モテる「練り香水」のつけ方、教えます

「君はとてもいい匂いだ」
「私は香水をつけてないわ」
「洗いたてのハンカチのようだ」

うだつの上がらない脚本家（ウィリアム・ホールデン）と、彼が恋心をいだく若い女性（ナンシー・オルスン）の、映画『サンセット大通り』（原題：Sunset Boulevard）でのワンシーン。なんとも小粋な口説き文句ではありませんか？（物語自体はロマンティックなものとは決して言えませんが笑）

この、（例えつけていても）香水を“つけてない感”がロマンスを生む重大ファクター。例えば、「あ、あの子タイプ♡」と思って近づいたら「ムリ……」と思わず鼻をつまみたくなった、なんてことありません？ もちろん、女性→男性の逆もしかり。でも臆病になってなにもつけてない方、それはそれで不安じゃないですか？ なぜなら、加齢臭という、見えない大敵がひそんでいるかもしれなく、また夏は汗臭くなりがちな恐ろしいシーズンでもあります（涙）。

香水をつけすぎるのはダメ。つけないのはもっとダメ。んじゃあ、どうすればいいの！？
と、香りをつかったお洒落は一番難しいと言えるかも。そのために、苦手意識をもっている方も多いのではないでしょうか。

これらすべてのお悩みをササッと解決してくれるいいものがあるんです。それが、練り香水。従来のリキッドタイプの香水と違い、香料をワックスのようにミツロウに練りこんだソリッド型のため、拡散性が低く、肌の近くで香るので、 “つけてない感”をいとも簡単に演出できます。これならトゥマッチになる心配がない、要するに失敗知らずの香水ということですね。

しかも、小さいので携帯しやすいのもポイント。そこで、匂いよし、見た目よしで男をあげられるイケてる練り香水をご用意しました。つけ方や応用編など、目からウロコの練り香水にまつわるエトセトラとともにお楽しみください。

「diptyque（ディプティック）」と聞いて、お世話になってます！ という方も多いのでは？ グラスキャンドルやディフューザーなどのルームフレグランスをはじめ、オードトワレやオードパルファンなどの香水、ソープやシャワージェル、ボディークリームやハンドクリームなどのケアアイテムまでそろう、パリ発の高級フレグランスメゾンですね。
人気が高いのは香りだけでなく、プロダクトデザインまでもユニセックスに完結されているところ。練り香水にしてもこのオシャレさですので、男性が持っている姿に女性がクラ♡、香りにクラ♡ってなワケなんです。

いざ手にとってはみたものの、ん？ どこにつけるんだろう…。
「コミュニケーションをとりたい箇所につけるといいですよ」とやさしい声で教えてくれたディプティック青山のストアマネージャーの濵 大将さん。たとえば、オフィスなら腕の内側につけるのが良いそう。

「液体タイプも練り香水も、脈を打つところにつけるのが基本です。代表的なのが手首の裏。ただ、ここってカフが当たりシャツが汚れやすいんです。また、男性は皮脂が多いから、腕の内側にスッと線をかくようにつけてみてください。
すると、カフで閉じ込められた香りが衣服の中で温まり、書類を手渡そうと袖があがった瞬間にふっと漂い、受け取る時に相手が“あっ”となるんです」

な、なるほど！ オンとくればオフも気になる。恋の駆け引きに効くつけ方があったらなぁ。

え？ あるんですか、濵さん！
「デートの時のおすすめは、手のひら。食後に女性をエスコートしますよね？ まずは、お会計に立ってそのまま化粧室へいき、手のひらにつけて戻ってきます。席を立つ女性に手を差し伸べればお互いの手が重なって、ふたりの体温で香りが広がります。そして、別れ際のハグの時に、“あ、さっきのはあなたの香りだったのね”と相手が気づくという算段。これは勝率の高いつけ方で、実践済みです（笑）」

たしかに、どっちのテクもモテそう！ と確信を得たところでいよいよ実践へ。ディプティックでの練り香水のラインナップはぜんぶで5種。なかでもLEON世代のためにオン＆オフで効果を発揮する香りを、濵さんに選抜していただきました。

「仕事などのオンの時なら、あえてバラの香りを。これは『オーローズ』といって、ダマスクローズとセンティフォリアローズの稀少な2種のバラをメインにつかい、ライチのフルーティな印象をトップに、カシスとベルガモットがアクセントになっています。石鹸にも近い香りなので女性が嗅いでも嫌味にならないですし、つける方の誠実さが伝わるのがこちらです。また、親近感が湧くような近づきたくなる香りとして、女性ウケは間違いありません」

「『サン・ジェルマン大通り34番地』はオフの時に。このフレグランスは、パリのサン・ジェルマン大通り34番地にあるディプティック本店の店内の香りを再現しています。すっと香りたつ清潔感があり、男性がつけるととてもセクシーです」
香水苦手だな、という方にこそ手にとっていただきたい、す〜と気分を満たしてくれるようないい匂い。

「香水に慣れていらっしゃらない方は、練り香水で“香りに包まれる世界”に慣れてみてください。アルコールフリーのため寝る前につけることもできるので、1日の終わりのルーティンにとりいれてみるところからはじめてみては？ ゆくゆくは液体タイプを重ねて自分らしい香りを楽しむという上級づかいも試していただきたいです」

濵さんの香りテクはすぐにできるものばかりだから、実践しないのはもったいない！ くわしく聞きたい方は、青山にあるお店に気軽に立ち寄ってみていただければと。

“モテ”のために大切なのは、攻めと引きのバランス。そこは、同性目線でも嫉妬してしまうほどの大人の色気ダダ漏れのイタリアオトコたちが絶好のお手本となりましょう。やはり、イタリア人にとってもパルファンやコロンとならんでソリッドタイプをたしなむのは至極当然のよう。産まれながらの紳士が住む国、イタリアにも、諸兄たちのお耳にいれておきたい練り香水がございましたよ。

ご紹介しますのはイタリア生まれの「アッカカッパ」。ブラシ専業メーカーとして創立され、ヘア業界のプロフェッショナルが信頼を寄せるヘアブラシをはじめ、ヘアケア製品やシェービング関係まで男性向けのアイテムがそろう老舗のビューティブランドです。世界中のラグジュアリーホテルのアメニティとしても採用されているので、手にとったことがある方もいらっしゃるかと。

すでに申しましたとおりフレグランス専門のブランドではないんですが、アイテムはどれをとっても驚くほどいい香り。例えるなら、花や果実のフローラル系ではなく、みずみずしいグリーンやウッドを基調とした魅力的な香り。なかでもブランドを代表する香り「ホワイトモス」は、練り香水でも楽しめます。

なんでも、現社長のエリーザ・ジェーラ氏の自宅の庭が、香りの着想源のよう。多種多様に花やハーブが咲き誇る庭から、フレグレンスも庭と同じようにいろいろな植物が混ざっていてもいいんじゃないか、と考えたそう。
たしかにこの「ホワイトモス」も、トップノートのジュニパー（針葉樹西洋ビャクシン）やベルガモットをはじめ、ミドルのラベンダーやカルダモン、そしてラストにはホワイト・ムスクやシダーウッドなど12ほどの個性ゆたかな香料が見事にまとまっているから不思議。みずみずしいグリーンやウッドのノートにはキリッとしたさわやかさがあり、まとえば、ほどよい高揚感と緊張感に包まれて、自然と気持ちがシャキっとなります。

ネクタイを締め直したようなリフレッシュ感のあるこちらは、やはりビジネスシーンでは大活躍しそう。
「練り香水はパフュームと違い、液体ではないので安心して機内に持ち込めます。密室の機内など、香りを抑えたい時にもすごくいいんです」と語ってくれたのは、アッカパッカの広報にして、社長のエリーザ氏とも親交のある若林夏津恵さんと、今回は東京ミッドタウン日比谷店 イセタン ミラー内にある日本一号店スタッフの方。
「香水をそこまで立たせたくはないけどふわりとまといたい。そんな時は、出かける前にオード パルファンを香りの下地としてうなじや洋服にひと吹き。そして、人と会う直前にソリッドパフュームをつけるんです。ほのかな香りが相手に好印象を与えてくれます」

重ねづかいとはなんと高度な！ イタリア人男性は、さぞ香りづかいがお上手なんでしょう。
「イタリアの男性にとって練り香水はリップを持ち歩く感覚に近い存在です。スプレータイプよりもこれみよがしにならずさっとつけ直せますから。一連の所作がスマートに決まるので、自分に酔えるところもウケている理由かもしれません（笑）」と若林さん。

これなら日本でも不自然にならず真似できそう。そうこうしていると、なにやら、麗しい声が聞こえて…。ん、なになに？
“この香りいい！ これつけている男性がいたら好きになりそう〜。”と「ホワイトモス」を手に女性たちが話しているではありませんか。
「会社帰りのOLさんがよく来店してくださるのですが、さわやかな香りに硬派な男性像をイメージされるそうで、女性からはかなり好評。よくそのような会話を耳にしますよ」とスタッフからの信ぴょう性の高い証言をゲット。とくれば、試さない手はありませんね。

ソースでもなく、醤油でもなく、塩。目玉焼きの食べかた？ いえいえ、今や女性たちの理想のタイプは、“塩顔”が主流。と、ますます女性の好みはヘルシー志向をたどっております。そんな、ナチュラルやオーガニックに慣れ親しんだイマドキ女子たちでさえも、“もっと近づきたい♡”となる優れモノを最後にお届けいたします。

ご紹介しますのが「シロ」。“白”ではなく“shiro”です。2015年にスタートし、すでにロンドンに3店舗、ニューヨークに1店舗をオープンさせ、さらに今後はパリやハワイにも進出予定という、超売れっ子の日本発の自然派コスメティックブランドです。

練り香水は7種類の香りがあります。なかでも精油シリーズの「イングリッシュガーデン」がジェンダー問わず愛されているそう。まず、注目いただきたいのはその成分。ミツロウやシアバターのほか、野菜油やごま油といった料理につかうおなじみのアイテムが顔を並べているではありませんか！ 自然派といっても、食べられる素材を使用しているとはなんとユニークな。その理由はシロのPR、渡邊ひろ子さんに伺いましょう。

「もともとは他社ブランドの化粧品などの企画や製造をしていた会社が、社長の出産を機に、良質な素材をつかって“毎日つかいたいものを作る”という想いで2009年にブランドを立ち上げました。それがシロの発端です。上質な素材を探しに海外、それも僻地までいったこともあるそうですが、そもそものオリジンである北海道に目を向けたところいいものがたくさんあると気づき、それが小林酒造の酒かすや函館のがごめ昆布との出会いにつながりました。どちらも美容成分が豊富に含まれています。今も素材探しはメーカーに頼らず、全国の生産者のところに自分たちが直接足をはこんでいます」

厳選された自然の素材がベースとなっているため、つけ心地は抜群。「イングリッシュガーデン」は、ラベンダーやのゼラニウムなどのエッセンシャルオイルがブレンドされたさわやかな香りなので、少量手に取れば途端にリラックスモードがオンになり、全身がゆっくりとほどけていきます。仕事中のつかの間の休息タイムやイライラしている時などのために、デスク周りに置いておくと便利です。

渡邊さんによると植物性由来ゆえ、スキンケアする感覚でも使えるそう。「保湿代わりとして爪まわりなどの乾いている箇所や、髪の毛先に直接少量を揉み込むと、ふっと、動くたびにやさしい香りを放ちます。リラックスできるので、眠る前に使うのもおすすめ。奥様や彼女などの身近な女性とシェアしていただくと、相手はきっと喜ぶと思いますよ」

たしかにこれなら、“何つけてるの？”とコミュニケーションの一手にもなりますし、さらにはスキンシップが深まって、その後が甘い時間となることは容易に想像がつくのであります。