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2023.12.24

【第46回】 ラーメンにもA級はある!

塩ラーメンでA級と言える美味しい店はどこだ?

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博 編集/森本 泉(LEON.JP)

「塩」ラーメンが誕生したのはいつ頃なのだろうか?

私は1980年代初めに「東京・味のグランプリ」というガイドブックを上梓し、「すし、そば、てんぷら、うなぎ、とんかつ、ラーメン」という、いわば東京の郷土料理を取り上げ、飲食店を紹介したのだが、当時、ラーメン屋を訪れても、「塩味」を売り物にするラーメンはなかったと思う。それから10年ほど経って、改めて食べ歩きを再開したのだが、ラーメン界は「豚骨」ブームで、私の興味は次第に薄れ、いつしか視界から「ラーメン」が消えて行ってしまった。
塩ラーメン 山本益博 LEON.JP
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90年代後半に青山「麵屋武蔵」、中延「多賀野」、吉祥寺「一二三」などは食べていたが、本格的にラーメンに目覚めたのは、ずっと後のことで、2010年代半ばになってからである。したがって、私のラーメン遍歴には、途中20年近くエアポケットがあって、その期間を経た後「塩ラーメン」に気が付いたのだった。おそらく、「塩ラーメン」は「湯麵」の延長線上に生まれたラーメンだったのではなかろうか? と言うのが、私の推測だった。
私が興味を失っている間にラーメンは、東京どころか日本の一大勢力の人気料理となり、B級グルメのトップランナーになっていた。私は、一度は視界から消えていた「ラーメン」を、改めて見直し、再び食べ歩きを始めた。

私が気合を入れて「ラーメン」と向かい合わせることになったのは新宿御苑の「不如帰」と三ノ輪の「トイボックス」でラーメンを食べてからである。どちらのスープにもノックダウンさせられた。「不如帰」の魚介の出汁、「トイボックス」の醬油味のスープに魅了され、さらに浅草橋「饗 くろ㐂」の「醤油」「塩」のラーメンを食べるに及んで、「ラーメン」がB級なのではなく、「ラーメン」にも、A級B級があることを教えられた。
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塩ラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 荏原中延「中華そば 多賀野」の「粟国の塩そば」。

そして「塩味」に興味を抱いた決定打は、荏原中延に移転した「中華そば 多賀野」で食べた「粟国の塩そば」だった。スープを残らずいただいても喉に「塩味」がとどまることなく、帰途、荏原中延から五反田へ出ても、水が欲しくはならなかった。これぞ「A級」の「塩」ラーメンと言いたい。
塩ラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ つくば「中華そば ひしお」の「奥久慈しゃもの特製中華そば(塩)」 。
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ところが、その後、あちこちで「塩味」のラーメンを食べても、満足できなかった。まず初めにスープを飲んで、いきなり「塩味」を感じるのである。「塩」と「うま味調味料」が合体すると、食べ終えた後、かなり長い間、喉の奥に「塩味」が残るのである。

実は、「醤油味」も同じことで、いきなり醤油が口中を占領すると、次第にスープが塩辛くなってしまう。「塩」も「醤油」も、いかにマイルドに仕上げるかが肝要ではなかろうか。それゆえ「鶏油」は絶好の緩衝調味料と言えようか。

これまで食べてきた中で、絶品は、つくば「中華そば ひしお」の「奥久慈しゃもの特製中華そば(塩)」のみ。(塩)と表示するより「淡麗」こそが相応しい。続くは、青梅「Ramen FeeL」の「塩らぁ麵」。こちらには「清澄」を献呈したい。
塩ラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 青梅「Ramen FeeL」の「塩らぁ麵」。
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もう1軒、忘れてはならないのが、荻窪「函館塩ラーメン 五稜郭」の「ラーメン」。昆布から取った出汁の香りが豊かで、昆布の優しく穏やかな塩味のみで、はじめから最後まで「塩」を感じさせない。傑作と言ってよい。

東松山「深緑」の「羅臼昆布」を使ったラーメンも戴いたが、昆布出汁が出汁の域を超えて強すぎ、感動にまでは至らなかった。こちらの醤油ベースの「黒出汁」は衝撃的美味さなのだが残念である。
塩ラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 荻窪「函館塩ラーメン 五稜郭」の「ラーメン」。
あと、私の合格点に達している「A級」は、茗荷谷「生粋 花のれん」、高畠(山形)「山喜」、札幌「Japanese Ramen Noodle Lab Q」、東京駅「NIPPON RAMEN 凛 RIN TOKYO」、浅草橋「饗 くろ㐂」、塚口(兵庫)「ロックンビリ―S1」くらいしかない。

来年、どんな素敵な「塩」ラーメンに出会えるだろうか?
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塩ラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 茗荷谷「生粋 花のれん」の「旨味鶏だし塩」。
塩ラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 高畠(山形)「山喜」の「Sio(塩)ラーメン」。
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塩ラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 札幌「Japanese Ramen Noodle Lab Q」の「塩らぁ麺」。
塩ラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 東京駅「NIPPON RAMEN 凛 RIN TOKYO」の「塩らぁ麺」。
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塩ラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 浅草橋「饗 くろ㐂」の「塩そば」。
塩ラーメン 山本益博 LEON.JP
▲ 塚口(兵庫)「ロックンビリ―S1」の「塩らぁ麺」。
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山本益博 LEON.JP  ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

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山本益博 YouTube  MASUHIROのうまいのなんの!

山本益博さんがYouTubeを始めました!

日本初の料理評論家、山本益博さんが、美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい! をテーマに、「食べる名人」を目指します。どうぞご覧ください!
YouTube/MASUHIROのうまいのなんの!

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「山本益博のラーメン革命!」、他の記事はこちらから!
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