プレミアムミディアムクラスの市場はいまかなりアツイ!?
日本では2019年3月に発売された新型アウディA6に、ようやく試乗がかなった。白状すると、A8などと基本的なシャシーを共用しているので、ちょっと大型でもっさりしているのか、と思っていた。ところがA6、かなりいい。

いいところは、かなり軽快な運動性能にある。軽めのステアリングホイールだが、路面からの情報はていねいに伝わってきて、操舵したときの車体の反応はすばやく、つまり操縦していて気持がいい。
全長は4950ミリと大型といってもいいサイズだが、試乗車は、後輪を操舵する「ダイナミックホイールステアリング」と「ダンピングコントロールサスペンション」とバリアブルレシオの「ダイナミックステアリング」をセットにした「ドライビングパッケージ」のオプションを備えていたおかげで、スポーティセダンとして楽しめるのだ。

このパッケージが装着されていれば、基本的にはセダンもアバントと呼ばれるスタイリッシュなステーションワゴンも、おなじように、楽しめる。これはお勧めの装備だ。
もちろん、ベースがいいから、ハンドリングパッケージが活きてくるのも事実だろう。エンジンは1370rpmから4000rpmにかけて500Nmの最大トルクを発生するので、低回転域でも力がたっぷりあり、かつ回転をあげていくと、ぐんぐん加速していく。そのフィールがとてもいいのだ。

最新技術が調和した乗り味はまさに先進的
まあ、リクツでなく、クルマ遍歴をあるていど重ねてきたひとなら、黙って座ればぴたりと当たる、というかんじで、ステアリングホイールを握って少しの距離でも走れば、すぐ好きになると思う。
クワトロシステムはユニークだ。ひとつには燃費向上のための最新テクノロジーが盛り込まれていることがあげられる。高速などでアクセルペダルを強く踏まない、いわゆる低負荷のときは、後輪へトルクが行かないようにセンターデフがフリーになる。
さらに燃費のために、エンジンとドライブトレーンじたいも切り離される。つまりアイドリング状態で走っていられるのだ。ガソリンエンジン車の魅力を堪能させてくれつつ、出来るだけ環境への配慮が行われている。

インテリアの質感が高いというアウディ車の魅力を、A6もちゃんとそなえている。ドライバーシートにいると、シート表皮の感触と座り心地とともに、ステアリングホイールを握った感触まで、ていねいな気配りで仕上げられているのがわかる。
ドアの開閉のときの音、サイドウィンドウが上がり下がりするときの音、操作系やウィンカーレバーのクリック感など、徹底的に注意が払われているのだ。

このモニター画面は慣れると使いやすい。たとえば私が個人的に気に入っているのは、ナビゲーションの目的地(よく行く場所)をアイコン化してトップ画面にはりつけておき、そこに触れるだけでナビゲーションシステムの道案内が起動する機能である。
室内は広い。前席は気分が浮き立つ場所だとすると、後席はゆったりしたスペースでくつろぐ場所だ。2925ミリという長いホイールベースは、A8標準ボディの3000ミリには及ばないが、A7スポーツバックと同寸で、その恩恵にたっぷりとあずかれる。

これまではドライバーズカーとして最高!と書いてきたけれど、後席にひとを乗せるのも得意なクルマなのだ。家族のために乗るのもいいだろう。アウディのSUVもけっして悪くはないのだが、やはりサスペンションのアーム長がたっぷりあるセダンやステーションワゴンにはかなわない。
高速ではゆったりとした快適な乗り心地も味わえて、どんな長距離ドライブでも耐えられる。いや、耐えられるというより、ドライブを楽しんでいられる、といったほうが正確だろう。
価格は「A6セダン55 TFSIクワトロS line」が1006万円、「A6アバント55 TFSIクワトロS line」が1041万円だ。両モデルに「デビューパッケージ」も用意される。

競合は、メルセデスなら3リッター直列6気筒にISGシステムとツインチャージャーシステムが組み合わされた「E450 4MATIC Exclusive」(セダンが1074万円、ステーションワゴンが1138万円)、BMWなら3リッター直6の「540i xDriveセダン」(1064万円〜)が思いつく。
どれもいいクルマである。キャラクターがしっかり立ったモデルが揃うマーケットだ。A6にはA6にしかないドラインビングの個性があるので、けっして負けていない。
アバントのボディサイズは全長4950ミリ、全幅1885ミリ、全高1465ミリ
アバントはあえてルーフの前後長をすこし短めにしてリアゲートを強く傾斜させスポーティを出すのがアウディの”伝統”
ハンドリングがすばらしいA6
セダンは全長4950ミリ、全幅1885ミリ、全高1430ミリ
リアの水平基調のクロームラインが特徴的
「S line」には専用の3本スポークのスポーツステアリングホイール
写真は「S line」用スポーツシート
後席のためにオプションで、シートヒーターやサンブラインドなどのパッケージを選ぶことができる
アバントの荷室にはゴルフバッグも楽々積める
タブレット型スマート端末のように使えるというふれこみの「MMIタッチレスポンス」搭載
アバントのボディサイズは全長4950ミリ、全幅1885ミリ、全高1465ミリ
アバントはあえてルーフの前後長をすこし短めにしてリアゲートを強く傾斜させスポーティを出すのがアウディの”伝統”
ハンドリングがすばらしいA6
セダンは全長4950ミリ、全幅1885ミリ、全高1430ミリ
リアの水平基調のクロームラインが特徴的
「S line」には専用の3本スポークのスポーツステアリングホイール
写真は「S line」用スポーツシート
後席のためにオプションで、シートヒーターやサンブラインドなどのパッケージを選ぶことができる
アバントの荷室にはゴルフバッグも楽々積める
タブレット型スマート端末のように使えるというふれこみの「MMIタッチレスポンス」搭載
● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト
慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。