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設楽社長には、これまで何度かお会いしていますが、こちらのオフィスは初訪問。「住所が新しくなりましたので」と、名刺をいただく際に気づいたのは、なんだか古びたカードケース。それって名刺入れですか?
「これじつは、ヴィンテージの煙草入れなんです。浅草で観光用に人力車を引いている車夫さんがいますでしょ。彼らが持っていたのを見て、カッコ良いなと思い探してみたんです。名刺を入れるのにぴったりのサイズで、枚数もたくさん入るから便利でしょ。もう一個はカード入れに使ってます」
なんでも買える時代こそ、”すぐに買えないもの”が面白い
これはどちらでお求めになられたのですか?
「着物用の和装小物を扱うお店で、たま〜に店頭に並ぶんです。いつもあるわけじゃないので、見つけるのは簡単ではないと思いますが。昭和初期ぐらいのものと、もう一つは大正時代のものかな。味があっていいんですよ。この根付部分をベルトに挟んでおけば、取り出しやすくて名刺交換もスマートだし」
見事な彫り物が施された根付けを拝見すると、かなりの上物とお見受けしますが、もしかして相当お高いものなのでしょうか。
「あぁ、この根付ですね? クロムハーツよりもカッコいいかな、と(笑)。専門の収集家がいるぐらい人気のモノらしいのですが、細かいことは気にしたことないのでわからないですね〜」
「彫師が誰とか、そういうところまで語れるのもいいと思いますが。この根付けはネコなので、相手からネコちゃんかわいい〜♡って言われるだけでいいなと(笑)」
そういって笑い飛ばすあたり、なんとも設楽さんらしいところです。ヴィンテージとしての価値より、いま使ってウケるモノ選びという視点がまさにビームスの真骨頂といえましょう。貴重なアイテムでも、おもちゃ感覚で楽しむ発想には邪気がないのです。
ルールよりも、いいなと思う”直感”を信じる
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きれいな朱色の印傳に、「コキ」と呼ばれる紐を通す部品は水牛の角。こちらもかなりのお値打ちモノと思われますが、設楽さんにはレアな逸品という意識はなく、カジュアルなクラッチバッグ代わりに持ち歩かれているようです。この姿勢がじつに気軽で粋ですね。
「スーツやタキシードで持ってみたら意外と合いましてね(笑)。それで、あまりに使い勝手が良かったので、ひとつオーダーで作ってみたんですよ。それがコレなんですが……」
そう言いながら取り出したのは、なんとリアルクロコのレザーを使った巾着袋! 竹腑の揃い具合からして、見るからにラグジュアリー。コキには象牙を使いたかったそうですが、こちらは水牛でオーダーされています。
「これは、夜遊びのときに持っていきます。モードな感じがしますし、どこで売ってるの?なんて、会う人会う人に聞かれますよ」
和装小物を現代のスタイルに合わせてカスタムするセンスは、じつにお見事。
ファッションは相手を楽しませてナンボ
「灯台下暗しと言いますが、僕は日本のことを全然知らなかった。以前、サヴィルロウのギーブス&ホークスで見せてもらった生地見本が日本の浴衣生地だったり、パリのコレットに置かれている曲げわっぱがすごくカッコ良く見えたり……海外で日本を気付かされる瞬間は多々あります。だからこそ、いま日本が面白いと思っているんです。そうそう、和服の生地でジャケットを仕立てましてね……」
といいながら社長室の角にあったラックからハンガーを取り出しに立ち上がった設楽社長。それは、また次回ご紹介しましょう。
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● 設楽 洋 (したら・よう) / 株式会社ビームス 代表取締役社長
1951年東京都出身。1975年慶應義塾大学経済学部卒業。1975年、電通へ入社。セールスプロモーション局にてイベントプロデューサーとして活躍。1976年、父の立ち上げた「BEAMS」設立に参加し原宿で「AMERICAN LIFE SHOP BEAMS」をスタート。昨年は新たなランドマークとなるショップ「ビームス 六本木ヒルズ」をオープン。