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2018.12.19

【検証】Apple Watch Series 4は買い! 時計のプロは意外な視点から断言した!

機械式時計の専門家から見てApple Watch 4は"買い"なのか? Apple Watchを愛用する高級時計専門誌『クロノス日本版』編集長・広田雅将氏が、4で何が変わったのか? メリット、デメリットをすべて語る。

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文/折原一也 写真/椙本裕子(YUKIMI STUDIO)

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スマートウォッチの先駆けたるApple Watch。その第4世代が、去る9月21日早くも登場した。最先端のデジタルガジェットであるApple Watchを2015年の発売時から購入し、定点観測を続けているのが高級時計専門誌『クロノス日本版』編集長・広田雅将氏だ。なぜ、機械式高級時計の専門家である広田氏はApple Watchを使い続けるのか、そしてApple Watch 4の登場をどう捉えているのか。国内外の腕時計に精通するプロフェッショナルの立場から語って頂いた。
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装着感を高めて、腕時計としての本質を突き詰めたApple Watch 4

まず単刀直入に、Apple Watch 4を広田氏はどのように受け止めているのだろうか。
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「Apple Watchの第3世代から第4世代の変化ついて言うと、装着感を更に細かい部分で詰めてきていますね。ケースが11.4ミリから10.7ミリと薄くなったので、画面サイズを大きくしても重心が下がり、かえって安定感が向上しています。

また、感心したのがストラップ(ベルト)で、アップルが最初に作ったものには左右の遊びがなかったのに対し、第4世代では上手く遊びを持たせて装着感を上げています。それに、今まで風防側に付いていたアンテナをケースバックに配し、腕に触れる部分をセラミックにすることで、金属アレルギーの人でも身につけられるような配慮もしています」(広田氏、以下同)
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Apple Watchは、ガジェットとしてそのスペックを語られがちだ。Apple Watch 4の登場に際して一般的に注目されたのは、30%以上広くなった画面サイズと、64bitデュアルコアプロセッサーの搭載による約2倍の速度アップ、そして心電図撮影も可能となった心拍センサーの刷新だった。そんな風潮のなか、あくまで時計としてのケースやベルトの仕上げに着目するところが腕時計に精通する広田氏らしい。
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初代Apple Watchがもたらしたインパクト

機械式時計を専門とする広田氏だが、初代Apple Watch以来のユーザーでもある。第二のクオーツショックとも言われたその登場を、広田氏はなぜ肯定的に受け止めたのだろうか。

「僕は元々デジタル好きなので、Apple Watchが登場してすぐに興味を持ったんです。そして実際に見てみたところ、完成度が高くて"これはイケる"と思いました。Apple Watchは第1世代から5万円ほどで買えるのに、腕時計としては50万円くらいの出来。凄く質感が良かったんです。

例えば、Apple Watchの風防はサフファイアガラスですが、コストのかかる丸みを帯びた立体的な風防を使っているんですよね。装着感も最初から考えられていて、オフィスワークをする時にもバックル部分が引っかからなくて、時計として凄く良く考えられているんです。むしろ"腕時計より腕時計らしい"と言いたいくらい。

というのも、腕時計メーカーにとって装着感の向上は大切な課題だからです。腕時計の歴史を見ても"腕から外されないこと"は重視されてきたのですが、デザインに制限が出てしまうため、装着感ばかりに注力することは難しかったのです。Apple Watchはそんな腕時計のアンチテーゼとして、原点に立ち返ってハードを作り込んできました。そういう意味では第1世代からもの凄く良かったんですよね」
"常に身につけられる"ということは、Apple Watchの持つヘルスケア機能を有効に活かすための必須条件でもある。アップルは、何故これだけのものを生み出すことができたのだろうか。

「Apple Watchの作り手たちはそれまで腕時計をつけずに生活する人々だったのですが、アップルはApple Watchに着手する際にFHH(Fondation de la Haute Horlogerie=高級時計財団)のドミニク・フレションにアドバイスを求め、時計の歴史を一から学んでいます。それだけアップルはApple Watchを作るにあたり真摯に時計に向き合ったんです。そこを攻めたのが素晴らしいですし、それこそがApple Watchが数あるスマートウォッチの中で傑出できた要因だと思います」
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実用時計として、北米腕時計市場の半分のシェアを獲得

2015年の第1世代の登場から3年で腕時計業界のなかでも、トップシェアのブランドに登り詰めたApple Watch。その成功の理由を広田氏は"実用時計"としての完成度を挙げる。

「腕時計には、嗜好品・実用品という2つの側面があり、個人的に後者の条件は"消去法で残るもの"だと思っています。つまり、装着感が良くてどんなシーンでも長時間付けていられるもの。Apple Watchはその条件を満たしているんです。特に北米は腕時計の実用性を重視するので、Apple Watchは既に500ドル以下の市場の50%を占めています」

それでは、腕時計のプロフェッショナルはApple Watchの腕時計業界へのインパクトをどう分析しているのだろうか。広田氏は「人によって反応は様々ですが−−」と前置きした上で、"良い事"であったと捉えているという。

「まず、携帯電話やスマートフォンで時計を代用していた人が、Apple Watchを付けるようになったこと。そして、スイスの時計メーカーも、500ドルでこの質感のApple Watchを出すなら、より良いものを作らなくてはいけないと意識を高めています」

そんな風にApple Watchの魅力を語る広田氏だが、Apple Watchを右手首に付けながら、左手首には機械式時計も忘れずに付けている。

「僕はApple Watchでは時間を見ないんですよ、実は。Apple Watchは文字盤を拡大させて表示要素を増やしているけど、結果として時間がより見づらくなった事は否めません。時間を見るなら従来の時計の方が早い、そういう意味では僕はApple Watchを時計としては使っていないですね。それにデザインとしてフォントが揃っていないという問題もあります」

とはいえ、広田氏はApple Watchをただ飾りとして身につけている訳でもないようだ。第3世代のApple WatchからeSIMを内蔵するGPS + Cellularモデルを選ぶようになり、電話、LINEのメッセージの返信、SUICA、ワイヤレスイヤホンの接続もApple Watchと、Apple Watchの全方面の使いこなしにも余念がない。
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Apple Watch登場後の腕時計業界の行方は?

既に500ドル以下の市場を席巻しているApple Watch。長い期間で見ると腕時計の業界全体を飲み込んでいく事になるのだろうか。

「ある時点で頭打ちになるだろうと僕は考えています。Apple Watchは健康管理こそすれ、使い手のフィジカルな問題ーとくに老眼ーを解決することはできませんから。いくら大画面化しても腕に乗る大きさには限度があるので、使い手が高齢化していけば操作しづらくなるもの。今はデジタルが得意な若い方の中にも、加齢によって普通の時計に戻っていく層が出るでしょうね。そのときに、Apple Watchで育った消費者達の時計選びの基準は高まっていることでしょう」

時計業界として考えるとApple Watchのシェア拡大は進んでいくが、腕時計という製品の内包するものは純粋に先進技術で語れるものだけではないかもしれない。消費者は一度Apple Watchを体験し、再び機械式であれクオーツであれ、腕時計へと回帰していく可能性がある。なるほど、長い目で見てそんなサイクルがあるならば、高級時計/機械式時計にとってプラスという意見も納得がいく。
 
さて、以上の内容を踏まえて、ズバリApple Watch 4は買いなのだろうか?
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「買いですね!(即答) 特に40mmのアルミ素材がオススメです。画面が大きくなり視認性が上がっていますし、アルミモデルは軽くて装着感も良くなっています。アルミ素材はアレルギーを気にする方もいますが、裏面がセラミックになった事もあって、今のところ問題になったという話は聞いていません。

また、バッテリーの持ちも格段に良くなっています。初代の頃は1日半程度だったのが丸二日は余裕で使えるようになりました。この点はソフトの内容と併せ、今後もより改善されていくでしょう」

自身の身につけている最新のApple Watch 4、そして前モデルのApple Watch 3、私物のバンドのコレクションを手に取って語る広田氏は、大変楽しげだ。時計のプロフェッショナルをも虜にしたApple Watchの魅力は、腕時計の本質にせまりながら、さらに進化を続ける姿勢にあるのかもしれない。
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● 広田雅将(ひろた・まさゆき)

1974年生まれ、大阪出身。時計専門誌『クロノス日本版』編集長。サラリーマンを経て2004年からフリーのジャーナリストとして活躍し、2016年より現職。関連誌含め連載を多数抱える。また、一般・時計メーカー・販売店向けなど、幅広い層に対して講演も行う。

高級腕時計専門誌クロノス日本版[webChronos]

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