2023.10.06
モテる50代オヤジに香っていたのは“ヌケ感エロ”でした
エロさのスイッチになるのが香り。ただ、どんな香りが有効かは年齢で異なるもの。そこで、年代別におすすめの香りをお届け。30代・40代編に続き、貫禄の50代の本物感がありつつハズシも効いた香水選びを指南いたします。
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写真/小川 剛(KONDO STUDIO) 文/島田恵美 編集/菊地奈緒(LEON.JP)
50代は香りで円熟味を盛ると老けてしまう!? “ヌケ感”が重要です
MAHOさん(以下MAHO) 円熟してきて大人の貫禄が漂う年代ですよね。だからまず押さえておきたいのは、そんな世代にふさわしいアイテムであることかと。
── オーセンティック、本物感というところですね。
MAHO ええ。ただ一方で、ちょっと若見えしたい、エネルギッシュさを維持したい気持ちもある。だから、年齢に見合ったオーセンティックさを備えつつも、ヌケ感のある香りが狙い目だと思います。
放っておいてもそれなりに見える年代ですし、香りで円熟味を盛ると実年齢より上の印象を与えてしまう恐れがある。むしろヌケ感が重要で、そういうハズシが似合ってくる年代でもあるんですよ。ファッションでも、50代になってボーダーを可愛く着こなせるようになったりしますよね?
── ありますね。ボーダーを着たピカソみたいな。
MAHO そういったヌケ感やハズシをポイントに今っぽい柔軟な感性を表現できると、痛々しくない若々しさをキープできるはずです。
仕事シーンでは
王道ブランドをさり気なく香らせて大人の余裕を表現
MAHO 「エルメス」といえば、説明不要のオーセンティックなブランドですが、「コロン エルメス」は軽やかで肩の力を抜いて使えるシリーズ。その中で「シトロン ノワール」は、レモンの香りながら黒を表す「ノワール」が付いていて、ヒトクセある感じになっています。
── そのノワール感というのは、どのあたりですか?
MAHO ブラックティーの香りやグアヤクウッドという木の香りが放つウッディでスモーキーな要素です。これが加わることで、ナチュラル感に溢れながらも、パワフルで洗練された仕上がりに。ただ、中心がウッディではなくレモンということで、重役然とした感じにならないのが魅力です。
── (香りを試して)軽いですね。フレッシュで爽やかで、これは好感度高いです。
MAHO 本当にエルメスをすごくさり気なく、よそいき感なく纏えるシリーズなんです。あたかも長く愛用していそうな雰囲気を漂わせつつ、でも「シトロン ノワール」はシリーズの中では比較的新しい香りで、今の時代に合わせる柔軟性もアピールできるという。
── まさに大人の余裕ですね。……あと、柑橘の皮っぽい雰囲気も感じるんですが。
MAHO ちょっと辛みも加わっていますね。レモンピールを煮詰めて、そこにショウガを合わせたような雰囲気の。実は、こういった渋みや辛みの要素がレモンと合わさった香りは、加齢臭のカバーも期待できるんです。
── えっ、そうなんですか!?
MAHO ただクリーンなレモンの香りだと負けてしまいますが、渋みなどが混じることで、爽やかさとナチュラル感にカバー要素が入ってきてくれるんです。しかも、こちらはロングラスティングなので最強かと(笑)。
── なるほど。そのあたりも50代にとってうれしいポイントかも。
MAHO 自分自身はもちろんですが、女性にも評判がいい香りだと思いますね。
休日シーンでは
成功者をイメージした香りで、寛ぎの時間にも品格を
MAHO 「クリード」は、ヨーロッパの王族や貴族に愛されてきた歴史を持つラグジュアリーブランドで、この「アバントゥス」は、追い風に乗り、成功に向かってどんな時も全力疾走する男性を表現しています。
── ボトルには騎士が描かれていますね。
MAHO ええ。「クリード」がナポレオン家に献上されていたことから、ナポレオンをイメージしたんじゃないかと思います。
── 仕事で部下を率いて戦っている50代の休日に、まさにぴったりかも。
MAHO 香り自体はウッディ系ですが、最初に柑橘やアップル、パイナップルなどの優しいフルーツがくるので、親しみやすく穏やか。リラックスした中に品格が漂う感じで、大人の男性がエレガンスを失わずに休日を過ごすのにふさわしい香りです。
── (香りを試して)確かにトップはフルーティですが、表情が結構変わりますね。なんとも言えない気品を感じます。
MAHO ウッディの中でもすごく複雑でいろんな香りが出てくるんです。それでツウ好みなんて言われるのですが、これはトップのフルーティ感のお陰で使いやすいと人気で、ブランドのベストセラー。
実は、クリードは8月に再上陸したのですが、以前、日本から撤退となった時は“アバントゥス・ロス”が起こったほどなんですよ。
── そんな熱烈なファンがいるんですね。
MAHO ええ。また、ナポレオンにゆかりのあるブランドというところで、歴史好きや武将好きな男性にも魅力を感じていただけると思います。
昼デートでは
伝説のモテ男の香りで、周囲の女性をもれなく幸せ気分に
MAHO スイス発のラグジュアリーブランド「ヴァルモン」が手がけるオードトワレコレクション「パラッツォ ノービレ」の中の「カサノヴァ 2161」というフレグランスです。その名の通り、伝説のカサノヴァへのオマージュになります。
── 名前だけでもうエロいというか(笑)。
MAHO 千人斬りなんて伝説のあるモテ男ですからね(笑)。その名を冠しているとなれば、いかにもセクシーで甘ったるさや肉欲的な感じを想像しますけど、これが全然違っていて。むしろ、これみよがしな感じがない、紳士然とした香りなんです。
── (香りを試して)いい香り~。すごく軽やかで心地いいです。これが嫌いな人はまずいないかと。
MAHO 清潔感を出すのに使われるジュニパーベリーなどが中心になって、紳士らしさやクラシカルな雰囲気を表現しつつ、そこにアイリスがミステリな要素をプラスしています。全体として、なんとも軽やかで心地いいアロマティックな香りに仕上がっています。
── でも、これでカサノヴァは意外すぎるような……。
MAHO 自分からグイグイ迫るんじゃなく、女性を居心地よくさせて、結果、この人といると一番幸せかも? みたいな気分を引き出す、そんな男性像をイメージさせる香りだと思います。一緒にいると何かを学べたり、要求しなくてもかゆいところに手が届いて、女性の側からすり寄っちゃうような(笑)。そこがカサノヴァ的なのかなと。
── そう聞くと納得ですね。変にガツガツしていないところが50代向きかも。あと、なんかひんやりした雰囲気を感じます。
MAHO それがジュニパーベリーで、ジンの香り付けにも使われているものです。そこにアイリスがけぶるような上品さやデリケートさを加えていて、紳士っぽいけどカチッとしすぎずどこか女性的。女性の気持ちに理解のある男性像を思わせるんです。
── 深いですねぇ。あと、ヴァルモンということで誰かと被りそうにないのも魅力かと。
MAHO 女性ならスキンケア製品などで名前を知る方が多いですが、男性にはあまりなじみがないでしょうから、自分だけの香りを求める人にも満足いただけると思いますね。
夜デートでは
美女と野獣の香りを二人で纏って、官能的なひとときを
MAHO 「メゾン クリスチャン ディオール」の「アンブル ニュイ」は、アンバーの動物的な要素とターキッシュローズの繊細で魅惑的な要素が重なり合い、2つのコントラストで“美女と野獣”が表現されています。夜を意味する「ニュイ」が付く通り、まさに夜のデートにふさわしいオリエンタルな香りです。
── (香りを試して)すごく優美な印象ですね。夜の空気の重たい感じと、なんか赤絨毯が浮かびました。“美女と野獣”と聞いたせいかもしれませんが(笑)。
MAHO 私の場合は、シルクのランジェリーが肌をスルーッとすべって絨毯に落ちるようなイメージですけど、でも、そんななめらかさと艶っぽさを感じますよね?
── ええ。なんとも言えない壮麗な感じ。
MAHO 自分で楽しむだけじゃなく、カップルでシェアしてもいいと思います。
── いいですね。セクシーな気分を高めてくれそう。
MAHO 特に50代の男性は、女性を寛がせてあげる余裕が出てきている年代だと思いますから、この香りと一緒に美しいランジェリーをプレゼントして、お互いから漂う香りを楽しんだりしても素敵じゃないかと。
── いかにも女性向けっぽい香りじゃない、これを選んで贈るというところに大人のセンスを感じます。
MAHO 年齢に見合った香りのチョイスですよね。シンプルな円柱のボトルも素敵ですし、あと個人的に、ディオール特有のキャップがマグネットでカチッと締まるのが最高に気持ちよくて好きなんです(笑)。香水のキャップって開け締めしづらいものが結構多いので。
── すっごくわかります。その点、これはキャップを雑に戻してもマグネットで勝手に締まるから、締め忘れる心配もない(笑)。
MAHO こういうスッキリ機能的なところが、セクシーな香りで“美女と野獣”とか言いながら、いつまでも引きずらない大人な態度を思わせて、そこもまたいいなと(笑)。
フレグランスアドバイザー MAHOさん
香水の魅力を伝える巧みな話術と表現力で、メディアやセミナーでの情報発信、トレーニングサポートなどに携わる。フレグランスカウンセリングの先駆者で、予約制のプライベートサロンは男女から人気。日本フレグランス協会常任講師。日本調香技術普及協会理事。11月18日、19日はJR名古屋高島屋にてパーソナルコンサルティング開催予定。
■ お問い合わせ
インターモード川辺 フレグランス本部(クリード) http://www.creedfragrance.jp
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