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2024.11.24

【第65回】 三ノ輪「トイ・ボックス」と荻窪「五稜郭」

ラーメンに革命が起きている! と衝撃を受けた一杯とは?

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博 編集/森本 泉(Web LEON)

日本初の料理評論家、山本益博さんが、B級グルメから一流の料理へと変貌を遂げつつある街のラーメンに注目し、自ら実食リポートする連載です。
山本益博 ラーメン革命! WebLEON  トイ・ボックス 五稜郭

「トイ・ボックス」の醤油ラーメンを契機に東京中のラーメンを食べ始めた

この秋「第25回東京ラーメン・オブ・ザ・イヤーTRYラーメン大賞2024-2025」(講談社)が発売された。
今回の雑誌の巻頭言には、次のように書かれている。

読者の皆様、ありがとう! 祝TRYラーメン大賞25周年 2000年というミレミアム元年に、情報誌『TOKYO★1週間』で産声を上げた「TRYラーメン大賞」企画。「東京で一番旨いラーメンを決めようじゃないか」という呼びかけのもと、“TRY”は始動しました。

発足背景には、2つの理由がありました。1つ目は、「麵屋武蔵」『青葉』『くじら軒』といった、後に“96年組”と言われる店が登場し、ラーメン業界が新たな時代の幕開けを迎えたこと。2つ目は、「美味しいラーメンを食べたいという需要はあるのに、それを教えてくれる媒体がなかった(少なかった)」ことでした。

25年前は今のようなSNSやYouTubeなどがない時代。「ならば自ら探し回り、真剣に議論し、格付けして発表しようじゃないか」と、旗揚げをしたのです。

第1回は、「TRY大賞」を『麵屋武蔵』、「TRY新人大賞」を『ぜんや』が受賞。見事、TRYは大人気企画となり、『TOKYO★1週間』の看板企画となりました。

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山本益博 ラーメン革命! WebLEON  トイ・ボックス
▲ 三ノ輪「トイ・ボックス」の醤油ラーメン。
この雑誌の表2にTRY大賞とTRY新店大賞の一覧が掲げられているのだが、それを見ると、「麵屋武蔵」のほか「らーめん天神下 大喜」「中華蕎麦とみ田」「らぁ麺飯田商店」「ラーメン屋トイ・ボックス」など、錚々たる店が名を連ねている。TRY新店大賞を見れば、「ぜんや」のあとに「渡なべ」「麺や七彩」「らぁ麺やまぐち」「中華そばしば田」「宍道湖しじみ中華蕎麦琥珀」「らぁ麺や嶋」「Ramen FeeL」など、これまた、いまやラーメン界にその名をとどろかす面々が選ばれている。
そして、今年の「TRY大賞」は2021-2022年から三連覇中だった三ノ輪の「トイ・ボックス」が四連覇を達成し、「中華蕎麦とみ田」「飯田商店」と並び、殿堂入り店となった。
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▲ こちらも殿堂入りした「飯田商店」の醤油ラーメン。
「トイ・ボックス」はしょう油部門第1位、しお部門第3位、みそ部門第1位と、圧倒的な高評価を得ての受賞だった。わたしも、「トイ・ボックス」の醤油ラーメンで「寝ている子を起こされた」状態になり、「いま、ラーメンに美味しい革命が起こっている!」と、それから間を開けることなく、東京中の優れたラーメンを片っ端から食べ始めたのだった。
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ミシュランがようやく評価した荻窪「五稜郭」の別格塩ラーメン

山本益博 ラーメン革命! WebLEON  トイ・ボックス 五稜郭
▲ 「トイ・ボックス」の店主・山上さん(左)とワンタン塩ラーメン。
私が「トイ・ボックス」へ出かけたきっかけは、「TRY大賞」ではなく、「ミシュラン」の東京篇を見てからのことだった。その「ミシュラン東京」の2025年版が先日発表になった。

私はこのところ、新年度版の「ミシュラン」が出版されると、まずは新しい3つ星のページを開く。昨年度は銀座の鮨屋「青空(はるたか)」だったが、今年は丸の内のフォーシーズンホテルにあるフランス料理店「セザン」だった。
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▲「トイ・ボックス」の味噌ラーメン。
その後に開くのが「ラーメン」の索引ページである。新たにビブグルマンとして掲載された1軒に「函館塩ラーメン 五稜郭」があり、とてもうれしくなった。なぜなら、荻窪のラーメン屋の中で「五稜郭」の塩ラーメンは傑出しているのに、昨年度版では、同じ荻窪にある「there is ramen」がビブグルマンとして登場したからである。
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本益博 ラーメン革命! WebLEON  五稜郭
▲ 荻窪「五稜郭」の塩ラーメン。
本益博 ラーメン革命! WebLEON  五稜郭
▲ 「五稜郭」の店頭。
「塩ラーメン」を標榜するラーメンは山ほどあるが、そのほとんどは「塩味」のラーメンである。食べながら塩気を感じさせては、日本料理のお椀など失格である。「塩」を使いながら、「塩分」を感じさせない「塩ラーメン」こそ、本物の「塩ラーメン」と呼んでよい。「五稜郭」の「塩」の素には昆布があり、この店でしか味わえない「塩ラーメン」と言ってよい。あと、「塩ラーメン」の傑作といえば、荏原中延「中華そば 多賀野」の沖縄粟国の塩を巧みに使った「粟国の塩そば」も素晴らしい。食後、まったく喉が渇かないラーメンである。
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本益博 ラーメン革命! WebLEON  多賀野
▲ 荏原中延「多賀野」の粟国の塩そば。
ところで、「ミシュラン」のラーメン店の掲載は、出入りが激しい。新しいラーメン屋が数店選ばれたかとおもうと、いつのまにか常連店が姿を消してしまっている。その中にあって、「ミシュラン」がラーメン店を取り上げ始めた初年度から、いまだに掲載されているのが「トイ・ボックス」である。これは、目立たないことだが「快挙」と言ってよい。
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山本益博 Web LEON ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

山本益博 YouTube  MASUHIROのうまいのなんの!

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日本初の料理評論家、山本益博さんが、美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい! をテーマに、「食べる名人」を目指します。どうぞご覧ください!
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