ヌーベルシノワの先駆け。絶品炒飯はコースの締めに
炊いたごはんを冷まして冷蔵庫で2日寝かせる
ところが、鍋に投入する前のごはんを見せてもらうと、生米かと思うほどパラパラ。
「炊いたごはんは完全に冷まして冷蔵庫で2日ほど置いたものを使います」と教えてくれたのは、宮内氏の妻・加久子さん。
冷蔵庫の中でも水滴が入らないように、置く場所や向きなどにも気をつけながら水分量を調整していくと、生米のようでありながらしっとり感もあるお米に仕上がるのだそうです。
お米のでんぷんをアルファ化させてからベータ化させる
お米のデンプン特性を利用する。これがパラパラ炒飯の秘訣だったのです。
さっそくこのお米で宮内氏に調理してもらいます。
この自家製ねぎ油も味の秘訣。たっぷりの大豆油にネギの青い部分を大量に入れて、焦がさないように弱火でじっくりと熱することで、ネギの甘みと香りを引き出しています。この油の香りをかぐだけでも、甘みや香ばしさが伝わり食欲が刺激されます。
ごはんと同量の刻みネギをどっさりと投入
「油の量は多いですが、卵が吸ってくれるので、べちゃべちゃになりません。アレルギーや苦手な食べものには対応していますが、卵無しの炒飯だけはお断りせざるを得ません」と加久子さん。それだけ炒飯にとって卵の役割は大きいのです。
火力ではなくお米の下処理と具材のタイミング
炒飯はザーサイなどと一緒に供されますが、直前のコース最後の料理がフカヒレの姿煮なので、「この(姿煮の)タレと一緒に食べたいから早めに炒飯を持ってきて」と言う常連客も多いそうです。
「ネギの辛さが甘みに変わるところで火を止める。炒めすぎると、ネギの量が多いため、べちゃべちゃになってしまいます。ネギやお米は時期によって水分量が違うため、具材を投入するタイミングや炒め時間は数字では言えません。うちのお客さんでもご自宅で10回くらい作って、『ようやくなんとなくいい感じになってきた』とおっしゃいます。何度もやってみることですね」
練習あるのみ。まずは、彼女と一緒にお店で味わってみましょう。
◆ 春秋
住所/東京都港区南青山7-14-5
営業時間/18:00〜23:00
定休日/日曜日
URL/http://shunju1986.com/
予約・問い合わせ/☎03-3407-4683(予約受付は15:30から)
●完全予約制。料理はコースのみ。税込1万5000円から。サービス料別途10%
●柏木智帆
元神奈川新聞記者。取材を通じてお米とお米文化に興味をもち、お米農家を経て、現在は「お米を中心とした日本の食文化の再興」と「お米の消費アップ」をライフワークに執筆活動を続けている。ちなみにお米でできた日本酒も大好き。