「完璧すぎるウイスキー」として世界のファンを魅了するシングルモルト「グレンモーレンジィ」から新感覚の味わいの限定ウイスキーが発売されましたが、その味わいはとってもユニーク! その名も「グレンモーレンジィ ケーク」です。ケーク=cakeってことは、その味は甘いの? とスコットランドの最高蒸溜責任者であるビル・ラムズデン博士に話を聞きました。
1. スコットランドでもっとも背の高いポットスチル(蒸留器)
「グレンモーレンジィ」では、5.14mにも及ぶスコットランドでもっとも背の高いポットスチル(蒸留器)を使用。重たいアルコール蒸気はこの長いポットスチルを登りきることができないため、軽やかなアルコール蒸気の中から、フルーティでフローラルな成分だけが抽出できます。結果、「グレンモーレンジィ」には華やかなアロマとエレガントな味わいが生まれるというわけ。
「グレンモーレンジィ」はウイスキーを熟成させる樽にも並々ならぬこだわりをもっています。その樽選びは、理想的な通気性を持つホワイトオークを、年輪の密集度を目で数えて選りすぐるところから。2年かけてゆっくりと自然乾燥をさせた後、バーボンメーカーに貸し出して使ってもらうことで、タンニンなどピュアな味わいに不要な要素を取り除きます。
こうしてようやくデザイナーカスクと呼ばれる「グレンモーレンジィ」のためだけのスペシャルな樽が完成するわけですが、そのこだわり抜いた樽を、贅沢にも2回までしか使わない(通常のウイスキーメーカーでは3回以上使用します)のだとか。このデザイナーカスクを使用することで、バニラのニュアンスが最大限に引き出され、スムースなテクスチュアに。
3.ミネラル豊かな硬水
「グレンモーレンジィ」は、スコットランドでも数少ない、硬水を仕込み水に使っている蒸留所。蒸留所が所有している「ターロギーの泉」から湧く水は、100年以上もの年月をかけて石灰岩と砂岩層で濾過され、ミネラルが豊富に含まれています。この硬水を仕込み水として使うことでクリーミーな質感、フルーティな味わいが生まれます。
さあ、ではいよいよ、ラムズデン博士、そして熟成担当者のブレンダン・マカロン氏に話を聞きます。
◆「グレンモーレンジィ ケーク」はどこから生まれた?
GLENMORANGIE(以下G):複雑で、ハチミツのような甘やかな香りに、ホワイトチョコレートや果実のニュアンスが幾重にも感じられる、まさにケーキのような魅力を持ったウイスキーです。
L:その甘やかさはどうやって生み出すのでしょうか?
G:まず重要なのは、10年熟成の「グレンモーレンジィ」を世界三大貴腐ワインとして知られるハンガリーのトカイワインのカスクに移し替えて、熟成させているということ。その期間? 数カ月ではなく、数年単位というところまでしかお伝えできないんですよね(笑)、あとはお察しください(ウィンク)。
その甘さの由来ですが、「グレンモーレンジィ」自体がミネラル豊かな硬水や、スコットランドでもっとも背の高いポットスチルを使用することから、元来フルーティさやフローラルさを持った素晴らしいウイスキーなんです。そこに、デザイナーカスクによってピーチやアプリコット、トロピカルフルーツの風味が加わります。さらに今回は、トカイというハンガリーのデザートワインを熟成させたカスクにわずかに残留する甘い風味が加わるのです。それらすべてのコンビネーションにより、この「グレンモーレンジィ ケーク」が生まれました。
このようにお話するとすごく甘い風味のように聞こえてしまうでしょうか? でも、この「グレンモーレンジィ ケーク」は単なる砂糖の甘さではなく、複雑な風味を持っているウイスキーなのです。その秘密は樽の素材であるオークにあります。ハンガリーのオークが、わずかにスパイスの風味をもたらし、すべてが素晴らしいバランスになるようなストラクチュア(構成)をもたらしてくれるのです。
L:いま新型コロナウイルスでみんな気分が鬱々としているし、このようなスウィートなウイスキーが必要かもしれません。
G:このプロジェクトは3、4年前からスタートしているので、リリースされる今年がまさかこんな状況(パンデミック)になっているとは誰も想像し得ないことでした。もちろんこのタイミングを狙ったわけではありません。でも、人々はより多くの時間を自宅で過ごすようになり、自宅でのそれぞれの楽しみ方を発見するようになりましたね。zoomなどオンラインのサービスで時間や経験を共有するようにもなりました。ですから、この「グレンモーレンジィ ケーク」についても、自宅でどんな楽しみ方をしているかなど多くのポジティブなフィードバックをいただいています。今年は本当に大変な年になりましたから、人々はこれまで以上に楽しい時間を求めているでしょう。「グレンモーレンジィ ケーク」がその一助になったらうれしいですね。
ドミニク・アンセル氏(以下D):まずウイスキーをテイスティングすることから始めました。「グレンモーレンジィ ケーク」のもつすべての風味やテクスチュア、レイヤーを明確にして、ワインをテイスティングするように分析をするんです。味わって、時間を置いて空気に触れさせて、また香りをとって、色調を確認して、実際に飲むまでの間に、また風味を確認して、という具合に。
そして、実際にひと口飲んでみると、このウイスキーの複雑さがわかります。ナッツやスパイス、バニラ、パイナップルの風味に、少し酸味がある、と自分なりに分析しました。これらの要素をすべて束ねていって、今回のケーキのレシピが誕生しました。ケーキが勝ちすぎてもいけないですし、ウイスキーを入れすぎて、ケーキの風味を消してもいけないから、パーフェクトなバランスを追求しました。
そうして、できたのがこのパイナップルケーキです。パッションフルーツやブラウンシュガー、もちろん「グレンモーレンジィ ケーク」も使っていますが、強くなりすぎないようにパーフェクトなバランスを大切にしました。少しの酸味と、少しの甘さ、糖蜜、スターアニス、パッションフルーツの風味……すべての要素が一体となって完璧なハーモニーを奏でるのです。
D:あんこは「グレンモーレンジィ ケーク」と合うと思いますよ。あんこは少し厚みのあるテクスチュアがあって、フローラルな香りもありますよね。シンプルにレイヤードケーキでもいいですし、ウイスキーと相性が良いと思いますね。
ここで閃きました。「グレンモーレンジィ ケーク」はどら焼きと合うんじゃないの⁉と。
思いついたら即行動。サンプルボトルをいただき、日本酒とペアリングさせる和菓子で有名な「和菓子薫風」のどら焼きを購入。とあるバーで特別にテイスティングさせていただきました。
「グレンモーレンジィ ケーク」との相性も……うん、悪くはなかった。でも、やはりレモンよりパイナップルとかもう少しトロピカルなフルーツのほうが相性がよかったかもしれません。ただ、あんこやスポンジとの相性は抜群でした。次回はクラシカルなホットケーキとも試してみたい。これから冬を迎え、どんどん長くなる夜には、「グレンモーレンジィ ケーク」とスイーツの極上ペアリングを探して、甘~い時間を過ごしてみてはいかがでしょう。
グレンモーレンジィ ケーク
希望小売価格/11,000円(税抜き)
容量/700ml
アルコール度/46度
熟成樽/バーボン樽、ハンガリー産トカイワイン樽
発売日/2020年11月4日(水)より順次限定発売
問い合わせ/MHD モエ ヘネシー ディアジオ(Tel.03-5217-9731)