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2017.06.20

カツサンドと芸者の意外なカンケイ、ご存じですか?

CREDIT :

文/秋山 都 写真/菅野祐二

洋食デートで使える昭和ウンチク4選

NHKの朝ドラ『ひよっこ』で主人公がカツサンドやコロッケを食べるなど洋食屋でのシーンが人気を呼んでいますが、洋食は昭和のご馳走でありました。

いま、我々が日常的に食べているカレーライスやオムライス、コロッケはみんな明治~大正期に、急速に西洋化する日本の食文化のなかで生まれてきたもの。
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ここでは昭和時代に生まれた比較的「若い」洋食を一挙紹介。どれもいまではファミレスでも食べられる人気料理ですが、その料理が生まれたオリジナルな場所で、その背景を知りながら口にするのは別格なおいしさ。さりげなくウンチクをはさんで、平成女子から「知らなかった~♡」を頂戴してください。

ウンチクその壱

「池波正太郎を知らなくてもチキンライスはおいしいよ」

【資生堂パーラー】

チキンライス 2160円(サービス料別)
チキンライス 2160円(サービス料別)
「銀ブラ」が大トレンドだった昭和20~30年代から人気を博していた「資生堂パーラー」。ご存知、洋食の名店ですが、故池波正太郎氏は株式仲買店の見習いだった13歳のころからひとりで通っていたとか。なかでも氏がこよなく愛したのは「ミートクロケット」と「チキンライス」。

「資生堂パーラーの存在を『おどろいたよ、チキンライスが銀の容れ物に入って出てくるんだぞ』と私に教えてくれたのも、井上留吉だった。(中略)私が注文したのが、チキンライスだったのがもちろんだが、つぎに行って「今日もチキンライス」と、いうと、山田君が、『今日はマカロニ・グラタンいかがです?』(中略)マカロニ・グラタンとミート・コロッケとチキンライス、この三品は、いまも【資生堂スタイル】の名称のもとに、メニューへ残っている」

(『むかしの味』池波正太郎/新潮文庫)

資生堂パーラーのチキンライスは家庭で作るそれとは異なり、具となるチキンや玉ねぎ、マッシュルームをトマトペーストやケチャップでじっくり煮詰め、そのソースを仕上げてからゴハンを炒め合わせる、というもの。

トマトの酸味がまろやかで、味の染みこんだチキンの旨みもしっかり味わえる、ご馳走チキンライスです。そしてもちろん今も変わらず「銀の容れ物」に入ってシズシズと登場します。
■資生堂パーラー 銀座本店

■資生堂パーラー 銀座本店

資生堂パーラー 銀座本店

住所/東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル4・5F
営業時間/11:30~21:30 (L.O.20:30)
定休日/月曜(月曜が祝日の場合は営業)
お問い合わせ/☎03-5537-6241

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ウンチクその弐

「カツサンドは芸者さんたちのためにできたんだって」

【井泉本店】

カツサンド(6切れ)900円、(9切れ)1350円
カツサンド(6切れ)900円、(9切れ)1350円
続きまして。カツサンドが生まれたのはここ、湯島の「井泉」。昭和5年の創業時、湯島天神門前からこの辺り一帯は粋な花街だったようで、その芸者衆の小さなおちょぼ口にもすっきり収まるように、初代女将が考案したのがこのカツサンドというわけです。

「初代女将は明治生まれながら朝ごはんはトーストに紅茶というハイカラな食生活。パンを見て、これをとんかつに合わせたらどうだろうとひょいと思いついたようですよ。あとはお得意だった芸者さんたちが支度の合間につまめるようになるべく小さくカットしたと聞いています」(女将の石坂桃子さん)

カツサンドはオーダーが入るごとにヒレカツを揚げるところから。揚げたてのとんかつをジュッとソースにひたし、バターを塗ったパンにサンド。キャベツも辛子もない、シンプルな作りですが、これがめっぽううまいんです。

元祖「お箸で切れるやわらかいとんかつ」だけあって歯切れもいいけれど、肉の旨味がしっとり感じられる「井泉」のカツサンド、間違いなく昭和美味遺産に(勝手に)認定させていただきます。
■井泉本店

■井泉本店

井泉本店

住所/東京都文京区湯島3-40-3
営業時間/11:30~20:50、日・祝11:30~20:30
定休日/水曜(水曜が祝日の場合は営業)
お問い合わせ/☎03-3824-2901

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ウンチクその参

「食欲ないの? そんなときこそシーフードドリアだね」

【ホテルニューグランド/コーヒーハウス ザ・カフェ】

いまやファミレスで定番のメニュー「ドリア」。その発祥はここ横浜のホテルニューグランドにありました。初代総料理長のサリー・ワイルが体調の悪かった外国人ゲストに、「何か消化がよく、喉に通りやすいものを」と考案した一品。

シーフードドリア 2300円(税サ別)
シーフードドリア 2300円(税サ別)
バターライスに海老のクリーム煮を乗せ、グラタンソースにチーズをかけてオーブンで焼いたところ大好評。「シュリンプドリア」としてニューグランドの名物となった次第であります。この「シーフードドリア」、バターの香り高く、たしかに食欲のないときでもついついフォークを手にしてしまう美味しさです。

ちなみにこのニューグランドはほかに「スパゲティナポリタン」「プリンアラモード」の発祥の地でもあります。もう1品、または食後のデザートのご参考にどうぞ。
■ホテルニューグランド/コーヒーハウス ザ・カフェ

■ホテルニューグランド/コーヒーハウス ザ・カフェ

ホテルニューグランド/コーヒーハウス ザ・カフェ

住所/神奈川県横浜市中区山下町10
営業時間/10:00~21:30(L.O. 21:00)
定休日/無休
お問い合わせ/☎045-681-1841

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ウンチクその四

「カツカレーは昭和の“全部入れ”だったらしいよ」

【銀座スイス】

最後に登場しますのは男子がみんな大好きな「カツカレー」。舞台は銀座の老舗洋食店「銀座スイス」であります。時は昭和23年ごろ。

常連客だった読売巨人軍の人気選手、千葉茂氏(ミスター長島の前の背番号3を背負っていた名二塁手)が試合前に訪れ「時間もないし、お腹もペコペコだから好きなものを一気に食べたい」と、好物のカレーライスにポークカツレツをトッピングした合わせ技がきっかけ。
「銀座スイス」の千葉さんのカツレツカレー 1400円
「銀座スイス」の千葉さんのカツレツカレー 1400円
銀座の洋食店といえばどこも比較的高級ですが、こちらはこのボリュームでなんと良心的な価格! ごはんだけで220グラムありますが、この量をほとんどの女子がぺろりと平らげるというから、おいしさもお墨付き。

ちなみに生たまご100円、ポークウィンナー100円、カニクリームコロッケ500円、目玉焼き200円など、さらに追加で乗せるトッピングも豊富に用意されています。

前出の千葉選手はダンディなことでも有名だったそうですが、元祖「ちょい不良オヤジ」にあやかって、あなたなりの平成の合わせ技カレーをお楽しみください。
■銀座スイス

■銀座スイス

銀座スイス

住所/東京都中央区銀座3-5-16
お問い合わせ/☎03-3563-3206
営業時間/11:00~21:00
定休日/なし

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