3万円の「sio贅沢弁当」、その本当に贅沢な内容とは？

新型コロナウイルス禍は飲食業界にも大きな変化をもたらしました。休業を余儀なくされたり、営業時間を短縮したり、なかには閉店せざるを得なかった店もあります。そんななか、多くの店や飲食業界で働く人々がテイクアウトを始めたり、期間限定の酒販免許を取得するなど、自宅にいながらプロの味を楽しめるプランをスタートさせました。

モダンフレンチの人気店「sio」の鳥羽周作シェフもいちはやくアクションを取ったひとり。春からお弁当やバインミーのテイクアウト販売を始めたほか、「おうちでsio」としてレシピを無料で公開。自宅で「sio」の味を楽しめるとしてTVでも取材されるなど大きな話題を呼んでいます。

その鳥羽シェフの熱意にうたれた日本酒の蔵元たち3人が、「sio」のお弁当とコラボを実現。その完成度の高さから「贅沢弁当」の名前で食通たちからも好評を得ていた2段重ねのお弁当に、新政・而今（じこん）・仙禽（せんきん）というカリスマ的な人気をもつ日本酒の３蔵が協力を申し出て、今回のスペシャルタッグが実現しました。

ではまずこの「贅沢弁当」にセットされる３蔵のお酒をご紹介しておきましょう。

新政No name（新政酒造／秋田）
自社圃場である秋田市鵜養（うやしない）地区にて無農薬・無肥料で栽培されたお米を原料に、生酛造り、木桶仕込み、酵母無添加仕込みで醸造。フレッシュな酸とスムーズな飲み口が特徴的。「これは書かないで」と言われたのですが、実は新政のなかでも最上位に位置する別銘柄のお酒が使用されています。鳥羽シェフいわく「料理に寄りそう酒」。

而今 純米吟醸 東条山田錦2019（木屋正酒造／三重）
兵庫県特A地区東条産山田錦を使用。東西に抜けた山間の谷あいで風通しがよく、昼夜の寒暖差が大きい東条地区で栽培される山田錦はとくに大粒で最高の酒米となるのだそう。強い旨味が特徴的でアルコール度16％と今回のセットのなかではもっとも力強いタイプ。鳥羽シェフいわく「料理の旨味と香りのボリュームを受け止める酒」。

仙禽 オーガニック・ナチュール2020（せんきん／栃木）
鳥羽シェフが日本酒好きになったのはこの仙禽との出会いがあったからだとか。無農薬栽培の古代米「亀の尾」を使用し、ほとんど米を磨かずに、蔵に住み着く天然酵母により醸されたお酒はまさに200年前のスタイルを再現したもの。その味わいはフルーティでお米の甘みも感じられるもの。鳥羽シェフいわく「料理を華やかにしてくれる酒」。

「贅沢弁当」は冷えてもそのままおいしくいただける仕様で、自宅で開ければそのまま食べることができます。温めなおしたり、盛り付けなおしたりするのは意外に面倒くさいものですよね……。

「贅沢弁当」には鳥羽シェフによる料理の解説つき。それによると一の重には「蟹と根セロリ 生春巻き」に始まり、「黒鮑 コンソメ煮」に終わる13種のおかずが詰められていることがわかります。この順で食べてみましょう。

おっと、食べ始める前に3種の日本酒をグラスに注いでおきます。どれがどれだか、わからなくならないように付箋で場所を決めておきました。説明書に、鳥羽シェフにおすすめペアリングも記載されていましたが、実際のマリアージュを自分の舌でも試してみたいですもんね。

さて、こちらが一の重です。20㎝×10㎝余りのお重におかずがぎっしり。ボリュームは1～2人前とのことでしたが、今回はふたりでいただき、お酒とともにほどよい量でした。

では、一部のおかずをおすすめペアリングのお酒とともにご紹介します。

写真にはないのですが、兵庫県明石の「金楠水産」の茹で蛸を使った酢だこや、かぼちゃサラダ、キャロットラぺ、ほうれん草と春菊のごま和えなど、いわばお弁当の定番といえる料理もすべて秀逸。それらを合間に口にすることで軽やかなリズムが生まれ、右手で箸を、左手で酒器を操りながら、オーケストラを指揮しているような心持ちになりました。

二の重には「だめだこりゃ～なすき焼き まさかの松茸のせ」。「今回は松茸だけじゃなく、ウニも乗せちゃったよ」と鳥羽シェフが笑っていましたが、たしかに、かなりのボリュームでウニが鎮座しています。

このすき焼き重は「冷めてもおいしくそのまま食べられるように」との心配りから、ごはんは酢飯になっています。松茸の香り、牛脂の甘味、ウニの磯の風味があいまって、もう満腹なのに箸が止まらない……。

さて、この「贅沢弁当」の価格は3万円（税込）。ちょっと高いと思われますでしょうか？　でも13種の前菜にメインのすき焼き重がついて、さらに新政・而今・仙禽のスペシャルな日本酒が3種で900ml（300ml×３）セットになっているのであればいかがでしょう。今回はふたりでいただきましたが、ともにお腹いっぱいになり、ほろ酔いになるちょうどよいバランスでした。なにより、日本酒がこんなにさまざまなお料理と合うのだと、日本酒のことがもっともっと好きになったことに感謝。

お弁当はBENTOとして欧米でも広まっていますが、このレベルのBENTOはいま世界のどこにもないでしょう。まさに世界ナンバーワンのBENTO、機会あらばお試しあれ。