• TOP
  • GOURMET
  • 「ロックンビリ―S1(スーパーワン)」店主・嶋崎順一さんが天才である所以とは?

2024.06.30

【第57回】 ラーメンの天才・嶋崎順一

「ロックンビリ―S1(スーパーワン)」店主・嶋崎順一さんが天才である所以とは?

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博 編集/森本 泉(Web LEON)

山本益博 WebLEON  ラーメン革命 ロックンビリーS1 嶋崎順一
▲ 真ん中が「ロックンビリ―S1(スーパーワン)」店主・嶋崎順一さん。

嶋崎順一さんとフェラン・アドリアの共通点とは

兵庫県尼崎の塚口にある「ロックンビリ―S1(スーパーワン)」で、店主・嶋崎順一さんが作る革命的ともいえる斬新なラーメンを食べた時、唐突にも思い出したのが、20世紀末から今世紀にかけて、世界の料理界を席巻したスペインはバルセロナ近郊ロサスの郊外にあった「エルブリ」のシェフ、フェラン・アドリアだった。
ラーメンファンならすでにご存知だが、嶋崎さんは、鶏と水からのみで出汁をとったスープに「鶏油(チーユ)」をかけまわす一杯を考えだし、その影響を受けたラーメンが今や日本中に広まっている。そればかりか、「昆布水ラーメン」というまったく新しいつけ麺を生み出したのも彼である。
PAGE 2
山本益博 WebLEON  ラーメン革命 ロックンビリーS1 嶋崎順一 エルブリ
▲ 料理本「el Bulli1998~2002 」より。左から2番目がフェラン・アドリア、右から2番目がジュリ・ソレール。
フェラン・アドリアは、16歳の時、サッカー選手になる夢が断たれて、ロサス郊外カーラ・モンジョイにあるレストラン「エルブリ」に料理見習いとして入った。

元音楽プロデューサーだったオーナーのジュリ・ソレールが、アドリア青年の才能に眼をつけ、フランスの3つ星レストランに連れて行っては、店で食べた料理の再現をさせた。その出来栄えの素晴らしさを目の当たりにしたオーナーは、店のシェフに抜擢するため、最後に、コートダジュールはニースの「ネグレスコホテル」で研修させた。

その研修最後の日、ホテルのメインダイニング「シャントクレール」のシェフ、ジャック・マキシマンがコートダジュールの海岸に研修生全員を集めて、訓示した。その最後の締めくくりの言葉が「人の真似はするな!」だった。
PAGE 3
山本益博 WebLEON  ラーメン革命 ロックンビリーS1 嶋崎順一 フェラン・アドリア
▲ 「サンセバスチャンガストロノミカ2023」サンセバスチャン料理学会で、私の右がフェラン・アドリア、私の左は「noma」のレネ・レゼッピ。
どんな料理でも模倣、再現することに長けていたアドリア青年は、この言葉に衝撃を受け、「エルブリ」に戻って、シェフに就くと、今まで誰も思いつかなかった「エスプーマ」という、素材の香りをそのままに、なんでも「泡」に変えてしまう調理器具を生み出し、まったく新しい料理を考え出し、一世を風靡したのだった。
私は2011年に「エルブリ」が店を閉めるまで、7回訪れたが、その都度今まで食べたことのない料理に出会い、痺れ、感動した。フェラン・アドリアの仕事ぶりに触れ、天才は「直感する」「創造する」「変貌する」ということを身をもって実感した。
PAGE 4

嶋崎さんは「直感する」「創造する」「変貌する」ラーメン界の天才

山本益博 WebLEON  ラーメン革命 ロックンビリーS1 嶋崎順一
▲  「ロックンビリ―S1」の醤油らぁ麺。
「直感する」といっても、「思いつき」とは違い、試験、実験、経験を重ねた末に「ひらめき」が天から降ってくるのである。

「創造する」は、模倣、真似を避け、試作を何度も何度も繰り返すうちに、誰もが成し遂げたことない仕事に出会うのである。

そして、自分が作り上げた作品に満足することなく、進み続けると新しい世界が見えてくるのである。
PAGE 5
山本益博 WebLEON  ラーメン革命 ロックンビリーS1 嶋崎順一
▲ 「ロックンビリ―S1」の元祖昆布水のつけ麺。
先日、嶋崎さんにお話を伺う機会を得た。「鶏油」は、丸鶏からスープをとるために眼をそらさず見続けている時、浮いてきた油をその都度掬い取って、それを仕上げに使うことを考え付いたのだという。
山本益博 WebLEON  ラーメン革命 ロックンビリーS1 嶋崎順一
▲ 塚口「ロックンビリ―S1」。HP/ラーメン屋 嶋崎順一 Sのブログ
「昆布水つけ麺」も、自分が好んで使う細い麺をつけ麺にすると、たちまち麺がくっついてしまうので、どうしたらそれが解消できるか考えて試作している時に出来上がったものだという。

まさしく、嶋崎さんは「直感する」「創造する」「変貌する」ラーメン界の天才ではなかろうか。
PAGE 6
山本益博 LEON.JP  ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

山本益博 YouTube  MASUHIROのうまいのなんの!

山本益博さんのYouTubeが好評稼働中!

日本初の料理評論家、山本益博さんが、美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい! をテーマに、「食べる名人」を目指します。どうぞご覧ください!
YouTube/MASUHIROのうまいのなんの!

「山本益博のラーメン革命!」、他の記事はこちらから!
PAGE 7

登録無料! 買えるLEONの最新ニュースとイベント情報がメールで届く! 公式メルマガ

登録無料! 買えるLEONの最新ニュースとイベント情報がメールで届く! 公式メルマガ

この記事が気に入ったら「いいね!」しよう

Web LEONの最新ニュースをお届けします。

SPECIAL

    おすすめの記事

      SERIES:連載

      READ MORE

      買えるLEON

        「ロックンビリ―S1(スーパーワン)」店主・嶋崎順一さんが天才である所以とは? | グルメ | LEON レオン オフィシャルWebサイト