• TOP
  • GOURMET
  • 穏やかで優しい味噌の香りが漂う「味噌ラーメン」はどこにある?

2025.02.09

【第70回】 大人のラーメンを探して「味噌」編

穏やかで優しい味噌の香りが漂う「味噌ラーメン」はどこにある?

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博 編集/森本 泉(Web LEON)

日本初の料理評論家、山本益博さんが、B級グルメから一流の料理へと変貌を遂げつつある街のラーメンに注目し、自ら実食リポートする連載です。
山本益博 ラーメン革命! WebLEON  味噌ラーメン

ラーメン界もメガ盛り、激うま、爆食、早喰いブームに侵されている

近頃、TVを見ていると、メガ盛り、激うま、爆食、早喰いの大流行り。調理された料理や料理人に対するリスペクトのかけらもない。

「食べる」ことで最も大切なひとつ、味わうという行為が欠けている、というか、そもそもそんなこと眼中にない。ギャル曽根さんなど、食べ方がとても美しいのに、「爆食」「早喰い」に毎度参加させられ、とても惜しい。なんてこった!

そして、食レポの感想といえば「甘い」「柔らかい」「とろけそう」と幼児の味覚の反応となんら変わらない。
現在のラーメン界も、この影響を少なからず受けていると言わざるを得ない。

盛り付けがどんどん足し算になり、その都度、味の濃さが増し、素朴なラーメンから遥か彼方に飛び出していっている。そして、醤油ラーメンと言えば、ひと口目から醤油の味がし、塩ラーメンと言えば、ひと口目から塩味が伝わってくるものをよしとする風潮。味噌ラーメンに至っては、はじめのひと口から塩気の鋭い濃厚味噌スープを味わう羽目になる。
PAGE 2

私の満足する「味噌ラーメン」は「八乃木」以外にない

山本益博 ラーメン革命! WebLEON  味噌ラーメン
▲ 発寒「八乃木」の「みそラーメン」。
味噌ラーメンファンからお𠮟りを受けるのを承知で、ラーメン評論家やラオタの皆さんからそっぽ向かれることを覚悟のうえで申し上げよう。いまのところ、私の満足する「味噌ラーメン」は、北海道・札幌近郊発寒の「八乃木」以外にない。あとはすべて、及第点に届かない味噌ラーメンである。
この正月、味噌ラーメンの本場札幌で「味噌ラーメン」の人気店3軒を回ってきた。はじめに出かけた狸小路「K」は、丁寧に刻まれたねぎが山盛りになって運ばれてきた。もう、見た目からして食欲減退である。この山盛りになったねぎをどうしろというのだろうか? 麺とスープの量に比べて、明らかにバランスを欠いている。SNS向けの見た目勝負の味噌ラーメンと思う。寒い中、列に並んだ甲斐がない。
PAGE 3

味噌味が口に残るだけで「コク」は感じられない

翌日は南6条「S」。「越後(辛味噌)」「信州(コク味噌)」があり、「信州」を選んだ。黒のどんぶりにチャーシューとねぎが浮かび、バランスは悪くない。まずはスープをいただくと、味噌味が強くしょっぱい。食べ進めても、味噌味が口に残るだけで、「コク」はどこにも感じられない。どうしてこんなに人が並ぶのだろうと不思議でならなかった。
3日目は、豊平にある「麵屋S」。かつて、一度だけ評判を聞きつけて出かけたが、期待外れで、私の視界からは消えていたのだが、いや待て、今一度出かけてみようと足を運んだ。長時間待つこと承知で出かけると、開店時間前から店を開けていたおかげで、すぐに座ることができた。雪が降る寒空に客を長く待たせまいとするこの姿勢は素晴らしい。だが、目の前に運ばれてきた味噌ラーメンの味わいは、以前とまったく変わらなかった。
東京に戻ってくると、「デニーズ」で湯河原「飯田商店」の味噌ラーメンが食べられるというので、早速出かけた。スープをひと口いただくと、味噌味の濃いのなんの! 三口がやっとだった。店でのレシピの間違いだったのだろうか?
山本益博 ラーメン革命! WebLEON  味噌ラーメン
▲ 「デニーズ」の「飯田商店」の店主、飯田将太氏が監修する「味噌らぁ麺~五重(いつつがさね)の味噌」。
PAGE 4
それではと、人気の高い初台「味噌らぁめん 一福」へ出かけた。店内にはラーメン界の錚々たる作り手、食べ手の色紙が所狭しに並んである。券売機で買い求めたのは「味噌らぁめん」。シンプルな盛り付けには好意を持ったが、味は味噌味が後に残る味わい。

「ごまみそずい」というメニューが気になったので、翌週再訪して注文したが、胡麻が味噌を中和させるかと思いきや、辛味が添えられて、担々麺を思い起こさせる味だった。食べおわりそうになるころ、ご飯が運ばれてきた。一緒に食べたが、さほど効果はなかった。
山本益博 ラーメン革命! WebLEON  味噌ラーメン
▲ 初台「味噌らぁめん 一福」の「味噌らぁめん」。
よく、「味噌ラーメン」を売り物にする店で、「うちの味噌ラーメンはごはんに合います」という看板を添えてあるところがある。食べてみると、「ごはんなくては食べられない味噌ラーメン」がほとんどである。
PAGE 5

「酸っぱい」のは苦手なのになぜ「しょっぱい」のが恋しいのか

あとは、2025年第25回「TRYラーメン大賞」TRY名店部門みそ1位三ノ輪「ラーメン屋 トイ・ボックス」、TRY新店部門みそ1位北千住「らぁ麺屋のさかいさん」へ出かけるしかない。なかでも「らぁ麺屋のさかいさん」には「やさしいみそらぁ麺」というメニューがある。
山本益博 ラーメン革命! WebLEON  味噌ラーメン
▲ 三ノ輪「ラーメン屋 トイ・ボックス」の「味噌ラーメン」。
山本益博 ラーメン革命! WebLEON  味噌ラーメン
▲ 北千住 「らぁ麺屋のさかいさん」の「やさしい味噌らぁ麺」。
果たして、どちらも後味に味噌味が残るものだった。評判の江戸川橋近くの「Ⅿ」も、上荻の「F」も戴いたが、どちらも濃厚激うま派で、味噌スープが塩辛いばかりである。油脂が多ければ多いほど、中和させるために塩が必要となる。それほど、みんな「酸っぱい」のは苦手なのに「しょっぱい」のが恋しいのだろうか?
塩は素材から旨味を引き出す立役者だが、使い方を誤ると素材の持ち味を台無しにするだけである。

どなたか教えて欲しい。出汁が利いた美味しい味噌汁を連想させるような、穏やかで優しい味噌の香りが漂う「味噌ラーメン」を食べさせてくれる店を!
PAGE 6
山本益博 Web LEON ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

山本益博 YouTube  MASUHIROのうまいのなんの!

山本益博さんのYouTubeが好評稼働中!

日本初の料理評論家、山本益博さんが、美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい! をテーマに、「食べる名人」を目指します。どうぞご覧ください!
YouTube/MASUHIROのうまいのなんの!

「山本益博のラーメン革命!」、他の記事はこちらから!
PAGE 7

登録無料! 買えるLEONの最新ニュースとイベント情報がメールで届く! 公式メルマガ

登録無料! 買えるLEONの最新ニュースとイベント情報がメールで届く! 公式メルマガ

この記事が気に入ったら「いいね!」しよう

Web LEONの最新ニュースをお届けします。

SPECIAL

    おすすめの記事

      SERIES:連載

      READ MORE

      買えるLEON

        穏やかで優しい味噌の香りが漂う「味噌ラーメン」はどこにある? | グルメ | LEON レオン オフィシャルWebサイト