2017.06.22
上野の昭和レトロ喫茶「古城」はオトナのワンダーランド
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文/秋山 都 撮影/菅野 祐二
振り返って昭和。コーヒーを楽しむなら「カフェ」ではなく「喫茶店」でした。それも「純喫茶」。純喫茶の「純」っていったい何? 「純」があるなら「不純」もあったのでしょうか? 今に残る昭和喫茶を探して旅にでたところ、パンダ誕生に湧く上野に貴重な一軒が残っていました。
「不純」喫茶の時代があった!?
古城(東京・上野)
「同伴喫茶ってあったでしょ?え、知らないの? 同伴っていうのはカップルがふたりで行くと並んだ席に座らせてくれて、薄暗くて、飲み物一杯頼んだらあとは放っておいてくれるわけよ。だからお好きにガサガサ、ゴソゴソできるのよね」
もちろんこの「古城」はまったくの「純」喫茶。コーヒーや軽食を純粋に楽しむ場所ですが、その割にはインテリアが過剰にゴージャスです。
「これはヨーロッパに憧れていた私の父の普請道楽でね。大理石を壁に貼って、天井にはシャンデリア。モザイクにした床はとってもお金がかかって、当時1万円札を床に貼り付けているほどだと噂されたのよ」
昭和生まれの筆者ですら、自分の知らない世界へ来たような気分になるのです。まして平成女子をや。必ずやお楽しみいただけることでしょう。
手がちょっと触れるだけでドキドキした初心(と書いてウブ)な気持ちを思い出せるかもしれません。
あ、言い忘れました。こちらはいまどき珍しく「全席喫煙」です。愛煙家のみなさまもぜひどうぞ。
■喫茶 古城
喫茶 古城
住所/東京都台東区上野3-39-10 光和ビルB1F
営業時間/9:00~20:00
定休日/日曜・祝日
お問い合せ/☎03-3832-5675
まだまだある東京の昭和レトロ喫茶
名曲を楽しむ環境を優先するため、大声でおしゃべりしたり、携帯電話で話したりすることはできませんが、昭和25年当時のままの建物だけでも一見の価値ありです。
また、「ロッジ赤石」(東京・浅草)は昭和48年創業。ロッジと名が付くだけあって山小屋風の店内には、懐かしのインベーダーゲームや麻雀などゲームテーブルも健在。
朝4時まで営業していることもあって、飲食業界で働く人やタクシードライバーの憩いの場となっています。「ナポリタン」や「エビフライ」「カツ重」などなんでもおいしいからお腹をすかせて行くのが吉。
最後に昭和21年創業の「アンヂェラス」(東京・浅草)。池波正太郎、永井荷風、手塚治虫など多くの文化人に愛されたことで知られる店ですが、ここのおすすめはなんといっても懐かしいバタークリームのケーキ。
今のように生クリームが一般的でなかった昭和30~40年代、ケーキといえばこっくりとしたバタークリームでした。小さくてもボリュームと食べごたえ満点のケーキは、昭和男子なら誰もが「ああ、これこれ」と膝を叩く美味しさです。
ドアをくぐるだけで昭和へとタイムトリップできる昭和喫茶はまるでオトナのワンダーランド。いろんな町でひっそりと生きている昭和喫茶を探してみませんか。
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