋の茸「ポルチーニ」「トリュフ」のラーメン

秋の茸「ポルチーニ」「トリュフ」のラーメンは難しい

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博 編集/森本 泉(LEON.JP)

ラーメン ポルチーニ トリュフ 山本益博 LEON.JP
六本木の「入鹿TOKYO」へ出かけてゆくと、誰もが券売機で「ポルチーニ醤油らぁ麺」を買って、食べている。最近は、インバウンドのお客さんがかなり増えて、開店当初から比べると行列が長くなったように感じる。一昨年、初めて出かけた時、私も「ポルチーニ」に魅かれて食べた。
ラーメン ポルチーニ トリュフ 山本益博 LEON.JP
▲ こちらは「特製ポルチーニ醤油らぁ麺」。
卓上に「ポルチーニ醤油らぁ麺の楽しみ方!!トリュフと数種のキノコを使った森のペースト(自家製オリジナルブラックデュクセルソース)が一口厚切りベーコンの上にございます。途中でスープに溶かして味と風味の変化をお楽しみください」と立て札があり、言われるままにしてみたが、残念ながらラーメンの味と風味にはほとんど効果はなかった。

2023年版「ミシュラン東京」にビブグルマンで初登場し「醤油ポルチーニは、ポルチーニ茸と黒トリュフのペーストが香る」とまで書かれているので、再訪したが、初回と印象は変わらなかった。
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ラーメン ポルチーニ トリュフ 山本益博 LEON.JP
▲ スペイン・サンセバスチャンのバル「GANBARA」で食べたポルチーニのソテー。
ポルチーニ茸の香りと味わいが最高に発揮されるのは、ソテーして熱を加えた時である。甘くて切ない味がするので、食べ始めると止まらない。

来年、季節の真っ只中に、どなたか、ポルチーニ茸かセップ茸かヤマドリダケをソテーし、麺とスープのシンプルなラーメンの具として、「きのこ」だけを添えるメニューを作ってくれる勇者はいないだろうか?
この秋、茸のラーメンを探して食べてみたが、東京駅「そらのいろ NIPPON」の「キノコべジソバ」も小岩「無尽蔵こいわ家」の「きのこラーメン」も、茸の魅力は今一つだった。
ラーメン ポルチーニ トリュフ 山本益博 LEON.JP
▲ 「そらのいろ NIPPON」の「キノコベジソバ」。
ラーメン ポルチーニ トリュフ 山本益博 LEON.JP
▲ 「無尽蔵こいわ家」の「きのこラーメン」。
そういえば新宿「金色不如帰」の「真鯛と蛤の塩そば」にもトリュフやポルチーニのペーストを添えてあったっけ。ただし、ラーメンに華を添えるほどではなかった。私が知るところ、ラーメンに初めてトリュフを添えたのは「蔦」のようだが、季節外れでもメニューに載っていたので、それをいただいたが、トリュフの効果はまったく感じられなかった。
ラーメン ポルチーニ トリュフ 山本益博 LEON.JP
▲ 「SOBAHAUSE 金色不如帰」の「真鯛と蛤の塩そば」。
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食べ手のわたしたちが、トリュフの正体、本領、真髄を知らずじまいなのだから仕方のないことかもしれないが、トリュフの魔力に一度でも取りつかれたことのある料理人であるならば、トリュフの真価を啓蒙する使命があるのではないだろうか。

ある時から、トリュフが香るポテトチップスが人気の的になり、あっという間にトリュフが大衆好みの食材の仲間入りを果たした。トリュフオイルにトリュフ塩が鮨屋にもとんかつ屋にも登場するようになった。最近は、コンビニの看板にも「トリュフが香る!」が踊っている。

だが、すべてケミカルに合成された食品で、本物のトリュフとは似て非なるものである。
ラーメン ポルチーニ トリュフ 山本益博 LEON.JP
▲ イタリア・アルバ産の箱入り白トリュフ(左)とパリのレストラン「アストランス」で使われていた黒トリュフ(右)。
トリュフには白と黒があり、白トリュフは9月末から12月末までが、黒トリュフは12月中旬から3月初旬までが妖艶な香りを漂わせる旬で、白はイタリアそれもアルバ産が最上等品と言われ、黒はフランス産が主流である。近年、季節が真逆のオーストラリア産のトリュフが7月8月に輸入され、その品質の高さが評判を呼んでいる。
価格は白トリュフが圧倒的に高価で、スライサーで数枚下ろしただけで、数千円してしまう。加熱すると魅力がなくなってしまうので、熱々のパスタの上にスライスして賞味するのが一般的。黒トリュフは生でも加熱してもよく、フォアグラ、ベーコンなどの油脂、卵、ジャガイモなどの地下茎の食物と極めて相性が良い。つまり、ラーメンには、白より黒トリュフが似合っているのだ。
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ラーメン ポルチーニ トリュフ 山本益博 LEON.JP
▲ 「神保町黒須」の「塩蕎麦」。
神保町のラーメン専門店「黒須」では「塩蕎麦」に、トリュフのペーストが添えてあった。だが、主人の努力ほどの効果は得られなかった。そこで、オーストラリア産の黒トリュフが出まわる7月になったら、私がお手伝いして、「黒須のトリュフ蕎麦」を作っていただきたいと考えていたら、4月末、突然、一身上の理由で店を閉め、京都へ日本料理の修業に出かけてしまった。
ラーメン ポルチーニ トリュフ 山本益博 LEON.JP
▲ 「神保町黒須」のご主人・黒須太一さん。
私が、ラーメンを夢中になって食べ始めた4年前ほど、食べ終えた時に声をかけてくださったラーメン店主の一人が黒須さんだった。その時、彼は「山本さんと一緒にすきやばし次郎へ行くことが、ぼくの夢です」とおっしゃった。小野二郎さんは、この10月27日に98歳を迎えられたが、いまだ元気に鮨を握っていらっしゃる。ご本人は100歳まで握るとおっしゃっているので、その時、黒須さんと一緒に出かけましょう。
そして、いつか、黒須さんが修業を終えて、再び料理屋の看板を出す時が来たら、ぜひとも「トリュフ」でクロスしたいと心から願っています。
山本益博 LEON.JP  ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

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