2025.03.09
【第72回】 いま一度、トリュフのラーメン
残念ながら、評価できる「トリュフ」ラーメンはいまだ出現していない
日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。
- CREDIT :
文・写真/山本益博 編集/森本 泉(Web LEON)

本物のトリュフとは味も香りも大違いのトリュフ製品が横行
今から50年ほど前は、日本では輸入された缶詰や陶器に詰められたフォアグラしかなく、脂が酸化したフォアグラの中央に小さな消し炭のような黒い塊があり、それがトリュフだった。香りも味も何もせず、どうしてこれが「世界の三大珍味」のひとつなのかと思ったほどである。

本物のトリュフが知られるようになった半面、ひと昔前の香りが乏しいサマートリュフやオータムトリュフが駆逐されたのは幸いだが、本物のトリュフとは味も香りも大違いのケミカルなオイル、塩、チップスが横行し、それがトリュフだと勘違いする食いしん坊が増えることには耐えがたい思いがする。

評判の貝出汁ラーメンを色々食べてみたのだけれど

これでオムレツをつくると、見事なトリュフのオムレツが出来上がるのだが、ラーメンの場合、半熟卵に茹でると、半熟卵の半身からトリュフの香りが立ち昇り、一層高貴なラーメンになること請け合いである。

横浜・センター南の「札幌ラーメン満龍」がそれで、早速出かけて行ったところ、味噌味が強くなく、一味唐辛子が利いた穏やかな味噌風味のスープが極めて美味しく、そのスープを飲み干した。
探せばあるもので、味利きの読者に感謝せずにはおれない。本当に「ありがとうございました!」


● 山本益博(やまもと・ますひろ)
1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

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