2021.03.07
分厚いワインリストの解読法、教えます
5000本以上のコレクションを持つ日本随一のワインコレクターで、多い時は月に3桁の金額をワインに費やす超愛好家だからこそわかる、真にスマートで男女問わずモテるワイン道ってどんなもの? ちょっとイタいワインおたくや面倒くさい半可通など、周囲の反面教師からも学ぶ、ワインのたしなみ方入門です。
- CREDIT :
文・写真/吉川慎二 イラスト/Isaku Goto, オキモトシュウ(吉川慎二氏)
モテるワイン道入門~ワインリストはこう解読する
グラスか、ボトルか
ワインを飲むとなった場合の最初の分かれ道はグラスワインで済ませるのか、ボトルでオーダーするかです。あなたが安心かつ無難に乗り切りたいのであれば、最初から最後までグラスワインで通すのも一案。値段的にもお値打ちなワインがほとんどで、万一好みでなくても傷は浅いです。
しかし、ワイピとしてモテ値アップを目指すのであればぜひともボトルでのオーダーに慣れることをおすすめします。飲む量や人数にもよりますが、筆者や周りの上級ワイピの方々は、おおむね飲む本数=人数~人数+1本、すなわち2人ならば2~3本、4人ならば4~5本を「法則」としている強者が多いようです。
ボトルを選ぶ際、なんといっても重要なのはワインリストの分析です。ワインリストには、そのお店のワインに対する考えや姿勢がよく表れています。ワインリストを熟読せずにオーダーに進むのは、リクルート学生が会社案内に目を通さずに就職面接に臨むようなもの、ワイピとしては避けなければいけません。
ワインリストの形式もお店によってさまざまです。両面の見開きで一瞥可能なものから、本のように分厚いもの、最近はiPadのようなタブレット形式も見られます。お店によっては「ワインリストを作っていませんのでお好みをお伝え下さい」という場合もあります。筆者が何度経験しても圧巻だと思うのはパリにあるトゥールダルジャン本店です。世界一と言われる40万本超のコレクションをもとに作成されたリストは、まるで百科事典。ワイピなら何時間でも見ていたい垂涎モノです。
1. ワインタイプ
最初にアペリティフ(食前酒)で飲むことが多いシャンパーニュやスパークリング・ワインから始まり、白ワイン、赤ワイン、最後に甘口ワインなどの食後酒……と、食事の進行に沿った掲載順。
2. 国・生産地・生産地区
フランス、イタリアなど国ごとに分類。さらに同じフランスでもボルドー、ブルゴーニュなどの生産地、それでも分類しきれない場合は地区や村ごとに整理して掲載します。「おっ、ボルドーが揃っているな」などお店のこだわりの傾向をつかむのに有効な視点です。
3. 生産者・ヴィンテージ・値段・タイプ
・同じ生産者(ボルドーであればChateau、ブルゴーニュであればDomaine)でまとめる
・ヴィンテージの新しいものから古いものへ
・値段の低いものから高いものへ
・その他、ブルゴーニュで言うとヴィラージュ(村名ワイン)→プリュミエ・クリュ(一級ワイン)→グラン・クリュ(特級ワイン)の順や、シャンパーニュだとNV(ヴィンテージ表記をしないもの)→ミレジム(ヴィンテージ表記のあるもの)(*1)の順
などの分類方法があり、1を大分類、2を中分類、3を小分類と区分するのが標準的です。2まで分類があるとなかなかのこだわり度、3まであれば相当なお店です。
(*1)
シャンパーニュの場合、伝統的に複数ヴィンテージ(ぶどう収穫年)のワインをアサンブラージュ(ブレンド)して造られるのが一般的です。異なる収穫年のワインが持つ多様性により、造り手の求める独自のスタイルの一貫性を維持するとされています。規定により瓶詰め後、最低15ヶ月の熟成が義務付けれれています。これに対し、いくつかの生産者は、単一の収穫年のワインでシャンパーニュを造ることがあります。これらはミレジム(あるいはヴィンテージ・シャンパーニュ)と呼ばれ、ヴィンテージ(年号)がボトルに記載されます。ミレジムは最低36ヶ月の熟成が義務付けられており、また、その年の風味を表現した一期一会なもので、一般的には「格が高い」とされています。
● 吉川慎二 / Shinji Yoshikawa
1962年三重県生まれ。
東京大学法学部卒業後、三井住友銀行、メリルリンチ自己勘定投資部門のアジア太平洋地域統括本部長を経て、現在は投資家・経営コンサルタント。
2007年、日本ソムリエ協会のワインエキスパート資格を取得。12年にシニアワインエキスパートへ昇格し、同年に開催された第5回全日本ワインエキスパートコンクールで優勝。14年にはエキスパート資格者で初の日本ソムリエ協会理事に就任、2018年まで2期4年務めた。漫画「神の雫」に登場する吉岡慎一郎のモデルともいわれ、プロフィールイラストは「神の雫」作画のオキモトシュウ氏によるもの。