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2025.03.09

【第72回】 いま一度、トリュフのラーメン

残念ながら、評価できる「トリュフ」ラーメンはいまだ出現していない

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博 編集/森本 泉(Web LEON)

日本初の料理評論家、山本益博さんが、B級グルメから一流の料理へと変貌を遂げつつある街のラーメンに注目し、自ら実食リポートする連載です。
ラーメン革命! 山本益博 トリュフ ラーメン

本物のトリュフとは味も香りも大違いのトリュフ製品が横行

2月にフランス、ベルギーへ旅をして、トリュフの料理を満喫してきた。トリュフは、鶏肉、豚肉、卵、それに牛乳、クリーム、フォアグラといった油脂、また、米、小麦粉、さらにじゃがいも、根セロリなどの地下茎の植物と極めて相性がいい。樫とも柏ともいえるシェーヌという樹木の周囲の土の中に自生しているから、人間では見つけられない、豚や犬を使って探し出す冬にしかいただけない黒いダイヤモンドと呼ばれる茸の一種である。
代表的な料理はフォアグラのテリーヌにトリュフを添えたもの。

今から50年ほど前は、日本では輸入された缶詰や陶器に詰められたフォアグラしかなく、脂が酸化したフォアグラの中央に小さな消し炭のような黒い塊があり、それがトリュフだった。香りも味も何もせず、どうしてこれが「世界の三大珍味」のひとつなのかと思ったほどである。
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ラーメン革命! 山本益博 トリュフ ラーメン
▲ 「ランブロワジー」の黒トリュフ(左)と「トリュフとホタテ菊芋」(右)。
それから半世紀、今では、冬が到来すれば、フランスから採れたてのトリュフが空輸され、それどころか年中、トリュフオイルにトリュフ塩、そのトリュフを応用してトリュフのチップスまでコンビニで売っている。さらにいうと、南半球のオーストラリアから日本の夏にフレッシュのトリュフまで届く時代になった。

本物のトリュフが知られるようになった半面、ひと昔前の香りが乏しいサマートリュフやオータムトリュフが駆逐されたのは幸いだが、本物のトリュフとは味も香りも大違いのケミカルなオイル、塩、チップスが横行し、それがトリュフだと勘違いする食いしん坊が増えることには耐えがたい思いがする。
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ラーメン革命! 山本益博 トリュフ ラーメン
▲ トリュフのパイ包み。

評判の貝出汁ラーメンを色々食べてみたのだけれど

ラーメンにトリュフが添えられるようになって、すでに久しい。ラーメン界で初めて「ミシュラン」の1つ星に輝いた「蔦」がその嚆矢と言えようか。それを真似てか、あちこちのラーメンにトリュフの薄片やトリュフオイルが使われ出したが、残念ながら、評価できる「トリュフ」ラーメンはいまだ出現していない。
例えば、トリュフオイルを使うことを一切やらず、トリュフの薄片を添えることもせず、豚や鶏の挽肉とトリュフの微塵切りをあわせてワンタンにするというのはいかがだろうか? 鶏出汁と麺とトリュフのワンタン、想像しただけで絶妙の相性ではないか。
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ラーメン革命! 山本益博 トリュフ ラーメン
▲ 我が家のトリュフのオムレツ(左)とトリュフの炒飯(右)。
または、フレッシュのトリュフと生の卵を一緒に容器に詰めておく。3日4日もすると、卵の黄身にトリュフの妖艶な香りが移っていく。

これでオムレツをつくると、見事なトリュフのオムレツが出来上がるのだが、ラーメンの場合、半熟卵に茹でると、半熟卵の半身からトリュフの香りが立ち昇り、一層高貴なラーメンになること請け合いである。
フランスのトリュフのシーズンは12月、1月、2月の真冬だが、近年、南半球オーストラリアから輸入されてくるフレッシュトリュフの季節は7月、8月である。フランス産に比べて価格も妥当だから、冷やし中華の具に、このトリュフの半熟卵を添える店の出現に期待したい。
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札幌ラーメン 満龍 港北
▲ 横浜・センター南の「札幌ラーメン満龍」
追記:この連載で「味噌ラーメン」を取り上げたところ、読者からメールで首都圏の美味しい味噌ラーメンの店を教えていただいた。

横浜・センター南の「札幌ラーメン満龍」がそれで、早速出かけて行ったところ、味噌味が強くなく、一味唐辛子が利いた穏やかな味噌風味のスープが極めて美味しく、そのスープを飲み干した。

探せばあるもので、味利きの読者に感謝せずにはおれない。本当に「ありがとうございました!」
札幌ラーメン 満龍 港北
▲ 「札幌ラーメン満龍」の味噌ラーメン。
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山本益博 Web LEON ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

山本益博 YouTube  MASUHIROのうまいのなんの!

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日本初の料理評論家、山本益博さんが、美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい! をテーマに、「食べる名人」を目指します。どうぞご覧ください!
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「山本益博のラーメン革命!」、他の記事はこちらから!
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