2カ月に一度は通う、横浜の「江戸前寿司」の名店
この店、当初は「すきやばし次郎よこはま店」だった。東京・銀座の「すきやばし次郎」出身の鮨職人水谷八郎さんがカウンターで鮨を握っていた。その水谷さんが銀座に店を出すことになり、その後を受け継いだのが、東京「青木」出身の浜田剛さんだった。そして後年、水谷さんは「ミシュラン東京」で3つ星に輝く鮨職人となったことは記憶に新しい。
浜田さんは、実に研究熱心で、「江戸前鮨」の本や雑誌を読み漁り、往年の「江戸前鮨」の鮨職人に最大の敬意を払いつつ、現代の「江戸前」を精魂込めて表現している。「江戸前鮨」の基本中の基本である「酢飯」は、私の見るところ、今、間違いなく日本一と呼んでいい美味さで、これをいただきたいために、2カ月に一度、東京からわざわざ横浜まで通っているほどである。
まるで竜宮城へでも誘われたような中華街のお宝ワンタン
メインストリートでは「同發」が最も有名だったが、料理も値段もハイクラスで私は店を訪れたことはいまだない。それよりはずっとずっと大衆的で安価な、それでいて上質な料理を食べさせてくれる、露地にある「海員閣」や「安記」で食べた。
今や、横筋のどこの露地にも観光客が溢れている。人気がほとんどなかったメインストリートと並行する通りも行列の出来ている店が、あちこちにある。
口に含むと、まず、ツルンとした薄皮が溶け、歯ごたえ十分の練り肉が姿を現す。噛めばジューシーな肉の味がこぼれ出す。これが化学調味料に頼らぬ、練り肉の滋味に溢れたもの。ここへ淡いスープを流し込むと、まるで竜宮城へでも誘われたみたいになる。
● 山本益博(やまもと・ますひろ)
1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique
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