2019.08.29
慶應ボーイが告白「ぼくらが『二郎』のラーメンを愛する理由」
慶應大学の在校生はもちろん、OBのSNSに頻出するとあるラーメン屋の超ボリューミーな一杯。都会的なイメージで知られる彼らがこよなく愛するラーメンの秘密とは。
- CREDIT :
文/秋山 都 写真/吉澤健太
![ラーメン二郎](https://assets-www.leon.jp/image/2018/11/13161844492651/0/1.jpg)
当時、JR田町駅から慶應の三田キャンパスに向かう交差点に面した角地という絶好のロケーションにあった「ラーメン二郎 三田本店」。あのころ、慶應ボーイと話すたび「おれ、いつも小ブタヤサイマシマシ」「ぼく、メン少なめでアブラカラメニンニクね」と呪文のような会話に入れず寂しかったなぁ。あのころの「二郎」は慶應ボーイたち占有のオフリミットという印象があり、容易に他校の、それも女子大生になど入れない独特のオーラを放っていたものだった。
いま大学を卒業して四半世紀あまり……かつてラクロスのクロスやテニスラケットを手にスタジャンを羽織っていた慶應ボーイたちもすっかり貫禄を増し、日本を牽引するリーダーとして日々の経済活動に勤しんでいる。でも、彼らが今また「二郎」のラーメンを前にするとき、数十年分の時計が一瞬にして巻き戻され、あの青春時代がプレイバックされるかのように楽しそうだ。いったい彼らはなぜこれほど「二郎」を愛するのか。ジロリアン(注:「二郎」のラーメンをこよなく愛する人の呼称)である慶應OBのふたりと一緒に「二郎」を初体験してきた。
ジロリアンは語る。
![ラーメン二郎](https://assets-www.leon.jp/image/2018/11/13160758333081/0/2.jpg)
「卒業以来、20数年経ちますが、継続的に年間100~120杯食べていました。さすがに健康を気遣うようになり、最近少しセーブしたら10キロ痩せまして(笑)。でも今日は久々に本店に来られてうれしいなぁ。さ、行きましょうか」(入山氏)
「『二郎』の注文ルールは難しいと思われがちですが、実はシンプル。まずラーメンは大か、小か。そしてぶた入りとぶたダブルというオプションです。初めてならまず小でいいでしょう」(池田氏)
「座ったら、食券を出します。麺を少なめにしたい、半分にしたいなどのリクエストはこの時言ってください。その後『ニンニク入れますか?』と聞かれたら、トッピングのコールを。ヤサイは主にモヤシとキャベツの茹で野菜。アブラはブタの油脂。カラメは醤油系の調味料。初めてならヤサイとニンニクは入れたらどうでしょう」(入山氏)
![ラーメン二郎](https://assets-www.leon.jp/image/2018/11/13161717916856/0/3.jpg)
![ラーメン二郎](https://assets-www.leon.jp/image/2018/11/13160851824780/0/4.jpg)
![ラーメン二郎](https://assets-www.leon.jp/image/2018/11/13160902432836/0/5.jpg)
「僕ら、先に出てますね」
え、もう? 見ればスープまで飲み干した空のどんぶりをカウンターの上段へ戻し、卓上のおしぼりで飛んだスープなどをきれいに拭いてから席を立つふたり。あ、そのおしぼりは卓上を拭くものだったのか。私、それでさっき口をぬぐっちゃった。
![「なんでこんなに『二郎』が好きなのか」真剣に議論するジロリアンのふたり。](https://assets-www.leon.jp/image/2018/11/13160955014133/0/6.jpg)
![ウエットティッシュ](https://assets-www.leon.jp/image/2018/11/13161326849112/0/7.jpg)
「二郎を食べてそのまま家に帰るとすぐ家内にバレちゃうのでブレスケアは欠かせません。奥さんもジロリアンヌ(注:二郎を愛する女性の呼称)なので理解はあるほうなのですが」(池田氏)
![入山隆明](https://assets-www.leon.jp/image/2018/11/13161027060185/0/8.jpg)
「ガマンしていた最初のころは禁断症状に苦しみました。でも数週間ですっとヌケるというか。楽になるんですね。同じことは海外赴任した友人たちからもよく聞きますね」
それほど苦しかった禁断症状を克服してからの一杯、どんな味だった?
「気絶するほど美味かった(笑)」
![池田謙伸](https://assets-www.leon.jp/image/2018/11/13161043345015/0/9.jpg)
![連合三田会「ラーメン二郎 三田本店」](https://assets-www.leon.jp/image/2018/11/13161100720675/0/10.jpg)
「もう大人だし、お金を出せば美味しいものはほかにも食べられると思うのですが、簡単に言ってしまうと二郎は僕のソウルフード。もし雪山で遭難するようなことになったら、最後に二郎の大ダブルヤサイカラメニンニクをもう一度食べたいと思うだろうなぁ」(池田氏)
「やっぱり美味いです。でも120杯は食べすぎだよね(笑)。二郎を食べ続けるためにも健康でいたいから、これからは週に1杯くらいのペースをキープしたい。いまは地方に二郎出身のお店も増えたから出張ついでにそれらを探す楽しみもあるし、ときに麺の量がブレているときだって“麺ブレ”なんていって僕らはそれすら楽しんでしまうんです。二郎は単なるラーメン屋ではなく、良いときも悪いときも一緒にいる。僕らにとって大切な友人みたいな存在」(入山氏)
1990年代に道路拡張により閉店を余儀なくされた「ラーメン二郎 三田本店」を、慶應大学内の学生食堂へ誘致しようと多くのジロリアンが署名活動を行った。残念ながら大学サイドから認められず、「ラーメン二郎 三田本店」は大学正門近くに移転。今日もおなじみの黄色いファサードのもと、多くのジロリアンが行列を成していることだろう。1杯のラーメンと慶應ボーイたちは今日も新しい物語を綴りつづけている。