• TOP
  • GOURMET
  • とんでもなく美味しい湯麵(タンメン)を見つけた!

2024.04.14

【第52回】 東京の湯麵巡り

とんでもなく美味しい湯麵(タンメン)を見つけた!

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博 編集/森本 泉(LEON.JP)

山本益博 ラーメン革命! WebLEON
西荻窪に住んで30年が過ぎた。東京の下町で生まれ育った者が、中央線沿線で、下町と同じ空気が漂う町として選んだのが「西荻窪」だった。当時は、古道具、骨董の町として知られていたが、食堂、喫茶店も居心地のよい店が多かった。

その1軒が「博華(はっか)」で、看板には「北京料理 湯麵餃子」と書かれていて、住み始めた当初から、家から近いこともあって、よく通い詰めてきた。その「博華」が道路拡張のため、この5月いっぱいで移転せざるを得なくなってしまった。
PAGE 2
今でいう「町中華」だが、私がこの店で好んで注文して食べるのが「たんめん」である。出来上がるまで餃子とビールでつないだ後、運ばれてきた丼には、野菜は、キャベツ、もやし、にんじん、にら、それに豚肉の細切りが入っている。野菜のうま味を生かした麺だが、ポイントはごま油。このごま油の香りが食欲を掻き立ててくれ、寒い時など、何よりのご馳走だった。この店、クーラーがなく、暑い時は窓を開け放つなかで、汗をかきながらいただく「たんめん」も格別の味だった。
同じ西荻窪に「はつね」があって、こちらは現在ラーメンより「タンメン」が人気である。もやしを中心とした野菜を炒め、澄んだ塩味のスープと細い麺がことのほかよくあう。
山本益博 WebLEON  タンメン たんめん
 ▲ 西荻窪「はつね」の「タンメン」。住所/東京都杉並区西荻南3-11-9 TEL/03-3333-8501
PAGE 3
我が町の2軒で「タンメン」を食べたところで、東京の「タンメン」が気になりだした。例えば「日高屋」のタンメンは、野菜たっぷりで、野菜不足になりがちなサラリーマンに人気がありそうな味つけである。タンメン専門のチェーン店「タンメン トナリ」も、野菜の盛りがよく、同じような感想を持った。
山本益博 WebLEON  タンメン たんめん
▲ 「日高屋」の「野菜たっぷりタンメン」。
山本益博 WebLEON  タンメン たんめん
▲ 「タンメン トナリ」の「タンメン」は野菜山盛り。
PAGE 4
昔からある「直久」では、名前こそ「とんさいらーめん塩」だが、中身は「たんめん」とほぼ変わらず、これまた山盛りの野菜そばと言ったところ。恵比寿「大龍軒」の「特製ちゃんタンメン」は、西のちゃんぽんと東のタンメンの融合だそうで、ボリュームもカロリーも塩味も満点である。
山本益博 WebLEON  タンメン たんめん
▲ 「直久」の「とんさいらーめん塩」。
山本益博 WebLEON  タンメン たんめん
▲ 恵比寿「大龍軒」の「特製ちゃんタンメン」。住所/東京都渋谷区恵比寿南2-3-15 インペリアルビル 1F TEL/03-5725-1030
PAGE 5
そんな中にあって、少々驚きを持って食べたのが、東銀座にある「銀座たんめん」の「たんめん」。「たんめん専門店」で、券売機には麺は「たんめん」しかない。あとはトッピングで「パクチー」などがあるのみ。
この店の「たんめん」の具は、野菜は白菜のみで、あとは豚肉の細切りが入っているだけ。店の壁には「本日の白菜は茨城県産黄芯白菜  葉の内部が黄色く甘みが強いのが特徴です」と貼り紙がしてある。

また、店の玄関扉のガラス戸には「お客様各位 いつもご来店ありがとうございます。現在、白菜の高騰が続いており、誠に申し訳ございませんが、しばらくの間、量の調整をさせて頂きたく、ご了承のよろしくお願いいたします。*また、白菜の大盛りは中止とさせていただきます。すいません。銀座たんめん」と注意書きがしてある。
山本益博 WebLEON  タンメン たんめん
▲ 東銀座「銀座たんめん」の「たんめん」は白菜が甘い!  住所/東京都中央区銀座4-14-3 銀座斉藤ビル 1F
PAGE 6
ほとんど期待せずに待っていると、運ばれてきた「たんめん」の丼の表面がシンプルで美しいこと! さらに、白菜の香りが漂ってきた。

箸を進めれば、白菜の甘いこと、甘いこと! その味がスープにしみこんで、なんとも穏やかで優しい。そして、シンプルなのに、食べ進んでも飽きがこない。半分以上、食べたところで、酢をかけまわしていただくと、するどく「味変」して、一気にスープを飲み干してしまった。
山本益博 WebLEON  タンメン たんめん
▲ 同じく「銀座たんめん」の「たんめん」パクチー添え。
食べ終わって、我が家まで「たんめん」の思いが残り、数日後、再び出かけて、「たんめん」のほかに、「パクチー」を添えて食べてみた。これがまた、香りが重層的になり、これにさらに自家製の辣油を垂らすと、中国料理の麺の味わいになった。

いま、東京の穴場の「たんめん」として、大推奨したい1軒である。
PAGE 7
山本益博 LEON.JP  ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

山本益博 YouTube  MASUHIROのうまいのなんの!

山本益博さんのYouTubeが好評稼働中!

日本初の料理評論家、山本益博さんが、美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい! をテーマに、「食べる名人」を目指します。どうぞご覧ください!
YouTube/MASUHIROのうまいのなんの!

「山本益博のラーメン革命!」、他の記事はこちらから!
PAGE 8

登録無料! 買えるLEONの最新ニュースとイベント情報がメールで届く! 公式メルマガ

登録無料! 買えるLEONの最新ニュースとイベント情報がメールで届く! 公式メルマガ

この記事が気に入ったら「いいね!」しよう

Web LEONの最新ニュースをお届けします。

SPECIAL

    おすすめの記事

      SERIES:連載

      READ MORE

      買えるLEON

        とんでもなく美味しい湯麵(タンメン)を見つけた! | グルメ | LEON レオン オフィシャルWebサイト