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2021.12.27

名物社長がこっそり愛用するバッグとお財布【トレメッツォ・小林 裕編】

誰もが日常的に使用しているバッグと財布。ビジネスを作り出しリードしていく立場の社長は、一体どんなバッグと財布を愛用しているのでしょう。本誌にも縁の深いこだわり派のエグゼクティブに、思い入れある逸品をユニークなエピソードとともにご紹介いただきました。

CREDIT :

写真/干田哲平 文/石井俊昭 構成/長谷川 剛(TRS)

軽やかな生き方を反映した確かな審美眼

▲ フィービー・ファイロがクリエイティブディレクターを務めていた時代に買ったセリーヌのバッグ(茶色)。「黒やネイビー以外のバッグをきちんと作り出せるのは、ウィメンズが中心のブランドしかない」と小林さん。数あるバッグのなかでも最も使用頻度が高いのがこのモデルだと言います。

財布がかさばるのがとにかくイヤ

バグッタやPT01、タリアトーレといった、それまで無名に近かったイタリアブランドを発掘し、日本に紹介してきた小林裕さん。ファッション専門輸入商社「トレメッツォ」の代表を務める人物です。現在はPT トリノの総輸入代理店である「PT-ジャパン」の代表も兼任する、業界屈指の目利きとして知られています。
▲ “自分が大好きだと感じ、過去に誰も手掛けていないブランドしか取り組まない”というのが小林さんのポリシー。会社設立以来、業績は右肩上がりという凄腕です。また、小林さんにはクルマやスキーなど、仕事以外のプライベートにも情熱を傾ける趣味人の一面も。
取材が始まった途端、テーブルの上にずらりと並べられた革製品のなかから、小林さんが手にしたのがリザード製の札入れ。5年ほど前にストラスブルゴで開催されたT・MBHのオーダー会で購入したそうです。

「この札入れは、見た目のコンパクトさからは想像できないほど大容量の紙幣が収まるんです。取り外しできるリフィルが付いておりカードをまとめて入れることができるので、収納力の小さいクラッチを持つときに、これだけ単品で使うこともあります。名刺カード入れも、同じシリーズで作りました」

このシリーズは、“葉合せ”というステッチを施さずに包丁と接着剤だけで組み上げたT・MBHのオリジナル製法によるもの。ステッチがないため、糸のほつれがなく、革に穴も開けないので薄手でありながら強度があるといいます。
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▲ 厚さ約0.4㎜の革を貼り合わせ、のりしろをズラすことでステッチがなくても剥がれにくくした葉合せシリーズは、内側の革を一度組み立てた後に外側の革でそれを包み込むように仕上げる製法が特徴。
「あと葉合せのシリーズと一緒に、シンプルな札入れも作ったのですが、こちらは真ん中に紙幣を入れるところがあり、領収書を収納できる部分と、後はカード2枚入れば十分だと思いこの形にしました。自分でスケッチを描いて、こんなふうにしてほしいとお願いしたのです。とにかく、財布が膨らむのがイヤなんです。小銭はキャッシュレス決済でほとんど対応できるから必要ないし、ポイントカードも持たない主義。以前は、カードホルダーがたくさん付いたクロコダイル製の長財布を使用していましたが、かさばるのが苦痛で(笑)。今ではこのふたつを、行き先や用途に応じて使い分けています」
▲ 自らスケッチを描きオーダーした札入れを手に取り説明する小林さん。T・MBHの商品は、表面に“えくぼ”と呼ばれる控えめに入れた18Kピンクゴールドのアイコンを特徴としますが、小林さんはそれすら省略。右下の長財布が以前に使用していたモデル。
財布の中に余計な収納スペースがあれば、何かと入れてしまうので、それなら最初からないほうが良いと考えるのが小林さん流。やや潔すぎる感じもしますが、確かにこの薄さならジャケットの内ポケットに入れても外からの見栄えを邪魔しないうえ、必要最低限のアイテムしか持ちたくないという小林さんのスタイルにも合致します。
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▲ この日着ていたタリアトーレのジャケットは、カーディガンのような柔らかな仕立て。「昨今主流になっているこういうジャケットに、堅い革製品は似合いません。普通の長財布だと、内ポケットに入れたら見た目にも影響します」と小林さん。
ちなみに、すべての財布に赤坂の日枝神社で買ったお守りを収納。日枝神社は江戸城(皇居)の鬼門を守る神田明神と対になり、裏鬼門を守る鎮守の神社として有名。仕事運や出世運上昇、商売繁盛のご利益があると言われていますが、大量のお守りを小林さんが用意しているのにはある理由があります。

「毎年、年初に自分用とは別に、たくさん購入して財布の中に入れておくんですよ。ほら、イタリア人ってお守りが好きでしょ?  イタリアから取引先の関係者が来日したときにプレゼントすると、とても喜んでもらえるので(笑)」
▲ 財布の中には大量の肌守(小型のお守り)が。プレゼント用として山王御守から交通安全、厄除海運、身体健全まで、いろんな種類を揃えておくそう。このほかにも大きな仕事の前には、原宿の東郷神社で必勝祈願のお守りを買って、社内のスタッフに配ることもあるのだとか。
▲ 小林さんが普段使っているT・MBHの革小物は、いずれも5年ほど前にオーダーしたもの。上から、葉合せシリーズの名刺カード入れ、同じく葉合せシリーズの札入れ、シンプルな構造にとオーダーした札入れ。「表面にイニシャルを入れたのですが、小さすぎて見えませんね(笑)」と小林さん。
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9つのバッグが年間を通したレギュラー

続いて愛用のバッグを見せてもらうと、ビジネスマンの定番であるブリーフケースやトートバッグは見当たらず、大小2サイズのクラッチバッグやポーチがずらり。自宅からオフィスまでは徒歩通勤、出張以外でPCは持ち運ばないという、小林さんのライフスタイルを反映したラインナップです。

「ここにあるものを年中使い回しています。バッグ選びの条件は、まず長財布が入る大きさであること。後は家のカギとクルマのカギ、名刺カード入れとiPhone、手帳、万年筆が入れば十分かな。でも、さらに身軽でいたいときは、先ほど紹介したT・MBHの札入れをジャケットの内ポケットに入れて、小さいほうのクラッチを持ちます」

大きいサイズは、セリーヌ、ベルルッティ、エルメスなどのラグジュアリーブランドのもの。それらに加え、毎年幕張メッセで開催されているヘリテージカーの祭典「オートモビルカウンシル」のオリジナルグッズも所有する。大のクルマ好きであり、数々のクラシックカーレースへの出場経験もある小林さんは、このイベントに対し開催初年度の2016年から5年間、トレメッツォとして協賛した経緯もあり、思い出深い品だと言います。
▲ iPhoneに残っていた「オートモビルカウンシル」の写真から、展示会の様子を説明してくれた小林さん。左腕の下に見えるオリジナルポーチは、全部で10色ぐらいあるそう。こちらはジャケットにネクタイをせずセーターを着こむような装いの日に愛用。
「大きなバッグは苦手なので、小ぶりなバッグを探していると、どうしても女性向けのバッグに目が行ってしまうんです。前職(アルファキュービック)でウィメンズを担当した期間が長かったせいか、あまり抵抗がないんでしょうね。セリーヌやフェンディが好きで、一時期、男性が持ってもおかしくない女性向けクラッチばかりをチェックしていたら、こんなに増えちゃいました(笑)」
▲ 長財布が収まるサイズのグループがこちら。上は冒頭で紹介したセリーヌのクラッチバッグ(1)。探し回ってデッドストックで手に入れたセリーヌ(2)、柔らかな革質でドレスでもカジュアルでも合うというベルルッティ(3)、エルメス(4)は、PT トリノに勤めるイタリアのスタッフが使っていたものをヒントに購入。最後がオートモビルカウンシルのオリジナルポーチ(5)。
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自分に合わせて使い方をアレンジ

一方、小林さんが「小さいほう」と呼ぶグループは、荷物が少なくて済む時の専用バッグ。収納力が小さく、財布や名刺カード入れを入れない分、それらの機能を補完する機能的な作りが基本になります。

「フェンディのクラッチは、内部が3層構造になっておりカードホルダーも豊富。財布のように使い勝手が良いので重宝しています。外側にハンドルが付いており、持ちやすいのも良いですね。セリーヌのほうは3つのポーチをスナップボタン留めしたタイプ。荷物の量に応じ、今日はひとつだけで行こうとか、ふたつあれば十分、といったように切り離して使えるのは、男性向けのクラッチではなかなか見ないアイデアです」
▲ シボ革を用いたフェンディのクラッチバッグは、カードホルダーなども豊富で財布代わりになるデザイン。少しかっちりとした表情なので、あらたまった場所に出掛けるシーンに使用しているとのこと。
さらに、小林さんがユニークなのは、このグループに大型の財布や手帳カバーまで入れている点。身軽でいたいからというスタイルを徹底して貫いています。

「財布のほうはパスポートも入るサイズなので海外旅行のときにも便利です。空港ではそんなに大きな荷物を持っていたくないので、必要なものだけ入れて動けるようにしたいじゃないですか。手帳カバーのほうは、実は手帳カバーだと思わないで購入したもの(笑)。でも、ペンホルダーやiPhoneが入るマチ付きポケットもあるし、これに紙幣と名刺、カードを数枚入れておけば事足りるという日もあるんです」
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▲ エルメスの手帳ケースは、その佇まいが気に入っているそう。ちなみにこれを持つときは、手帳はここに収めず別に持参。今でもスケジュール管理を手帳にこだわるのは、実際に手で書くことで覚えることや、紙の手触りによる記憶、ペラペラとページをめくって目に留まる感覚を大事にしたいからだそう。
うんちくやルールを優先しがちなメンズファッションでは、時としてそれが足かせになってしまうことがあります。しかし、小林さんの話を聞いていると、自分の趣味や嗜好に合わせて使い方まで柔軟に変えてしまうなど、感性豊かで実に軽やか。そんな常識にとらわれない自由な発想を大切にする人柄こそ、トレメッツォやPT-ジャパンの快進撃を支えてきた要因なのかもしれません。

「ただ、バッグが小さいと、置き忘れることもよくあって……。それだけは日ごろから気をつけています(苦笑)」
▲ 右上から時計回りに、パスポートも収納できるエルメスの財布(1)、エルメスの手帳カバー(2)、フェンディのクラッチバッグ(3)、最後はフィービー・ファイロによるセリーヌのクラッチバッグ(4)(5)。フィービーのデザインが大好きで、当時は足繁くブティックに通っていたそう。

● 小林 裕 (トレメッツォ/PT-ジャパン 代表取締役)

1956年東京生まれ。幼少期から祖父、母親の影響で、自動車やファッションなどに触れて育つ。大学生時代に「テイジンメンズショップ」でアルバイトを始め、卒業後には「アルファキュービック」入社。31歳で事業部長となり、41歳で退社。その後、マーロとの契約での営業職などを経て、2005年にファッション専門の輸入商社「トレメッツォ」を設立。PT01、タリアトーレなど、独自の審美眼でさまざまなイタリアブランドを日本に紹介し、流行させた仕掛け人。

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