• TOP
  • GOURMET
  • ラーメンは本店か支店か問題。それにしても、秋葉原の「青島食堂」は立派である!

2024.09.22

【第61回】 長岡「青島食堂」と秋葉原「青島食堂」

ラーメンは本店か支店か問題。それにしても、秋葉原の「青島食堂」は立派である!

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博 編集/森本 泉(Web LEON)

日本初の料理評論家、山本益博さんが、B級グルメから一流の料理へと変貌を遂げつつある街のラーメンに注目し、自ら実食リポートする連載です。
山本益博 ラーメン革命! WebLEON  青島食堂

私の本店ファースト主義は筋金入り⁉

ラーメンの本店と支店の話をする前に、お話したいフランス料理のエピソードがある。今から60年ほど前、1964年の東京オリンピックが開催された年に、銀座数寄屋橋交差点のソニービルの地下にパリの「マキシム」の支店がオープンした。地階にある駐車場から店内に入るとアールヌーヴォーの内装で、パリのコンコルド広場近くのロワイヤル通りにある「マキシム」の雰囲気そのままのレストランが再現されたと言われ、話題を呼んだ。
私が初めて銀座の「マキシム」へ出かけたのは、パリの本店を訪れた後の1975年で、どうしても、支店に出かけるまえに本店で食事したかった。はじめに支店に出かけてがっかりして、本店へ行く機会を失ってしまうのを避けたかったからである。
PAGE 2
山本益博 ラーメン革命! WebLEON  青島食堂
▲ 本題は「青島食堂」で、こちらは新潟県長岡市の宮内駅前にある本店。
その後、80年代後半に、六本木のフランス料理店「イゾルデ」に、人気急上昇の料理人、ミシェル・ブラス氏がやってきた。「ミシュラン」では3つ星ではなかったが、対抗馬の「ゴエミヨ」では当時イチ推しの、フランスの田舎ライヨールにあるオーベルジュのシェフだった。
私は今度フランスへ出かけたら、絶対に出かけたいと思っていた一軒で、仲間から、六本木の「イゾルデ」での料理フェアに誘われたのだが、その時、きっぱりと断った。もし、「イゾルデ」でのミシェル・ブラスの印象がよくなかった時、ライヨールへでかける気持ちが萎えてしまうのではなかろうかと考えたからである。
その後、1990年にライヨールの「ミシェル・ブラス」へ出かけ、「ガルグイユ」という野菜料理に感動し「21世紀のフランス料理の扉を開く料理」というフレーズが浮かんだほどだった。

ことほど左様に「本店ファースト主義」が、今でも私の心の内を占領している。
PAGE 3

不本意ながら秋葉原の支店を先に訪れることに

さて、これからが本題。ご存知「青島食堂」である。新潟・長岡に本店があり、東京・秋葉原に支店があるラーメン店。

たまたま新潟・三条に友人がいて、長岡の「青島食堂」へは自分が案内しますと、申し出てくれていたのだが、私は「ラオタ」ではないので、ラーメンを食べるだけに長岡に出かける勇気がない。燕三条や新潟にある料理店と掛け持ちで出かけたいと念じていたところ、時間がみるまに過ぎて行って、とうとう待ち切れず、本意ではないが支店の秋葉原の「青島食堂」へ先に出かけることになった。
山本益博 ラーメン革命! WebLEON  青島食堂
▲ 「青島食堂」秋葉原店の厨房。
PAGE 4
これが「吉」と出た!とても美味しかった!

私のメモには次のように書いてある。

秋葉原「青島食堂」22.10.10
生姜醤油ラーメン 生姜の香りも醤油の味も突出していない、素晴らしいスープ。
麺を量るときだけ秤を使うが、そのほか、大なべから麺を取り出すのに平ざるで手加減、たれもスープも目分量、それでいて一発で決める
プロフェッショナル。
チャーシューメン900円:乱切りの小ぶりのチャーシューが山盛り。
山本益博 ラーメン革命! WebLEON  青島食堂
▲ 秋葉原店の「青島ラーメン」。
PAGE 5

なんでも手加減、目分量を頼りに仕事を進めてゆくのだが

翌2023年5月7日に再訪したが、感想はまったく変わらなかった。それから、機会を狙って長岡へ出かけたのが、今年の8月末だった。

昼に友人と新潟にできたばかりの、新発田から進出してきた「登喜和鮨」で鮨をつまみ、それから長岡へ移動、心弾む気持ちで「青島食堂」本店へ向かった。ただし、行列必至の店なので、真夏でも並ぶことを覚悟しなくてはならない。
山本益博 ラーメン革命! WebLEON  青島食堂
▲ 今年の8月末、ついに「青島食堂」本店を訪れた筆者。
PAGE 6
友人から長岡市内には「青島食堂」が4軒もある(さらに新潟にも2軒)と聞かされていたが、まずは本店ということで、宮内駅前にある「青島食堂」へ。なんと、夕方ということもあるが、行列がない。これ幸いと、券売機で「青島ラーメン」を買い求め、カウンター席に着いた。

お客の様子でだろうか、厨房内はおばさんがひとりでこなしている。それが、すべて手慣れた手順、手際の良さで進んでゆく。大なべで麺を茹で上げる。どんぶり内のスープを整えたところへ麺を入れて仕上げる。小さなチャーシューをいくつも盛り込むまで、なんでも手加減、目分量を頼りに仕事を進めてゆく。これが「青島食堂」の流儀なのだろう。支店を先に訪れて、本店を後回しにするのも悪くはないもんだ、ということを痛感した。
山本益博 ラーメン革命! WebLEON  青島食堂
▲ 本店の「青島ラーメン」。
PAGE 7
山本益博 ラーメン革命! WebLEON  青島食堂
▲ 本店の厨房の様子。とにかく手際が良い。
食べ終えて、友人に「とても美味しかった!」と伝えると、「実は、私のお気に入りは、この近くにある『青島食堂』曲新町店なんです」と返された! いつかきっと、まだほかにある「青島食堂」へ足を運ばなくてはならない。

それにしても、秋葉原の「青島食堂」は立派である!
PAGE 8
山本益博 LEON.JP  ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

山本益博 YouTube  MASUHIROのうまいのなんの!

山本益博さんのYouTubeが好評稼働中!

日本初の料理評論家、山本益博さんが、美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい! をテーマに、「食べる名人」を目指します。どうぞご覧ください!
YouTube/MASUHIROのうまいのなんの!

「山本益博のラーメン革命!」、他の記事はこちらから!
PAGE 9

登録無料! 買えるLEONの最新ニュースとイベント情報がメールで届く! 公式メルマガ

登録無料! 買えるLEONの最新ニュースとイベント情報がメールで届く! 公式メルマガ

この記事が気に入ったら「いいね!」しよう

Web LEONの最新ニュースをお届けします。

SPECIAL

    おすすめの記事

      SERIES:連載

      READ MORE

      買えるLEON

        ラーメンは本店か支店か問題。それにしても、秋葉原の「青島食堂」は立派である! | グルメ | LEON レオン オフィシャルWebサイト