2017年9月にオープンしたばかりの『MARK’S TABLE』は、候補に挙げるべき一軒です。
「和のエッセンスを効かせたニューアメリカ料理」を提供しています。けれど、そう聞いて、頭の中に浮かぶのはクエスチョンマーク。和のエッセンス、ニューアメリカ……それらは、一体、何を意味しているのでしょう? 早速、彼女と、確かめに行きましょう。
こちらを向いてカウンターに立ち、流暢な日本語を操る彼こそが、日系人シェフの関田政弘マークさん。屈託のない笑顔に、すぐ打ち解けたように感じます。実は、マークさんの父は40年以上もアメリカの和食店で腕を揮ってきた日本人の料理人。母は料理好きのイタリア系アメリカ人で、祖父母は東京・府中で和菓子店を営んでいたとのこと。
「だから、料理人の血は僕の中にも流れています」と、やはり笑顔でマークさん。少年時代は、「宿題を終えたら、料理の手伝い」。それが当たり前の日課だったそう。
「料理好きであることは、ずっと変わらない僕のアイデンティティ」
多忙な日々を過ごしながらも、やはり、料理への熱い想いは募る一方だったのです。
「どうしても料理人になりたい」
NYで3年ほど、勤務した後、ついに一念発起。現地の名門料理学校に入り、フランス料理を学びます。その後は、洗練された料理が高く評価されるNYのレストラン『Gramercy Tavern』のキッチンに入り、みっちり実務を経験しました。
「僕が今、『MARK’S TABLE』で大事にしているのは“Farm to Table(=地元の新鮮食材を使って季節ごとにメニューを変えるスタイル)”。それは『Gramercy Tavern』で学んだことでした」
届いた食材に応じて、日々のメニューを考える。だから、『MARK’S TABLE』の料理は基本、おまかせコース一本のみ。父の故郷で、自身も慣れ親しんだ日本の地で勝負しようと決め、ともに経営するパートナーの要請で、場所は銀座になりましたが、ここで“Farm to Table”を実践しようと、知人のシェフに紹介してもらったり、自分で探し出したりして、全国の産地を積極的に巡ってきました。そうした中で、マークさんが気付いたのは日本の食材の素晴らしさでした。
生産者と直接、取引するケースも多く、「生産者をサポートしたい気持ちもある」とマークさん。
料理や食材のこと、アメリカや日本のこと。マークさんとの会話も愉快で、料理は、人と人とを繋ぐコミュニケーションツールだと実感します。
「都市に暮らす人は皆、仕事などでストレスを抱えて疲れている。ここに来たら、そうしたことは全部忘れて、自宅にいるように寛いで欲しい」
自宅というより、親友である料理人の家に、お呼ばれしているよう。文字通り、“マークの食卓”で、これぞ正真正銘のシェフズテーブル。マークさんの優しい“気”のようなものも空間に満ちているから彼女との会話も心地良く弾みます。
女性との距離を縮めたい。そんなときには、居住まいを正して食事する寿司やホテルダイニングよりも、ハートウォーミングでカジュアルな、こういうレストランの方が絶対にいい。新しくて懐かしい美味に舌鼓を打ち、マークさんの笑顔に癒されながら、改めて、そう思うのです。
◆ MARK’S TABLE(マークズ・テーブル)
営業時間/月〜金 17:30〜23:00(L.O. 22:00)
定休日/土曜・日曜・祝日(2週間前までの電話・メールで営業は応相談)
URL/www.markstable.com