モテるワイン道入門~お店でのモテポイント
・前者の店で飲んだ帰り道に、同じものを酒屋さんで買って帰る(要するにお店で1本、お家で1本、合計2本飲める)。
・後者の店で飲む1本
同じ2万8000円の出費なら、どちらがいいですか? と聞かれたら、ほとんどのワイピは前者と言うはず。値付けが良心的なお店であれば「4名で3本の予定だったけど、お得だからもう1本追加しよう」とか、「ちょっと奮発して前から飲みたいと思っていた高級ワインをオーダーしてみよう」という気になる反面、強気のお店の場合にはお財布の紐を固くするのがワイピの習性です。
でも、ご安心下さい。見極める良い方法があります。それが、今回ご紹介する「ベンチマーク方式」です。方法は至って簡単、ワインリストの中で一般性・汎用性の高いシャンパーニュの有名銘柄の価格をチェックすればよいのです。筆者の場合、よくベンチマークに使うのは下記のふたつのシャンパーニュです。
ドン ペリニヨン:現行ヴィンテージ 2010年、楽天市場の実勢価格で1万9500円(税込)程度
クリュッグ グランド・キュヴェ:現行エディション 168(*1)、楽天市場の実勢価格で2万2000円(税込)程度
実際のワインリストを見てみましょう。まずは以前にも「ワインを楽しむべき店のお手本」としてご紹介した外苑前のモダン・ベトナミーズAのワインリスト(写真、2021年4月撮影)です。ドン ペリニヨン2008年が28,000円(税込。上記実勢価格の1.44倍)、クリュッグ グランド・キュヴェ エディション 166が34,000円(税込。同じく1.55倍)とお得感満載です(*2)。この店は「ミシュランガイド東京 2021」でもビブ・グルマンに掲載されるほどお料理も素晴らしいのですが、この良心的な値付けであれば人気が出るのもうなづけますね。
なお、これらの銘柄がリストにないというケースもあると思います。そう言う場合には、もう少しカジュアルなシャンパーニュ、例えばモエ・エ・シャンドン モエ アンぺリアルやシャルル・エドシック ブリュット レゼルヴなどをベンチマークにすることをオススメします。
「ベンチマーク方式」による判定、いかがだったでしょうか? ぜひ参考にしていただき、充実したワインライフに結びつけていただければ幸いです。
(*1)
クリュッグ グランド・キュヴェは複数の収穫年のブドウから造ったいわゆるノン・ヴィンテージシャンパーニュ(クリュッグ社はマルチ・ヴィンテージと言っている)だが、最近は主たるワインのブドウ収穫年ごとにエディションナンバーをつけている。現行エディション168は2012年主体。
(*2)
ドン ペリニヨンのヴィンテージについては2010年と2008年、クリュッグ グラン キュヴェのエディションについては 168と166(2010年主体)と若干の違いはあるが、市場ではほぼ同価格で取引されることが多いのでそのまま比較した。
● 吉川慎二 / Shinji Yoshikawa
1962年三重県生まれ。
東京大学法学部卒業後、三井住友銀行、メリルリンチ自己勘定投資部門のアジア太平洋地域統括本部長を経て、現在は投資家・経営コンサルタント。
2007年、日本ソムリエ協会のワインエキスパート資格を取得。12年にシニアワインエキスパートへ昇格し、同年に開催された第5回全日本ワインエキスパートコンクールで優勝。14年にはエキスパート資格者で初の日本ソムリエ協会理事に就任、2018年まで2期4年務めた。漫画「神の雫」に登場する吉岡慎一郎のモデルともいわれ、プロフィールイラストは「神の雫」作画のオキモトシュウ氏によるもの。