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2023.12.03

「TAITTINGER at ガストロノミー“ジョエル・ロブション”」

至高のシャンパーニュ×超絶のフレンチ。その相乗効果やいかに?

創業以来、家族経営を続けている希少な大手シャンパーニュメゾン「テタンジェ」が、「ガストロノミー“ジョエル・ロブション”」とコラボした特別なディナーイベントに伺いました。M.O.F.を受賞した関谷シェフと至高のシャンパーニュメゾンには深い関係があったのでした。

CREDIT :

文/森本 泉(LEON.JP)

ガストロノミー“ジョエル・ロブション” テテンジェ LEON.JP

「テタンジェ」と「ロブション」のコラボによる究極のディナーが開催された理由とは

美味しい料理とお酒が大好きという皆さまであっても、世の中には、そう簡単には伺えないレストランというものが存在します。あの、恵比寿ガーデン・プレイスに聳え立つグランメゾン「ガストロノミー“ジョエル・ロブション”」もそんな一軒かと。ミシュランガイド創刊以来、16年間連続で3つ星を取り続ける絶対的エース。世界に数あるジョエル・ロブションのレストランの中でも格別な存在です。

しかるに縁あって、先日その門をくぐる機会に恵まれました。伺ったのは、1932年の創業以来、家族経営を続けている希少な大手シャンパーニュメゾン「テタンジェ」が、「ガストロノミー“ジョエル・ロブション”」とコラボした特別なディナーイベント「TAITTINGER at ガストロノミー“ジョエル・ロブション”」。
テタンジェは「<ル・テタンジェ賞>国際シグネチャーキュイジーヌコンクール」という若手料理人の登竜門となる国際料理コンクールを1967年以来主催しているのですが、実はその第52回(2018年)優勝者として名を刻んだのが、現在「ガストロノミー“ジョエル・ロブション”」の総料理長を務める関谷健一朗さんでした。

優勝により世界的な評価を得た関谷シェフは、さらにこれをステップに、フランス料理界最高の称号“M.O.F.2023”(フランス国家最優秀職人章)を日本人で初めて受賞。そこで、フランス料理の伝統と技術を次代へと繋いでいく役割を担った関谷シェフと、それを支え共に歩んで来たテタンジェとのコラボレーションディナーが実現したという次第。
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ガストロノミー“ジョエル・ロブション” テテンジェ LEON.JP
貴族の邸宅を移築したという壮麗なシャトーは内装も超豪華です。眩いばかりに輝く巨大なシャンデリア、シャンパンゴールドと黒で統一されたシックな内装、まさに非日常の空間は席に着くだけで気分が高揚します。まずはディナー開催を祝って、テタンジェ/アジアパシフィック地区輸出責任者のロナン デ・ラ・モレさんが テタンジェとロブションとの長きにわたる交流に触れたご挨拶を。

次にシェフソムリエの高丸智天さんが、本日のコース料理にマリアージュされるテタンジェとその魅力について説明してくれました。今回は4種類のシャンパーニュが用意され、中には大変希少なキュヴェもあるとか。期待は膨らみますが、一方でスティルワイン(非発泡性ワイン)なしでメゾンのコース料理すべてに対応が可能なのか、多少の不安もありました。しかし、後に己の不明を恥じることとなるわけで……。
ガストロノミー“ジョエル・ロブション” テテンジェ LEON.JP
▲ この日振る舞われた4本。左から「テタンジェ ブリュット レゼルヴ」、「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン 2012」、「プレリュード グラン・クリュ」、「コント・ド・シャンパーニュ ロゼ 2007」。
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007も愛した「食べるシャンパン」の力強さと厚みのある味わいとは

さあ、開宴です。最初の一品は「ラングスティーヌ(アカザエビ)のゴーフレット」。紅白の紙に包まれたいかにもお目出度いアミューズです。こちらの名物として存在は知っていましたが、実際にいただくと、軽い口触りと、濃厚なエビの風味が驚くほど。

スターターとなるシャンパーニュはテタンジェ社のスタンダード・キュヴェ「テタンジェ ブリュット レゼルヴ」。高丸シェフソムリエによればメゾンにとっては毎年安定した同じ味を作らねばならないスタンダード・キュヴェが一番難しいのだとか。こちらは主に完熟したブドウを使って、そこに複数年のリザーブワインをアッサンブラージュして作られたもの。今回はマグナムボトルで、より古いリザーブワインも使われているとあって、最初の印象は軽やかで繊細なのですが、中盤からは熟成度と複雑性が感じられる一杯でした。
ガストロノミー“ジョエル・ロブション” テテンジェ LEON.JP
▲ 「キャビア・アンペリアル ロブションスタイル」と「テタンジェ ブリュット レゼルヴ」。
ここで最初の料理「キャビア・アンペリアル ロブションスタイル」が登場。ロブション氏のシグネチャーとも言えるひと皿です。甲殻類の柔らかいジュレを敷き詰め、カリフラワーのクリームとパセリのピュレでドットを描き、中央には丸く盛り付けた蟹のサラダ、その上にたっぷりとキャビアを飾っています。「食べる宝石箱や~」と思わず彦摩呂風に叫んでしまいそうです。しかし、一体何人の手がかかっているのでしょう。手間を想像するだけで気絶しそうな一品に、「テタンジェ ブリュット レゼルヴ」がよく合う。キャビアとの相性も抜群です。
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▲ 「北海道産ホタテ貝のポワレ」と「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン 2012」。
2皿目は「北海道産ホタテ貝のポワレ」。ホタテのポワレにカボチャとコンテチーズのクリーミーで柔らかいクーリ(濃厚なソース)、それに旬の白トリュフが添えてあります。このホタテがしっとりと香ばしく、美味いのなんの(笑)。白トリュフの芳しさと相まって、もう、笑うしかありません。そして、合わせるのは、テタンジェ最高峰のプレステージュ・キュヴェ「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン 2012」!
コントと言えば007の映画『ロシアより愛を込めて』でボンド(ショーン・コネリー)がオリエント急行の食堂車で注文したエピソードが有名ですが、コート・デ・ブラン地区の最上級のシャルドネだけで作るテタンジェのフラッグシップです。香りの印象はシャルドネらしく繊細なレモンやライム、グレープフルーツ、ミントなどの香りがあります。時間をおくことで焼いたメレンゲやジンジャー、ブリオッシュトーストの香りがやってきます(と高丸シェフソムリエが教えてくれました)。

こちら、10年熟成して出荷していますが、熟成させることで本領発揮していくタイプのシャンパーニュなので、この先15年ぐらいはコント特有の香りとはじけるような力強さや厚みのある味わいが楽しめるそう。まさに「食べるシャンパン」と呼ばれる、その言葉にふさわしいプレステージュのシャンパーニュなのでした。
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▲ 「香ばしく鱗を焼き上げた甘鯛」と「プレリュード グラン・クリュ」。

テタンジェの中で最も生産量が少なく希少性が高いロゼとほろほろ鳥の相性

続く3皿めは「香ばしく鱗を焼き上げた甘鯛」。甘鯛には関谷シェフがテタンジェの料理コンクールの際に作ったのと同じ、オマール海老をベースにしたシャロンソースを合わせて。淡白ながらもほのかな甘さを感じさせる甘鯛に濃厚なソースが見事に絡み合います。そしてウロコの食感が最高!

合わせるキュヴェは「プレリュード グラン・クリュ」。グラン・クリュのブドウを使って作る上質なシャンパーニュです。シャルドネとピノ・ノワールを50%ずつアッサンブラージュして、瓶詰して5年熟成。とはいえ、そこまで熟成感は感じさせず、柑橘系の香りと、中盤にはリンゴのようにちょっと甘くリッチな香りが入って、そこにトーストした香りが加わるというテタンジェならではのスタイルです(と、これも高丸シェフソムリエの受け売り)。
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▲ 「フランス産 ほろほろ鳥胸肉のロースト キノコを詰めた“カンデーレ”を添えて」と「コント・ド・シャンパーニュ ロゼ 2007」。
メインは「フランス産 ほろほろ鳥胸肉のロースト キノコを詰めた“カンデーレ”を添えて」。ジューシーさと力強さを併せ持つホロホロ鳥が、カンデーレ(筒状のパスタ)に詰められた茸の滋味あふれる味わいとマッチして深まりゆく秋を感じさせる極上のひと皿でした。

こちらに合わせるのは2007年の「コント・ド・シャンパーニュ ロゼ」。コントはブラン・ド・ブランの印象が強く、ロゼはあまり知られていませんが、テタンジェの中では最も生産量が少なく希少性が高いキュヴェなのだそう。グラン・クリュのシャルドネ30%とピノ・ノワール60%、それにシャンパーニュの赤のスティルワイン(ピノ・ノワール)をブレンドすることでベースのワインに厚みを持たせており、中盤から後半にシャルドネ由来の上等な酸味が長い余韻を作り出しています(と高丸シェフソムリエ)。
このペアリングをいただいて肉料理にシャンパーニュは合うの? という当初の疑問は見事に払拭されました。牛だとわかりませんが、ほろほろ鶏とロゼのシャンパーニュは相性最高。むしろこれしかないと思えてくるようなマリアージュでした。もちろんそれは最高峰のロゼだからこそでしょうが。

更にそのあと出されたデザートのジュレにも「ノクターン・セック」を使っているということで、この日はまさに最初から最後までテタンジェづくし。しかし、シャンパーニュでもこれだけ味わいの幅があると、百花繚乱のロブションの料理にも負けないどころか、さらにその味わいを引き立てる素晴らしい化学反応を産みだすことに驚かされました。恐るべしテタンジェ、恐るべしジョエル・ロブション。ということで、最後に関谷健一朗シェフにお話を伺いました。
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▲ 関谷健一朗シェフ。

M.O.F.受章の関谷健一朗シェフに聞いたテタンジェとロブションの関係

── 今日のお料理はどのように考えられたのですか?

関谷シェフ(以下、関谷) 今回は高丸シェフソムリエとともに“シャンパーニュあっての、テタンジェあっての料理”を考えました。シャンパーニュを美味しく味わっていただく。料理は素材を活かしつつ、尖ったり、強すぎないことを意識、スパイスも効かせすぎないようにしました。ホロホロ鳥を選んだのも、赤身の肉よりも白身の肉の方がシャンパーニュと合うと考えたからです。その中で定番の『キャビア・アンペリアル ロブションスタイル』、旬の白トリュフなどもお楽しみいただける構成にしました。白トリュフが登場するのは今年初めて。いいタイミングでした。また、料理全体で意識したのは“ふくよか”という言葉です。

── 関谷シェフにとって「テタンジェ」はどんなシャンパーニュですか?

関谷 テタンジェというメゾンについては、家族で経営されているところが好きです。品質や哲学が代々と受け継がれ、繋がっていく。4代目のピエール=エマニュエル・テタンジェさん、長男のクロヴィスさん、長女で現社長のヴィタリーさんもお会いすれば優しく声をかけてくださる。あたたかい方々で、M.O.F.受賞の際もメッセージをいただいたり、交流が続いています。

── テタンジェのコンクールで賞をいただいたことは、どのような意味がありましたか? それが自信になりましたか?

関谷 コンクールへの参加は今までやってきたことの成果を確かめるチャンスだという認識でした。普段自分が作っている料理がどう評価されるかを知りたかったのです。だから評価されて自信がついたというより、やってきたことは間違いじゃなかったという確信が得られてうれしかったです。今後もこれまでやって来たことを軸にして続ければよいのだということがわかりました。
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ガストロノミー“ジョエル・ロブション” テテンジェ LEON.JP
── それが今回のM.O.F.にも繋がったのでしょうか?

関谷 そうですね。テタンジェのコンクールがなければM.O.F.への挑戦もなかったでしょうね。

── 受賞で亡き師ロブションさんも喜んでいらっしゃるのでは?

関谷 彼も僕がM.O.F.挑戦することは知っていたので、「(取って)当たり前だろ」と言ったんじゃないかな(笑)。
── ところで、本日のお料理、もちろんすべて美味しかったのですが、甘鯛がウロコまで香ばしくとても印象的でした。フランス料理でもウロコを使うのですね。

関谷 普通、フランスで使っている魚は大きいものが多く、ウロコも大きくて食べるには向きません。でも日本では小さくて美味しい魚が手に入るので調理しています。最近は、フランスでも小さな魚を使ってウロコまで食べさせる料理人が出てきましたね。

もともとフランス料理は生きているものを丸ごと使う。動物なら肉だけでなく骨も筋も脂も血も使うし、野菜も皮まで捨てません。その意味では元来SDGsな料理だと思います。ただ、それは単に合理的というだけでなく、生きているものへの感謝の気持ちがあるのだと思います。無駄なく使うという事では日本とも通じるところがあるのではないでしょうか。
── 日本でフランス料理を作られている中で、日本的であることを意識しますか?

関谷 あくまで目指すゴールは「フランスと同じ味」です。日本のお客様が多いからと言って日本的にとは考えません。ただ、当然、フランスと日本では素材も違う。日本の素材を使えば、向こうと同じ調理法では同じ味は出せません。途中の調理工程を工夫して同じ味にたどり着けるようにしています。本当に美味しいものは誰が食べても美味しいのです。そういう料理を目指しています。
ガストロノミー“ジョエル・ロブション” テテンジェ LEON.JP

ガストロノミー“ジョエル・ロブション”

住所/東京都目黒区三田1-13-1 恵比寿ガーデンプレイス内 シャトーレストランジョエル・ロブション2F
営業時間/ランチ 11:30~ (L.O.13:00)※土・日・祝のみ
ディナー 17:30~ (L.O.20:00)
定休日/不定休
TEL/03-5424-1347
HP/ガストロノミー “ジョエル・ロブション” 

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