1.高くて美味いは当たり前。たまには贅沢できる適度な価格帯であるべし。
2.予約がとれない名店は高嶺の花。会員制や紹介制ではなく、実際に電話が通じるお店であるべし。
3.大通りの洒落たハコばかりではなく、路地裏のひっそりとした名店を探すべし。縄のれんや赤ちょうちんを嫌う女子はこちらから願い下げるべし。
つまりは、高すぎなくてコスパよく、居心地よくて実のあるお店、というわけ。当方、かなりお酒を“たしなむ”タチですので、どうしても酒飲みに寄りがちな内容となりますが、その点はご容赦のほど。
さて、その第3回はこちらのお店。
世界でヒット乱発するALAN YAU氏が日本初出店「YAUMAY」
いまも残る「英記茶荘」ではマオカラーのジャケットに身を包んだ老紳士がひとりでお茶を飲んでいたっけ。卓上には蒸籠に入った点心がふたつほど。ゆったりと新聞を読みながら、ポットのお茶がなくなったらフタをずらして差し湯をリクエストし、新たな料理や茶が来たら軽く指でテーブルをタップして「ありがとう」を伝えるエレガントな仕草から目が離せず、私までお茶のおかわりを頼んだものでした。あれはまさに"大人(オトナではなく、ターレンと読んでください)"のふるまいだったなぁ。
ところ変わって日本へ。その名声が日本にも轟いていた「福臨門酒家」が海外初出店として東京・銀座にオープンしたのは89年のことでした。これ以前、横浜や神戸の中華街を別にすれば、本格的な飲茶が楽しめたのは新橋の翠園(ジェイド・ガーデン)くらいだったでしょうか。ワゴンサービスの飲茶が楽しかった翠園が2006年に閉店したのと時を同じくして、90年代後半に西麻布にオープンしていた巨大中華の「香港ガーデン」も閉店しました。
つまり、この10年、東京で飲茶メインで楽しめる店はほとんどなかったというわけです。その状況下で今春、まず日比谷に添好運(ティム・ホー・ワン)がオープンしました。「世界一安いミシュランレストラン」を宣伝文句にした点心専門店には長蛇の列! いまは時間をズラせば10分くらいの待ち時間で入れるかな、という感じ。コスパがいいから、家族でランチなどの際には良さげですが、ワイガヤ系ですのでデートや会食には不向きでしょう。
そしてさらにこの11月にオープンしたのが、ようやく本題の「YAUMAY」。ロンドンの「ハッカサン」や「パークシノワ」など世界的な大ヒット店を仕掛けるプロデューサー、ALAN YAU氏が手掛ける点心専門レストランです。振り返ってみれば今年は点心専門店がふたつも、それも日比谷・丸の内エリアにオープンする、飲茶の当たり年でした。
まずはスペシャリテでもあるヴェニソンパフ(蝦夷鹿肉のパイ包み)。さくさくのパイ生地の中に濃厚な肉の餡がたっぷり入っています。熱々でどうぞ。
窓際のソファ席もさんさんと陽がさして気持ちよいのですが、LEON.JPですもの。訪れるのは夜かもしれないし、またロマンティックな関係のおふたりかもしれませんね。
そんなときには、カウンター。飲茶をメインにした店で夜の営業をしているのは珍しいし、カウンターがあるのもレアですね。
天井が高く、ヨーロッパの重厚な雰囲気を感じながら食す飲茶は、まるでオールド香港で悠久の時を楽しんでいるような気分に。鼻眼鏡して新聞を読みながら、点心が来たら、人差し指と中指でテーブルをトントン……なんて、大人(ターレン)めいたふるまいをしたくなるお店です。
■ YAUMAY
住所/東京都千代田区丸の内3-2-3 二重橋スクエア 2F
予約・お問い合わせ/03-6269-9818
営業時間/11:00~15:00(L.O.14:30) 、17:00~23:00(L.O.22:30)
定休日/元旦、法定点検日
● 118席。週末や休前日は予約したほうが無難。